ハンガリーグランプリ

ハンガリーで開催されるF1レース

ハンガリーグランプリ(ハンガリーGP, : Hungarian Grand Prix, ハンガリー語: Magyar Nagydíj)は、ハンガリーハンガロリンク[2]で開催されている自動車レースであり、1986年以降行われているF1のレースのひとつ。

Hungarian Grand Prix
ハンガロリンク
レース情報
周回70[1]
コース長4.381[1] km (2.722 mi)
レース長306.630[1] km (190.531 mi)
開催回数39
初回1936年
最多勝利
(ドライバー)
イギリスの旗 ルイス・ハミルトン (8)
最多勝利
(コンストラクター)
イギリスの旗 マクラーレン (11)
最新開催(2023年):
ポールポジションイギリスの旗 ルイス・ハミルトン
メルセデス
1:16.609
決勝順位1. オランダの旗 マックス・フェルスタッペン
レッドブル-ホンダ・RBPT
1:38:08.634
2. イギリスの旗 ランド・ノリス
マクラーレン-メルセデス
+33.731s
3. メキシコの旗 セルジオ・ペレス
レッドブル-ホンダ・RBPT
+37.603s
ファステストラップオランダの旗 マックス・フェルスタッペン
レッドブル-ホンダ・RBPT
1:20.504

概要

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2003年ハンガリーGP

1986年のF1初開催時[3]は、共産主義体制下にあった東欧諸国での唯一のF1グランプリとして注目されるレースとなった。

地理的に東欧(特に隣国オーストリア)や北欧からの観客が多い。そのため、母国でGPが開催されない東欧・北欧圏のドライバーにとってはホームグランプリとしての扱いもされる。

開催コースのハンガロリンク[2]は予選のグリッドと決勝の戦略が非常に大きいウェイトを占めるグランプリとなっている。その背景はコースが低速コースに分類され、メディアからは「壁のないモナコ」と称されるように、コース幅が狭くストレートが短いため、コース特性的にオーバーテイクが難しいレイアウトと認識されている。その関係で抜くに抜けない膠着状態となってしまい、いわゆる「トレイン状態」「レーシングスクール状態」になる事もあるため、上位スタートが優位とされる。その一方でハンガロリンクのポールシッターは38戦17勝と勝率は5割を切っている。これは、真夏のバカンス期の開催であるうえ、盆地に位置するので例年晴天、高温のレースになる事が多いため、環境によるドライバーへの負担も大きく、ブレーキおよびエンジン(パワーユニット)の熱負担、シフト回数も多いことによるギアボックスへの負担も大きいことから、車体側の負担も問われるコースでもあるため、マシンの速さも当然の事ながら、チームの戦略、マシンの信頼性、ピット作業なども明暗を分けることもある。そのため、レースに劇的な展開が突然起きること(番狂わせ)も起きたことがある。

実際、記録で見ても、チームとしては3チーム(ウィリアムズマクラーレンメルセデス)の3連勝が最多で、ドライバーとしての連勝記録もルイス・ハミルトンが2018年から2020年にかけて3連勝したのが最多であり、彼以外は2連勝以下に留まっている。特に2002年から2008年まで毎年別々の勝者が生まれており、そのうち3人が初優勝である。

2009年からコスト削減の一環としてサマーブレイクが導入されたため、サマーブレイク前の最後のレースとなることが多い。それを考慮しなくても、レース数で言えば、シーズン中盤戦に位置することが多く、タイトル争いの分岐点として扱われることが多いが、チャンピオン争いが独走となった1992年ナイジェル・マンセル2001年ミハエル・シューマッハはこのレースでチャンピオンを確定させた。2002年のミハエル・シューマッハは2戦前のフランスGPでチャンピオンが決定したため、唯一チャンピオン決定後となっている。

ハンガロリンクでは、2032年まで継続開催される予定である[4]

余談

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2004年にミハエル・シューマッハがハンガロリンクを制し、その年のチャンピオンになったが、2005年以降、13年にわたりその年のハンガロリンクを勝利したドライバーは年間チャンピオンになっていないという奇妙なジンクスも生まれた。ただ、初開催の1986年から2004年までの間、ハンガリーGPを制したドライバーがその年のチャンピオンを獲得したのは19回中8回となっており、統計上2005年以前からそのジンクスの兆候が見られた年もあった。2018年にルイス・ハミルトンがそのジンクスを破り、2019年と2020年もハンガリーGPを制してその年のチャンピオンを獲得している。その後、2022年のマックス・フェルスタッペンも同GPを制してその年のチャンピオンを獲得した。

他にも2015年から2017年にかけてホンダのパワーユニットを搭載したマクラーレンだが、この時期のホンダ製エンジンの性能の低さもあり、その3年間は振るわない成績であったが、このハンガリーGPに限っては2015年から5位、5位、6位(ドライバーはいずれもフェルナンド・アロンソ2017年にはファステストラップを記録した。)と3年間好成績を残している。

F1の歴史において、いくつかの記録も生まれており、F1通算100人目の記録が二つ(初優勝とキャリア初ポールポジション)生まれたGPでもある。また、初開催から同一コースでの連続開催の回数という点では、結果的にハンガリーGPを上回る回数を開催したことがある国々を上回る結果となった。なぜなら、初開催から同一コースでの連続開催の回数で言えば、国としての開催数ではハンガリーを上回っていても、コース変更の経歴や数年間の未開催の時期があるため、記録上、初開催から同一コースで31回連続開催を迎えた時点(2016年)でもモナコGPモンテカルロ市街地コース)に次ぐ最長記録となっている。

主な出来事

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  • 1986年 - 先頭を走るアイルトン・セナロータス)と2位のネルソン・ピケウィリアムズ)が1コーナーでバトルを展開。最初のアタックではインを差したピケのラインが膨らんだ隙にセナが抜き返す。2度目はピケがアウト側から被せ、マシンをドリフトさせながら前に出た。
  • 1987年 - ナイジェル・マンセル(ウィリアムズ)がレースをリードしていたが、残り6周という所でリアタイヤのホイールナットが外れてリタイアした。
  • 1989年 - リカルド・パトレーゼ(ウィリアムズ)が6年ぶりにポールポジションを獲得。決勝は12番手スタートのマンセル(フェラーリ)が順位を上げ、周回遅れを利用してセナ(マクラーレン)をかわして優勝した。
  • 1992年 - 2位でフィニッシュしたマンセル(ウィリアムズ)が悲願のチャンピオンを獲得。16戦中11戦目という当時最短でのタイトル決定戦となった。
  • 1993年 - デイモン・ヒル(ウィリアムズ)がF1初優勝。父親のグラハムに続き史上初の親子2代ウィナーとなった。
  • 1995年 - アロウズ井上隆智穂がエンジントラブルのためマシンを停めた直後、エンジンから出火。消火器を持って自ら消火しようとした所、後方からやってきたマーシャルカー(救急車)に撥ねられる事故が発生。井上はボンネットに乗り上げ、脚の傷みのため倒れこんでしまった。レース終了後に病院に搬送されたものの、大事には至らなかった。この撥ねられたシーンを含め事故の一部始終は国際映像で放送されていた。
  • 1997年 - アロウズに移籍した前年度王者ヒルが予選3位、決勝でも11周目にミハエル・シューマッハ(フェラーリ)を抜いてトップを快走。アロウズならびにヤマハエンジン、ブリヂストンタイヤにとってのF1初優勝に近づいたが、残り2周で油圧トラブルが発生して急失速、惜しくも2位に終わるも、表彰台に駆け付けた観客からはデイモンコール一色であった。
  • 1998年 - ミハエル・シューマッハ(フェラーリ)が想定外の3ピットストップ作戦を敢行、マクラーレンの2台を逆転して優勝した。
  • 2001年 - ミハエル・シューマッハ(フェラーリ)が優勝し、2年連続4度目のチャンピオンを獲得。また、コンストラクターズにおいてもフェラーリが3年連続11度目のチャンピオンも獲得した。
  • 2003年 - フェルナンド・アロンソルノー)がスペイン人ドライバーとしてF1初優勝。当時の最年少優勝記録も作る。
  • 2006年 - ジェンソン・バトンホンダ)がF1初優勝。ホンダのコンストラクターとしての勝利は1967年イタリアGP以来。
  • 2007年 - 予選Q3でアロンソ(マクラーレン)がピットスタートを遅らし、チームメイトのルイス・ハミルトンがタイムアタックに入る機会を妨害したとして、5グリッド降格処分を受ける。
  • 2008年 - 先頭を走るフェリペ・マッサ(フェラーリ)が残り3周という所でストップし、ヘイキ・コバライネン(マクラーレン)がF1初優勝。F1通算100人目のウィナーになった。
  • 2009年 - フェリペ・マッサ(フェラーリ)のヘルメットに前走車から外れたパーツが直撃。頭部に重傷を負い、シーズン残りを欠場(この事故が頭部保護デバイス「Halo」導入のきっかけとなる)。決勝ではルイス・ハミルトン(マクラーレン)がKERS搭載車として初優勝。
  • 2015年 - 2014年の開幕戦オーストラリアGPから続いていたメルセデスのチームとしての連続表彰台記録が28でストップ[5]セバスチャン・ベッテル(フェラーリ)がハンガリーGP初優勝。
  • 2016年 - 予選Q1は雨のため4回の赤旗が出され、11台が107%ルールをクリアできないハプニングがあった(例外的な状況と判断され全車決勝に出走した)。ハミルトン(メルセデス)が優勝し、ハンガリーGPの単独最多勝利ドライバーとなる5勝目を記録。
  • 2019年 - マックス・フェルスタッペンレッドブル)が自身のキャリア初ポールポジションを獲得したうえ、F1通算100人目となるポールポジション獲得者となった。決勝ではハミルトンがタイヤ戦略によってフェルスタッペンを逆転し、自身が持つハンガリーGPの最多勝利記録を7に伸ばした。
  • 2020年 - ハミルトンがポール・トゥ・ウィンでハンガリーGP8勝目を挙げ、ミハエル・シューマッハフランスGPで挙げた同一GPの最多勝利数に並んだ。
  • 2021年 - 多重クラッシュによる中断後のスタンディングスタートでグリッドに1台しか並ばない珍事。また、エステバン・オコンが初優勝し、オールフランス(チーム(アルピーヌ)・パワーユニット(ルノー)・ドライバー)による優勝を38年ぶりに達成した[6][7]
  • 2023年 - レッドブルが開幕11連勝を飾り[8]、1988年のマクラーレンに並ぶ。また、2022年最終戦アブダビGPから12連勝となり、F1新記録を達成[9]

過去の結果と開催サーキット

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  • ピンク地はF1世界選手権以外で開催された年。
決勝日ラウンドサーキット勝者コンストラクター結果
19366月21日非選手権ネープリゲト タツィオ・ヌヴォラーリアルファロメオ詳細
1937
-
1985
開催されず
19868月10日11ハンガロリンク ネルソン・ピケウィリアムズ-ホンダ詳細
19878月09日9ハンガロリンク ネルソン・ピケウィリアムズ-ホンダ詳細
19888月07日10ハンガロリンク アイルトン・セナマクラーレン-ホンダ詳細
19898月13日10ハンガロリンク ナイジェル・マンセルフェラーリ詳細
19908月12日10ハンガロリンク ティエリー・ブーツェンウィリアムズ-ルノー詳細
19918月11日10ハンガロリンク アイルトン・セナマクラーレン-ホンダ詳細
19928月16日11ハンガロリンク アイルトン・セナマクラーレン-ホンダ詳細
19938月15日11ハンガロリンク デイモン・ヒルウィリアムズ-ルノー詳細
19948月14日10ハンガロリンク ミハエル・シューマッハベネトン-フォード詳細
19958月13日10ハンガロリンク デイモン・ヒルウィリアムズ-ルノー詳細
19968月11日12ハンガロリンク ジャック・ヴィルヌーヴウィリアムズ-ルノー詳細
19978月10日11ハンガロリンク ジャック・ヴィルヌーヴウィリアムズ-ルノー詳細
19988月16日12ハンガロリンク ミハエル・シューマッハフェラーリ詳細
19998月15日11ハンガロリンク ミカ・ハッキネンマクラーレン-メルセデス詳細
20008月13日12ハンガロリンク ミカ・ハッキネンマクラーレン-メルセデス詳細
20018月19日13ハンガロリンク ミハエル・シューマッハフェラーリ詳細
20028月18日13ハンガロリンク ルーベンス・バリチェロフェラーリ詳細
20038月24日13ハンガロリンク フェルナンド・アロンソルノー詳細
20048月15日13ハンガロリンク ミハエル・シューマッハフェラーリ詳細
20057月31日13ハンガロリンク キミ・ライコネンマクラーレン-メルセデス詳細
20068月06日13ハンガロリンク ジェンソン・バトンホンダ詳細
20078月05日11ハンガロリンク ルイス・ハミルトンマクラーレン-メルセデス詳細
20088月03日11ハンガロリンク ヘイキ・コバライネンマクラーレン詳細
20097月26日10ハンガロリンク ルイス・ハミルトンマクラーレン-メルセデス詳細
20108月01日12ハンガロリンク マーク・ウェバーレッドブル-ルノー詳細
20117月31日11ハンガロリンク ジェンソン・バトンマクラーレン-メルセデス詳細
20127月29日11ハンガロリンク ルイス・ハミルトンマクラーレン-メルセデス詳細
20137月28日10ハンガロリンク ルイス・ハミルトンメルセデス詳細
20147月27日11ハンガロリンク ダニエル・リカルドレッドブル-ルノー詳細
20157月26日10ハンガロリンク セバスチャン・ベッテルフェラーリ詳細
20167月24日11ハンガロリンク ルイス・ハミルトンメルセデス詳細
20177月30日11ハンガロリンク セバスチャン・ベッテルフェラーリ詳細
20187月29日12ハンガロリンク ルイス・ハミルトンメルセデス詳細
20198月04日12ハンガロリンク ルイス・ハミルトンメルセデス詳細
20207月19日3ハンガロリンク ルイス・ハミルトンメルセデス詳細
20218月01日11ハンガロリンク エステバン・オコンアルピーヌ-ルノー詳細
20227月31日13ハンガロリンク マックス・フェルスタッペンレッドブル-RBPT詳細
20237月23日12ハンガロリンク マックス・フェルスタッペンレッドブル-ホンダ・RBPT詳細
20247月21日13ハンガロリンク詳細

開催されたサーキット

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優勝回数

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ドライバー

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(2勝以上)

回数ドライバー優勝年
8 ルイス・ハミルトン2007, 2009, 2012, 2013, 2016, 2018, 2019, 2020
4 ミハエル・シューマッハ1994, 1998, 2001, 2004
3 アイルトン・セナ1988, 1991, 1992
2 ネルソン・ピケ1986, 1987
デイモン・ヒル1993, 1995
ジャック・ヴィルヌーヴ1996, 1997
ミカ・ハッキネン1999, 2000
ジェンソン・バトン2006, 2011
セバスチャン・ベッテル2015, 2017
マックス・フェルスタッペン2022, 2023

コンストラクター

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(2勝以上)

回数コンストラクター優勝年
11 マクラーレン1988, 1991, 1992, 1999, 2000, 2005, 2007, 2008, 2009, 2011,
2012
7 ウィリアムズ1986, 1987, 1990, 1993, 1995, 1996, 1997
フェラーリ1989, 1998, 2001, 2002, 2004, 2015, 2017
5 メルセデス2013, 2016, 2018, 2019, 2020
4 レッドブル2010, 2014, 2022, 2023

エンジン

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(2勝以上)

回数メーカー優勝年
13 メルセデス *1999, 2000, 2005, 2007, 2008, 2009, 2011, 2012, 2013, 2016,
2018, 2019, 2020
9 ルノー1990, 1993, 1995, 1996, 1997, 2003, 2010, 2014, 2021
7 フェラーリ1989, 1998, 2001, 2002, 2004, 2015, 2017
6 ホンダ **1986, 1987, 1988, 1991, 1992, 2006
2 RBPT / ホンダ・RBPT **2022, 2023

関連項目

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脚注

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  1. ^ a b c Hungarian Grand Prix 2022 - F1 Race”. formula1.com. 2022年7月29日閲覧。
  2. ^ a b ハンガロリンク(サーキット解説)formula1-data.com 2021年8月8日閲覧。
  3. ^ F1世界選手権が始まる前の1936年に1度だけ、ブダペストのネープリゲトで開催されている。
  4. ^ F1ハンガリーGP、2032年まで継続…5年の契約延長を発表”. Formula1-Data (2023年7月22日). 2023年7月23日閲覧。
  5. ^ 歴代2位。1位はフェラーリが1999年第15戦から2002年最終戦までチームとして記録した53。
  6. ^ 前回は1983年オーストリアGPのアラン・プロスト(ルノー)。
  7. ^ アルピーヌの伏兵オコンが初勝利 1周目の多重クラッシュが追い風 8番手から勝機 角田は自己最高位タイ7位【F1第11戦ハンガリーGP】”. 中日新聞Web (2021年8月2日). 2021年8月3日閲覧。
  8. ^ この年の第12戦として開催されたが、第6戦エミリア・ロマーニャGPが集中豪雨により中止となったため、11戦目の開催となった。
  9. ^ フェルスタッペンが今季9勝目。レッドブルが12連勝で35年ぶりに連勝記録を更新【決勝レポート/F1第12戦】”. autosport web (2023年7月23日). 2023年7月24日閲覧。

外部リンク

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