1999年のナショナルリーグチャンピオンシップシリーズ

メジャーリーグベースボールの第30回ナショナルリーグ優勝決定シリーズ

1999年の野球において、メジャーリーグベースボール(MLB)ポストシーズンは10月5日に開幕した。ナショナルリーグの第30回リーグチャンピオンシップシリーズ(30th National League Championship Series、以下「リーグ優勝決定戦」と表記)は、12日から19日にかけて計6試合が開催された。その結果、アトランタ・ブレーブス東地区)がニューヨーク・メッツ(同)を4勝2敗で下し、3年ぶり17回目のリーグ優勝および9回目のワールドシリーズ進出を果たした。

1999年ナショナルリーグ
チャンピオンシップシリーズ
チーム勝数
アトランタ・ブレーブス4
ニューヨーク・メッツ2
シリーズ情報
試合日程10月12日–19日
観客動員6試合合計:30万8637人
1試合平均:05万1440人
MVPエディ・ペレス(ATL)
NLDSATL 3–1 HOU
NYM 3–1 ARI
殿堂表彰者ジョン・シャーホルツ(ATL GM)
ボビー・コックス(ATL監督)
トム・グラビン(ATL投手)
チッパー・ジョーンズ(ATL内野手)
グレッグ・マダックス(ATL投手)
ジョン・スモルツ(ATL投手)
リッキー・ヘンダーソン(NYM外野手)
マイク・ピアッツァ(NYM捕手)
チーム情報
アトランタ・ブレーブス(ATL)
シリーズ出場05年(8大会)連続10回目
GMジョン・シャーホルツ
監督ボビー・コックス
シーズン成績103勝59敗・勝率.636
東地区優勝

ニューヨーク・メッツ(NYM)
シリーズ出場11年ぶり05回目
GMスティーブ・フィリップス
監督ボビー・バレンタイン
シーズン成績097勝66敗・勝率.595
東地区2位=ワイルドカード

 < 1998
NLCS
1999

2000 > 

 < 1998
ALCS
1999

2000 > 
ワールドシリーズ

両球団がポストシーズンで対戦するのは、1969年のリーグ優勝決定戦以来30年ぶり2度目。この年のレギュラーシーズンでは両球団は12試合対戦し、ブレーブスが9勝3敗と勝ち越していた[1]。今シリーズは5試合が1点差で決着し、第5戦・第6戦はいずれも延長サヨナラゲームとなるなど、接戦続きだった[2]。第5戦ではメッツが延長15回裏に一死満塁とし、ロビン・ベンチュラの外野フェンスを越える打球でサヨナラ勝利した。この一打はポストシーズン史上初のサヨナラ満塁本塁打になるかと思われたが、ベンチュラが一塁を回ったところでチームメイトにもみくちゃにされてベースを一周できず、記録上は単打となったため "グランドスラム・シングル" と称される[注 1][3]。移動日を挟んで続く第6戦、今度はブレーブスが延長11回裏に一死満塁とし、アンドリュー・ジョーンズがサヨナラの押し出し四球を選んでリーグ優勝を決めた。ポストシーズンでのサヨナラ押し出し四球は史上初である[4]シリーズMVPには、第2戦の6回裏に勝ち越し・決勝の2点本塁打を放つなど、6試合で打率.500・2本塁打・5打点OPS 1.424という成績を残したブレーブスのエディ・ペレスが選出された。しかしブレーブスは、ワールドシリーズではアメリカンリーグ王者ニューヨーク・ヤンキースに0勝4敗で敗れ、4年ぶり4度目の優勝を逃した。

試合結果 編集

1999年のナショナルリーグ優勝決定戦は10月12日に開幕し、途中に移動日を挟んで8日間で6試合が行われた。日程・結果は以下の通り。

日付試合ビジター球団(先攻)スコアホーム球団(後攻)開催球場
10月12日(火)第1戦ニューヨーク・メッツ2-4アトランタ・ブレーブスターナー・フィールド
10月13日(水)第2戦ニューヨーク・メッツ3-4アトランタ・ブレーブス
10月14日(木)移動日
10月15日(金)第3戦アトランタ・ブレーブス1-0ニューヨーク・メッツシェイ・スタジアム
10月16日(土)第4戦アトランタ・ブレーブス2-3ニューヨーク・メッツ
10月17日(日)第5戦アトランタ・ブレーブス3-4xニューヨーク・メッツ
10月18日(月)移動日
10月19日(火)第6戦ニューヨーク・メッツ9-10xアトランタ・ブレーブスターナー・フィールド
優勝:アトランタ・ブレーブス(4勝2敗 / 3年ぶり17度目)

第1戦 10月12日 編集

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ニューヨーク・メッツ000100001262
アトランタ・ブレーブス10001101X482
  1. グレッグ・マダックス(1勝)  吉井理人(1敗)  Sジョン・ロッカー(1S)  
  2. 本塁打
    ATL:エディ・ペレス1号ソロ
  3. 審判
    [球審]エド・モンタギュー
    [塁審]一塁: ジェフ・ケロッグ、二塁: チャーリー・レリフォード、三塁: エド・ラピュアーノ
    [外審]左翼: ジェリー・レイン、右翼: ジェリー・クロフォード
  4. 試合開始時刻: 東部夏時間UTC-4)午後8時12分 試合時間: 3時間9分 観客: 4万4172人 気温: 63°F(17.2°C)
    詳細: Baseball-Reference.com
両チームの先発ラインナップ
ニューヨーク・メッツアトランタ・ブレーブス
打順守備選手打席打順守備選手打席
1R・ヘンダーソン1G・ウィリアムズ
2E・アルフォンゾ2B・ブーン
3J・オルルド3C・ジョーンズ
4M・ピアッツァ4B・ジョーダン
5R・ベンチュラ5R・クレスコ
6D・ハミルトン6A・ジョーンズ
7R・セデーニョ7E・ペレス
8R・オルドニェス8W・ワイス
9吉井理人9G・マダックス
先発投手投球先発投手投球
吉井理人G・マダックス

第2戦 10月13日 編集

映像外部リンク
MLB.comによる動画(英語)
6回裏、ブライアン・ジョーダンの2点本塁打でブレーブスが同点に追いつく(1分8秒)
次打者出塁後、エディ・ペレスも2点本塁打を放ちブレーブスが勝ち越し(1分22秒)
9回表、ジョン・スモルツが代打ボビー・ボニーヤを見逃し三振に仕留めて試合終了、ブレーブスが連勝(34秒)
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ニューヨーク・メッツ010010010351
アトランタ・ブレーブス00000400X491
  1. ケビン・ミルウッド(1勝)  ケニー・ロジャース(1敗)  Sジョン・スモルツ(1S)  
  2. 本塁打
    NYM:メルビン・モーラ1号ソロ
    ATL:ブライアン・ジョーダン1号2ラン、エディ・ペレス2号2ラン
  3. 審判
    [球審]ジェフ・ケロッグ
    [塁審]一塁: チャーリー・レリフォード、二塁: エド・ラピュアーノ、三塁: ジェリー・レイン
    [外審]左翼: ジェリー・クロフォード、右翼: エド・モンタギュー
  4. 試合開始時刻: 東部夏時間UTC-4)午後4時9分 試合時間: 2時間42分 観客: 4万4624人 気温: 62°F(16.7°C)
    詳細: Baseball-Reference.com
両チームの先発ラインナップ
ニューヨーク・メッツアトランタ・ブレーブス
打順守備選手打席打順守備選手打席
1R・ヘンダーソン1G・ウィリアムズ
2E・アルフォンゾ2B・ブーン
3J・オルルド3C・ジョーンズ
4M・ピアッツァ4B・ジョーダン
5R・ベンチュラ5A・ジョーンズ
6D・ハミルトン6E・ペレス
7R・セデーニョ7B・ハンター
8R・オルドニェス8W・ワイス
9K・ロジャース9K・ミルウッド
先発投手投球先発投手投球
K・ロジャースK・ミルウッド

第3戦 10月15日 編集

映像外部リンク
MLB.comによる動画(英語)
9回裏、ジョン・ロッカーがレイ・オルドニェスを遊ゴロに打ち取り試合終了、ブレーブスがリーグ優勝に王手をかける(57秒)
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アトランタ・ブレーブス100000000131
ニューヨーク・メッツ000000000072
  1. トム・グラビン(1勝)  アル・ライター(1敗)  Sジョン・ロッカー(2S)  
  2. 審判
    [球審]チャーリー・レリフォード
    [塁審]一塁: エド・ラピュアーノ、二塁: ジェリー・レイン、三塁: ジェリー・クロフォード
    [外審]左翼: エド・モンタギュー、右翼: ジェフ・ケロッグ
  3. 試合開始時刻: 東部夏時間UTC-4)午後8時12分 試合時間: 3時間4分 観客: 5万5911人 気温: 56°F(13.3°C)
    詳細: Baseball-Reference.com
両チームの先発ラインナップ
アトランタ・ブレーブスニューヨーク・メッツ
打順守備選手打席打順守備選手打席
1G・ウィリアムズ1R・ヘンダーソン
2B・ブーン2J・オルルド
3C・ジョーンズ3E・アルフォンゾ
4B・ジョーダン4M・ピアッツァ
5A・ジョーンズ5B・アグバヤニ
6E・ペレス6R・ベンチュラ
7B・ハンター7M・モーラ
8W・ワイス8R・オルドニェス
9T・グラビン9A・ライター
先発投手投球先発投手投球
T・グラビンA・ライター

第4戦 10月16日 編集

映像外部リンク
MLB.comによる動画(英語)
6回裏、ジョン・オルルドのソロ本塁打でメッツが先制(1分6秒)
8回表、先頭打者ブライアン・ジョーダンと次打者ライアン・クレスコの連続本塁打でブレーブスが逆転(56秒)
その裏、二死二・三塁からオルルドの2点適時打でメッツが再逆転(38秒)
9回表、アーマンド・ベニテスが代打キース・ロックハートを見逃し三振に仕留めて試合終了、メッツがシリーズ初勝利(1分3秒)
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アトランタ・ブレーブス000000020230
ニューヨーク・メッツ00000102X350
  1. ターク・ウェンデル(1勝)  マイク・レムリンジャー(1敗)  Sアーマンド・ベニテス(1S)  
  2. 本塁打
    ATL:ブライアン・ジョーダン2号ソロ、ライアン・クレスコ1号ソロ
    NYM:ジョン・オルルド1号ソロ
  3. 審判
    [球審]エド・ラピュアーノ
    [塁審]一塁: ジェリー・レイン、二塁: ジェリー・クロフォード、三塁: エド・モンタギュー
    [外審]左翼: ジェフ・ケロッグ、右翼: チャーリー・レリフォード
  4. 試合開始時刻: 東部夏時間UTC-4)午後7時42分 試合時間: 2時間20分 観客: 5万5872人 気温: 66°F(18.9°C)
    詳細: Baseball-Reference.com
両チームの先発ラインナップ
アトランタ・ブレーブスニューヨーク・メッツ
打順守備選手打席打順守備選手打席
1G・ウィリアムズ1R・ヘンダーソン
2B・ブーン2J・オルルド
3C・ジョーンズ3E・アルフォンゾ
4B・ジョーダン4M・ピアッツァ
5R・クレスコ5R・ベンチュラ
6A・ジョーンズ6D・ハミルトン
7E・ペレス7R・セデーニョ
8W・ワイス8R・オルドニェス
9J・スモルツ9R・リード
先発投手投球先発投手投球
J・スモルツR・リード

第5戦 10月17日 編集

映像外部リンク
MLB.comによる動画(英語)
初回裏、ジョン・オルルドの2点本塁打でメッツが先制(1分6秒)
4回表途中からメッツのオーレル・ハーシュハイザーが救援登板、3.1イニングを無失点に抑える(1分20秒)
7回表二死満塁、メッツの5番手投手パット・マホームズがアンドリュー・ジョーンズを左飛に打ち取って危機を脱する(27秒)
8回表一死二塁、マホームズが代打ホセ・ヘルナンデスを空振り三振に仕留める(29秒)
延長13回表二死一塁、ブレーブスのチッパー・ジョーンズが二塁打を放ち一塁走者キース・ロックハートが生還を狙うも、メッツの中継プレイに本塁憤死(1分10秒)
ブレーブスの5番手投手ジョン・ロッカーが、13回裏から1.1イニングを無失点に封じる(1分34秒)
15回裏、メッツ先頭打者ショーン・ダンストンが12球粘って中前打で出塁(1分46秒)
メッツは同点に追いついたあとなおも一死満塁から、ロビン・ベンチュラの柵越え "グランドスラム・シングル" でサヨナラ勝利(5分21秒)
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アトランタ・ブレーブス0002000000000013132
ニューヨーク・メッツ200000000000002x4111
  1. オクタビオ・ドーテル(1勝)  ケビン・マグリンシー(1敗)  
  2. 本塁打
    NYM:ジョン・オルルド2号2ラン
  3. 審判
    [球審]ジェリー・レイン
    [塁審]一塁: ジェリー・クロフォード、二塁: エド・モンタギュー、三塁: ジェフ・ケロッグ
    [外審]左翼: チャーリー・レリフォード、右翼: エド・ラピュアーノ
  4. 試合開始時刻: 東部夏時間UTC-4)午後4時9分 試合時間: 5時間46分 観客: 5万5723人 気温: 67°F(19.4°C)
    詳細: Baseball-Reference.com
両チームの先発ラインナップ
アトランタ・ブレーブスニューヨーク・メッツ
打順守備選手打席打順守備選手打席
1G・ウィリアムズ1R・ヘンダーソン
2B・ブーン2E・アルフォンゾ
3C・ジョーンズ3J・オルルド
4B・ジョーダン4M・ピアッツァ
5R・クレスコ5R・ベンチュラ
6A・ジョーンズ6M・モーラ
7E・ペレス7D・ハミルトン
8W・ワイス8R・オルドニェス
9G・マダックス9吉井理人
先発投手投球先発投手投球
G・マダックス吉井理人

第6戦 10月19日 編集

映像外部リンク
MLB.comによる動画(英語)
7回表、マイク・ピアッツァがジョン・スモルツから2点本塁打を放ちメッツが7-7の同点に(31秒)
8回裏、ブライアン・ハンターの適時打でブレーブスが8-8の同点に(55秒)
延長10回裏、代打オジー・ギーエンの適時打でブレーブスが9-9の同点に(1分15秒)
11回裏、ブレーブス先頭打者ジェラルド・ウィリアムズが二塁打で出塁(44秒)
そのあと一死満塁となり、アンドリュー・ジョーンズがケニー・ロジャースから四球を選ぶ。サヨナラの押し出しとなってブレーブスのリーグ優勝が決定(1分33秒)
 1234567891011RHE
ニューヨーク・メッツ000003410109152
アトランタ・ブレーブス50000201011x10101
  1. ラス・スプリンガー(1勝)  ケニー・ロジャース(2敗)  
  2. 本塁打
    NYM:マイク・ピアッツァ1号2ラン
  3. 審判
    [球審]ジェリー・クロフォード
    [塁審]一塁: エド・モンタギュー、二塁: ジェフ・ケロッグ、三塁: チャーリー・レリフォード
    [外審]左翼: エド・ラピュアーノ、右翼: ジェリー・レイン
  4. 試合開始時刻: 東部夏時間UTC-4)午後8時12分 試合時間: 4時間25分 観客: 5万2335人 気温: 64°F(17.8°C)
    詳細: Baseball-Reference.com
両チームの先発ラインナップ
ニューヨーク・メッツアトランタ・ブレーブス
打順守備選手打席打順守備選手打席
1R・ヘンダーソン1G・ウィリアムズ
2E・アルフォンゾ2B・ブーン
3J・オルルド3C・ジョーンズ
4M・ピアッツァ4B・ジョーダン
5R・ベンチュラ5A・ジョーンズ
6D・ハミルトン6E・ペレス
7R・セデーニョ7B・ハンター
8R・オルドニェス8W・ワイス
9A・ライター9K・ミルウッド
先発投手投球先発投手投球
A・ライターK・ミルウッド

評価 編集

ハードボール・タイムズ』のクリス・ジャフは2011年10月、歴代のポストシーズン各シリーズについて、面白さの数値化を試みた。「1点差試合は3ポイント、1-0の試合ならさらに1ポイント」「サヨナラゲームは10ポイント、サヨナラが本塁打によるものならさらに5ポイント」「7試合制のシリーズが最終戦までもつれれば15ポイント」などというように、試合経過やシリーズの展開が一定の条件を満たすのに応じてポイントを付与することで、主観的ではなく定量的な評価を行った。その結果、その年の両リーグ優勝決定戦まで全262シリーズの平均が45ポイントのところ、今シリーズは147.3ポイントを獲得し、1991年のワールドシリーズ(137.5ポイント)や1975年のワールドシリーズ(135.7ポイント)などを抑えて歴代最高となった[2]

脚注 編集

注釈 編集

  1. ^ 記録上ポストシーズン史上初のサヨナラ満塁本塁打は、今シリーズから12年後の2011年アメリカンリーグ優勝決定戦・第2戦において、テキサス・レンジャーズネルソン・クルーズが達成した。

出典 編集

  1. ^ "Head-to-Head Records," Baseball-Reference.com. 2021年5月13日閲覧。
  2. ^ a b Chris Jaffe, "The top ten postseason series of all-time," The Hardball Times, October 24, 2011. 2021年5月13日閲覧。
  3. ^ Anthony McCarron, "Nelson Cruz's walk-off grand slam powers Rangers to 7-3 win in ALCS Game 2 over Tigers," New York Daily News, October 11, 2011. 2021年5月13日閲覧。
  4. ^ Daniel Marks, "Postseason Pendulums - Part 2 - The "Walk Offs"," Bill James Online, June 25, 2017. 2021年5月13日閲覧。

外部リンク 編集