蘇炳添

中国の陸上競技選手 (1989-)

蘇 炳添(そ へいてん[2]、スー・ビンティエン、Sū Bǐngtiān、1989年8月29日 - )は、中国の男子陸上競技選手。専門は短距離走100mのアジア記録保持者、60mの室内アジア記録保持者。アジア出身選手として初めて10秒の壁を突破した選手である[3]

蘇炳添Portal:陸上競技
選手情報
ラテン文字Su Bingtian
国籍中華人民共和国の旗 中国
競技陸上競技 (短距離走)
種目60m, 100m
生年月日 (1989-08-29) 1989年8月29日(34歳)
出身地中華人民共和国の旗 広東省中山市
身長173cm[1]
体重70kg[1]
成績
オリンピック100m 6位 (2021年)
4x100mR 4位 (2016年)
世界選手権100m 8位 (2017年)
4x100mR 2位 (2015年)
地域大会決勝アジア大会
100m 優勝 (2018年)
4x100mR 優勝 (2010, 14年)
自己ベスト
60m6秒42 (2018年) 室内アジア記録
100m9秒83 (2021年) アジア記録
200m21秒15 (2019年)
獲得メダル
中華人民共和国の旗 中国
陸上競技
オリンピック
2020 東京4×100mR
世界陸上競技選手権大会
2015 北京4×100mR
世界室内陸上競技選手権大会
2018 バーミンガム60m
世界リレー大会
2017 ナッソー4×100mR
アジア競技大会
2010 広州4×100mR
2014 仁川4×100mR
2018 ジャカルタ100m
2014 仁川100m
2018 ジャカルタ4×100mR
アジア陸上競技選手権大会
2011 神戸100m
2013 プネー100m
2015 武漢4×100mR
2009 広州4×100mR
2013 プネー4×100mR
アジア室内競技大会
2009 ハノイ60m
東アジア競技大会
2009 香港100m
2013 天津100m
2009 香港4×100mR
2013 天津4×100mR
ユニバーシアード
2011 深圳100m
アジア/太平洋
IAAFコンチネンタルカップ
2018 オストラヴァ100m
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経歴 編集

2009年 編集

2009年ハノイで開催されたアジア室内競技大会に出場し、60mで優勝し金メダルを獲得している。同年に広州市で開催されたアジア陸上競技選手権大会ではリレーメンバーに選ばれ4×100mリレーで銀メダルを獲得した。

2010年 編集

2010年に広州で開催されたアジア競技大会の4×100mリレーで38秒78の中国記録(当時)を樹立して金メダルを獲得した。

2011年 編集

2011年7月に神戸市で開催された2011年アジア陸上競技選手権大会の男子100mでは10秒21を記録し、江里口匡史らを抑えて優勝を飾った[4]

同年8月に深圳市で開催されたユニバーシアードの男子100mでは10秒27で3位になった。

同年9月8日、合肥で行われた大会で、周偉が記録した10秒17を13年ぶりに上回る、10秒16の中国記録を樹立した。この記録は2013年4月に張培萌の10秒04によって更新された。

2012年 編集

2012年5月、追い風参考記録ながら、川崎GGPで10秒04を記録[5]

同年8月にロンドンで開催されたオリンピックでは100mで準決勝敗退、4×100mリレーでは38秒38の中国記録を樹立したが予選敗退に終わった。

2013年 編集

2013年5月21日にはワールドチャレンジ北京で、当時の中国記録に0秒02まで迫る10秒06の自己新記録を出した。

同年7月にプネーで開催された2013年アジア陸上競技選手権大会の100m決勝で10秒17を記録し、前大会に続き連覇を達成した。

同年8月にモスクワで開催された2013年世界陸上競技選手権大会では100m準決勝でフライングの失格。4×100mリレーでは38秒95の中国代表シーズンベスト(当時)を記録したが予選敗退に終わった。

同年10月に天津で開催された2013年東アジア競技大会の100m決勝では10秒31を記録し、同タイムを記録した日本の山縣亮太に競り勝ち連覇を達成した[6]

2014年 編集

2014年3月にソポトで開催された2014年世界室内陸上競技選手権大会の男子60mでは中国人初の決勝に進出した。決勝では6秒52の中国記録を樹立したが、3位のフェミ・オグノデとわずか0秒003差の4位でメダルを逃した[7]

同年9月に仁川で開催されたアジア競技大会では、100m決勝で10秒10(+0.4)を記録し、9秒93のアジア記録を樹立したフェミ・オグノデに次いで銀メダルを獲得した。4×100mリレー決勝では3走を務め、アジア初の37秒台となる37秒99で優勝した。

2015年 編集

2015年5月30日にユージーンで行われたダイヤモンドリーグ・プレフォンテーン・クラシックの100mで9秒99(+1.5)の中国記録を樹立し、10秒の壁を突破した史上3人目のアジア人となった。なお、アジア人初の9秒台を記録したサミュエル・フランシス及び、2人目のフェミ・オグノデは共にナイジェリアから国籍を変更したカタール人のため、蘇炳添は10秒の壁を突破した初のアジア出身選手および黄色人種選手である[3]

2015年8月に北京で開催された2015年世界陸上競技選手権大会では100m準決勝で自身2度目の9秒台となる9秒99(-0.4)を記録し、世界選手権の100mにおいてアジア勢初のファイナリストとなった[8](決勝は10秒06で9位)。4×100mリレーでは3走を務め、準決勝を37秒92のアジア新記録で突破すると、決勝は38秒01の2位で銀メダルを獲得した。

2016年 編集

2016年3月18日にポートランドで開催された世界室内選手権の60m準決勝で6秒50のアジア記録を樹立。カタールのタラル・マンスールフェミ・オグノデが保持していた6秒51を塗り替え、2大会連続でファイナリストになったが、決勝は6秒54で5位に終わった[9]

2017年 編集

2017年8月にロンドンで開催された2017年世界陸上競技選手権大会100mで2大会連続のファイナリストとなった。決勝ではスタートで出遅れたこともあり、10秒27(-0.8)と3ラウンドの中で一番悪いタイムをマークして8位に終わったが(予選10秒03/-0.2、準決勝10秒10/-0.2)、前回大会では成し遂げられなかったアジア勢初の入賞を果たした[10][11]

2018年 編集

2018年2月3日にカールスルーエで開催されたIAAFワールドインドアツアーカールスルーエ大会の60m決勝で6秒47のアジア記録を記録、優勝した。3日後の2月6日にデュッセルドルフで開催されたIAAFインドアツアーデュッセルドルフ大会の60m決勝では、再びアジア記録を更新する6秒43を記録、優勝した[12]

2018年3月3日にバーミンガムで開催された世界室内選手権の男子60m決勝で同年2月に樹立したアジア記録を更新する6秒42を記録しクリスチャン・コールマンに次ぐ2位に入った[13]

2018年6月22日にマドリードで行われたIAAFワールドチャレンジミーティングスの男子100m決勝でアジアタイ記録となる9秒91(+0.2)を記録し勝利した[14]。同月30日に行われたIAAFダイヤモンドリーグパリ大会で再び9秒91(+0.8)を記録し3位に入った[15]

2018年8月26日に行われた2018年アジア競技大会の男子100m決勝で前回大会でフェミ・オグノデが記録した9秒93を更新する9秒92(+0.8)の大会記録で金メダルを獲得した[16]

9月9日にオストラヴァで行われたIAAFコンチネンタルカップの男子100mにアジア/太平洋代表として出場、アメリカ代表のノア・ライルズの10秒01(0.0)に次ぐ10秒03で2位に入った[17]

2021年 編集

2021年8月1日、東京オリンピック男子100mに出場。アジア新記録となる9秒83(+0.9)で、アジア人としては1932年ロサンゼルスオリンピック吉岡隆徳以来89年ぶりに準決勝を突破した[18][19][20]。決勝では9秒98(+0.1)で6位の成績であった[21]。4×100mリレーでは3走として走り、当初は4位でメダルには届かなかったものの、2位のイギリスがドーピング違反により失格、銀メダルが剥奪されたことを受けて繰り上がったことにより、自身では初となる銅メダルを獲得した。

準決勝のレース(9秒83/+0.9)では、30m通過タイム3秒73、50m通過タイム5秒45、60m通過タイム6秒29をマーク、ウサイン・ボルトの世界記録のレース(9秒58/+0.9)における10mラップタイムを60m地点まで上回った[22]

自己ベスト 編集

記録欄の( )内の数字は風速m/s)で、+は追い風、-は向かい風を意味する。

種目記録年月日場所備考
屋外
100m9秒83(+0.9)2021年8月1日 東京アジア記録
200m21秒15 (-1.0)2019年8月21日 ラ・ショー・ド・フォン
室内
60m6秒422018年3月3日 バーミンガム室内アジア記録
世界歴代5位

100m9秒台のパフォーマンス一覧 編集

大会場所記録備考
2015プレフォンテーン・クラシック (en ユージーン9秒99(+1.5)元中国記録
世界選手権 北京9秒99(-0.4)
2018ミーティング・マドリード (en マドリード9秒91(+0.2)前アジアタイ記録
ミーティングアレヴァ パリ9秒91(+0.8)前アジアタイ記録
アジア大会 (en ジャカルタ9秒92 (+0.8)
2021肇慶市招待 肇慶9秒98(-0.9)
中国全国選手権 紹興9秒98(+0.8)
オリンピック 東京9秒83(+0.9)アジア記録、中国記録
9秒98(+0.1)
中国全国運動会 西安9秒95(+0.1)

主要大会成績 編集

備考欄の記録は当時のもの

大会場所種目結果記録備考
2009アジア室内大会 (en ハノイ60m優勝6秒65
アジア選手権 (en 広州4x100mR2位39秒07 (3走)
東アジア大会 (en 香港100m優勝10秒33
4x100mR3位39秒86 (3走)
2010アジア大会 広州4x100mR優勝38秒78 (3走)大会記録
2011アジア選手権 神戸100m優勝10秒21 (+1.8)
4x100mR4位39秒33 (3走)
ユニバーシアード (en 深圳100m3位10秒27 (0.0)
世界選手権 大邱4x100mR予選38秒87 (3走)
2012世界室内選手権 イスタンブール60m準決勝6秒74
オリンピック ロンドン100m準決勝10秒28 (+1.0)
4x100mR予選38秒38 (3走)中国記録
2013アジア選手権 プネー100m優勝10秒17 (-0.3)
4x100mR3位39秒17 (2走)
世界選手権 モスクワ100m準決勝DQ予選10秒16 (-0.1)
4x100mR予選38秒95 (3走)
東アジア大会 (en 天津100m優勝10秒31 (-0.1)2位と同タイム
4x100mR3位39秒19 (3走)
2014世界室内選手権 ソポト60m4位6秒52中国記録
3位と同タイム
アジア大会 仁川100m2位10秒10 (+0.4)
4x100mR優勝37秒99 (3走)アジア記録
大会記録
2015アジア選手権 武漢4x100mR優勝39秒04 (3走)
世界選手権 北京100m9位10秒06 (-0.5)準決勝9秒99:中国タイ記録
4x100mR2位38秒01 (3走)予選37秒92:アジア記録
2016世界室内選手権 ポートランド60m5位6秒54準決勝6秒50:アジア記録
オリンピック リオデジャネイロ100m準決勝10秒08 (0.0)
4x100mR4位37秒90 (3走)予選37秒82:アジア記録
2017世界リレー (en ナッソー4x100mR3位39秒22 (3走)
世界選手権 ロンドン100m8位10秒27 (-0.8)
4x100mR4位38秒34 (3走)
2018世界室内選手権 バーミンガム60m2位6秒42室内アジア記録
アジア大会 ジャカルタ100m優勝9秒92 (+0.8)大会記録
4x100mR3位38秒89 (3走)
IAAFコンチネンタルカップ オストラヴァ100m2位10秒03 (0.0)
2019世界リレー 横浜4x100mR4位38秒16 (3走)
世界選手権 ドーハ100m準決勝10秒23 (-0.3)
4x100mR6位38秒07 (1走)予選37秒79:中国記録
2021オリンピック 東京100m6位9秒98(+0.1)準決勝9秒83(+0.9):アジア記録
4x100mR3位(3走)イギリスのドーピング違反により繰り上げ

脚注 編集

出典 編集

  1. ^ a b Su Bingtian - Player Profile
  2. ^ 中国の蘇炳添が9秒83のアジア新 東京五輪陸上男子100メートル”. 新華網日本語版. 新華通信社. 2022年8月18日閲覧。
  3. ^ a b 中国の蘇炳添が9秒99 陸上男子100M、アジア出身で初”. 日本経済新聞 (2015年5月31日). 2015年5月31日閲覧。
  4. ^ 男子100メートル江里口は2位 沢野、3大会ぶりV MSN産経ニュース (2011-07-08). 2011年7月8日閲覧
  5. ^ 【川崎GGP】男子100m記録/陸上 nikkansports.com
  6. ^ <東アジア競技大会>陸上男子100メートル、中国の蘇炳添が日本のエースを破り、金メダル―中国メディア livedoor NEWS (2013-10-09). 2014年4月24日閲覧
  7. ^ Report: men's 60m final – Sopot 2014 国際陸上競技連盟 (2014-03-08). 2014年4月24日閲覧
  8. ^ 蘇炳添、世界陸上アジア勢初の男子100m決勝進出”. 日刊スポーツ (2015年8月23日). 2015年8月23日閲覧。
  9. ^ Su Bingtian sets 60m Asian indoor record in Portland”. 新華社 (2016年3月19日). 2016年3月20日閲覧。
  10. ^ 2017年世界選手権男子100m決勝リザルト”. 国際陸上競技連盟 (2017年8月6日). 2017年8月6日閲覧。
  11. ^ 中国の27歳・蘇炳添、100m決勝でアジア初8位”. サンケイスポーツ (2017年8月6日). 2017年8月6日閲覧。
  12. ^ "SU, STANEK AND MANNING IMPRESS IN DUSSELDORL"(英語).iaaf.org(2018年2月6日).2018年2月11日閲覧。
  13. ^ 増野は予選敗退=世界室内陸上”. jiji.com. 時事通信社 (2018年3月4日). 2018年3月4日閲覧。
  14. ^ 陸上、中国の蘇炳添が9秒91”. asahi.com. 朝日新聞社 (2018年6月23日). 2018年9月6日閲覧。
  15. ^ China's Su Bingtian equals 100m Asian record”. xinhuanet.com. 新華社 (2018年7月1日). 2018年9月6日閲覧。
  16. ^ アジア最速の称号つかむ9秒92 蘇炳添”. nikkei.com. 日本経済新聞社 (2018年8月29日). 2018年9月6日閲覧。
  17. ^ REPORT: MEN'S 100M - IAAF CONTINENTAL CUP OSTRAVA 2018”. iaaf.org. IAAF (2018年9月9日). 2018年9月10日閲覧。
  18. ^ 中国・蘇炳添がアジア新 陸上男子100M準決勝”. 産経ニュース. 産経新聞社 (2021年8月1日). 2021年8月1日閲覧。
  19. ^ 中国の蘇炳添が衝撃のアジア新9秒83で決勝進出 男子100m”. nikkansports.com. 日経新聞社 (2021年8月1日). 2021年8月1日閲覧。
  20. ^ 蘇炳添、アジア人89年ぶりファイナリスト 男子100〔五輪・陸上〕:時事ドットコム”. 時事ドットコム. 2021年8月7日閲覧。
  21. ^ 男子100メートル決勝は大番狂わせ ジェイコブスが9秒80で”. スポニチ Sponichi Annex. 株式会社スポーツニッポン新聞社 (2021年8月1日). 2021年8月1日閲覧。
  22. ^ Analyzing the Olympic 100-meter sprints” (英語). HMMR Media (2021年10月8日). 2021年11月11日閲覧。

外部リンク 編集

記録
先代
周偉
陳海健
(10秒17)
1998年6月6日, 2003年9月12日
男子100m
中国記録保持者
(10秒16)

2012年10月2日 - 2013年4月27日
次代
張培萌
(10秒04)
2013年4月27日
先代
張培萌
(10秒00)
2013年8月11日
男子100m
中国記録保持者
(9秒99)

2015年5月30日 - 2018年6月19日
次代
謝震業
(9秒97)
2018年6月19日
先代
謝震業
(9秒97)
2018年6月19日
男子100m
中国記録保持者
(9秒91)

2018年6月22日 -
次代
未定
先代
タラル・マンスール
フェミ・オグノデ
(6秒51)
1993年3月6日, 2014年1月25日
男子60m
室内アジア記録保持者
(6秒50 - 6秒42)

2016年3月18日 -
次代
未定
先代
温永毅
(6秒58)
2008年1月26日
男子60m
室内中国記録保持者
(6秒58 - 6秒42)

2010年3月30日 -
次代
未定
功績
過去
吉岡隆徳
1932年
世界選手権100m
アジア人ファイナリスト

2015年8月23日
2人目
サニブラウン・アブデル・ハキーム
2022年7月17日
2人目
フェミ・オグノデ
2014年9月28日
男子100m
10秒の壁を破ったアジア人選手

2015年5月30日
4人目
桐生祥秀
2017年9月9日