介護をする方法

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自身の親が要介護となった現実を前に、ようやく『介護』の二文字と真剣に向き合い、その意味を理解するにつれ、日々より大きな不安感に包まれる人は少なくありません。親の介護で会社を辞めざるを得なくなった、ゴールが見えない介護に疲れ、最悪の選択に及んでしまったなど、負の記憶ばかりが頭に蘇れば、それも当然でしょう。しかしながら信憑性に乏しい、遠い記憶の断片に怯えるばかりでは、親を介護する前に、自分自身の心身が壊れてしまいかねません。親の介護が始まることで、その先にどのような展開が想定されるのか、介護を続ける上での注意点や役立つ知識はどのようなものかなど、踏まえておくべきポイントが見過ごせません。まずは在宅介護を始めるに際し、必ず最初にすべき作業の内容を理解するところから、介護生活の第一歩を、臆せず確実に踏み出す姿勢が望まれます。[1]

方法 1
方法 1 の 4:

最初にすべきことを知る

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    介護専門の相談窓口を活用する 介護生活が始まったのであれば、まずは市区町村の介護保険課など、専門機関に相談するところから準備を整えましょう。居住地域ごとに設置されている地域包括支援センターも介護専門の相談窓口を設置しており、相談者が足を運べない場合、相談員に自宅に来てもらって相談に乗ってもらうことも可能です。最寄りの地域包括支援センターの場所は、インターネット検索で簡単に確認でき、市区町村の役所でも教えてもらえます。[2]
    • 相談に際しては、親の症状を正確かつ正直に伝える姿勢が大切です。身内の恥を言葉にはできないと、認知症の症状を軽度に伝えてしまうと、的確なアドバイスが望めません。
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    ケアマネージャーを探す 介護認定結果は『要支援』『要介護』に大別されます。要支援認定の場合には、地域包括支援センター在籍のケアマネージャーが、要介護認定の場合には、居宅介護支援事務所在籍のケアマネージャーが、それぞれ担当者となります。市区町村役場で、ケアマネージャーが在籍する居宅介護支援事務所の一覧表を受け取り、本人もしくは家族が、自分たちを担当するケアマネージャーを選出します。ケアマネーカーが決まれば、介護生活を始める上での困りごとや不安点などを相談し、解決案を提案してもらいましょう。この提案と本人と家族の意向を擦り合わせることで、介護生活のアウトラインを見極めましょう。[3]
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    介護保険サービス利用の手続きをする 親が要介護状態となれば、速やかに介護保険サービス利用の手続きを行いましょう。所定の手続きを終えて介護認定結果が下りると、介護保険証が送付され、介護保険サービスの利用が可能となります。ここで必要となるのが『ケアプラン』の作成作業です。ケアプラン作成に際しては、介護人を務める本人と家族が作成する、もしくは専門知識を有するケアマネージャーに作成を依頼する、2つの選択肢があります。[4]
    • ケアプランの作成には専門知識と時間と労力が必要なため、ケアマネージャーに依頼する方がスムーズかつ、より要介護者に適したプランの作成が期待できます。
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方法 2
方法 2 の 4:

介護生活を見据える

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    遠距離介護を知る 遠く離れた場所で暮らす親を介護する遠距離介護は、たとえば毎週末に東京から故郷の新潟県に介護や生活支援に通うという介護の方法です。互いの生活環境を変えず、介護保険サービスで親を介護してもらえるため、日常的な介護疲弊を抑えられます。一方で万一が生じた際に直ぐに駆けつけられない、日々の状況が把握し辛い、交通費の負担が大きくなるなどがデメリットです。
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    近居介護を知る 同居の必要がなく、ある程度自立している、介護状態が重くない親であれば可能と判断される、親の暮らす家の近隣に住んで、介護や生活支援を行う介護スタイルです。それぞれの生活スタイルを保った状態での介護のため、同居介護と比較して人間関係によるストレスを抑え、近くに住んでいることで、親の状況を把握しやすい介護の方法です。一方で親を近くに呼び寄せた場合、環境の変化が親のストレスとなり、新たな生活環境に馴染むまでに時間を要し、認知症の進行につながるリスクが懸念されます。
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    在宅(同居)介護を知る ひとつ屋根の下に要介護の親と子供が一緒に暮らす、介護の方法です。親の要介護度が進行し、自立が困難な状況となった場合、介護施設に預ける方法と同様、視野に入れるべき選択肢です。親を自宅に呼び寄せる、子供が親の自宅に住み替える、より介護に適した住居に双方が引っ越す、という3つのケースが想定されます。本人の生活環境に大きな影響が避けられず、実践に際しては、メリット・デメリットを十分に踏まえた上での、迅速かつ慎重な判断が望まれます。[5]
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    在宅(同居)介護のメリットを検証する 本人(子供)の日常生活上の影響や制限など、懸念されるマイナス面に対する不安が膨らみがちな在宅(同居)介護ですが、視点を『介護』に合わせて検証すると、以下のメリットが見過ごせません。
    • 万一の親の体調急変などに気づきやすく、初動の遅れから事態をさらに悪化させる、手遅れとなるリスクが小さい。
    • 地域の介護サービスに関する生の情報を得やすく、ケアマネージャーとの面談も容易である。
    • 孫と祖父母の交流など、同居ならではの家族交流がしやすい環境が整う。
    • 別居、遠距離介護と比較して、家賃や介護に要する交通費などを抑えられる。
    • 自立した親の介護であれば、孫(自身の子供)の相手や家事の一部を任せることで、自分の時間を確保できる。
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    在宅(同居)介護のデメリットを検証する 24時間要介護者である親の存在を意識せねばならない在宅(同居)介護に臨むのであれは、家族それぞれに生じるであろうデメリットを、事前に知っておく必要があります。
    • 親を呼び寄せる場合、新しい生活環境に馴染むまでにストレスが生じ、引っ越し先の地域に馴染めるとは限らない。
    • 転居前の友人や知人と会えなくなり、ストレスから認知症の症状が進行する可能性が懸念される。
    • それまで異なる生活スタイルだった親子の同居により、家族それぞれにストレスが生じる、さらには嫁姑問題など、新たな人間関係のトラブルが生じる可能性がある。
    • 介護可能な同居人が存在することで、利用できない行政・介護サービスがある。
    • 独居高齢者と比較して、特別養護老人ホームの入居優先度が低くなる。
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方法 3
方法 3 の 4:

家族間のトラブルを防ぐ

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    トラブルに発展する原因を知る 親の介護に端を発する兄弟姉妹間のトラブルは、水面下で数え切れないのが現状とされており、その大きな要因として、介護は突然始まってしまう傾向が顕著であることが挙げられます。家族内に介護に関する心構えがない状況下、とりあえず対応可能な誰かが引き受けざるを得なくなる流れは、特定の人物だけが大きな負担を背負う展開につながりかねません。さらには介護の条件を十分話し合わず、曖昧な状態でスタートさせてしまった結果、金銭トラブルなど、より複雑な問題が泥沼化してしまう事例も散見されるようです。あるいは介護したくとも、住宅ローンを抱えている、仕事で責任あるポジションに就いているなど、介護する余裕がなく、願わくば回避したい現状の人も少なくありません。結果として親の近所に住んでいるから、独身だからなどの理由で、兄弟姉妹の誰かに介護を押しつけてしまうケースが多いと伝えられています。[6]
    • 時折単発で手伝うだけでは、在宅(同居)介護の大変さは理解できません。核家族化が浸透した状況下、家から出てそれぞれの家庭を構える兄弟姉妹と介護者の間には、自ずと介護に対する認識の温度差が顕著となり、双方に対して負の感情が芽生え始めがちです。「どうせそんなに大変ではないだろう」「どうせ理解してもらえない」との双方の思い込みと諦めが、家族間の溝をより大きく深くしてしまいます。
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    兄弟姉妹間のトラブル事例を検証する 実家を出てそれぞれが家庭を持ち、各々の暮らしを続ける中、兄弟姉妹は次第に疎遠となり、個人個人が抱く価値観や生活スタイルなどに、違いが生じて当然です。こうした状況下で介護問題が生じると、介護という現実そのものに対するスタンスの違いから、大きなトラブルへと発展する可能性が見過ごせません。介護を始めるに際しては、伝えられているトラブルの事例を検証することで、無用なトラブル回避に備えましょう。
    • 「介護は長男の嫁の義務」なる古い風習 家を継ぐ長男は親と同居し、妻が介護を引き受けることが当然であるとの家制度は、多くの地域で過去のものとなりつつあります。一方で今日もこの価値観を踏襲する家も見られ、長男の嫁が納得できず、家族間トラブルに発展するケースが見られます。
    • 手も金も出さず口だけ出す兄弟姉妹 誰が親の介護をするのかで揉めた挙句、介護を誰か1人だけに押し付け、費用面の援助もせず、たまに訪れては口だけ一人前に出すパターンです。結果介護者は大きな不公平感を抱いてしまいます。
    • 親の預貯金不足 介護者が金銭的な窮状を兄弟姉妹に相談しても、頑なに金銭援助を拒み、親を抱えた介護者だけが孤立してしまう、深刻なケースも潜在的に少なくないと言われています。一方で離れて暮らす兄弟姉妹が「親の遺産を独占されるのでは」との疑念を抱き始めれば、互いに抱く嫌悪感は半端ではなく、文字通り『骨肉の争い』へと発展しかねません。
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    トラブル回避策を講じる 兄弟姉妹間で生じるトラブルの回避には、介護される親の考え(希望)と各々の意思を、全員で共有する作業が不可欠です。兄弟姉妹全員で親の介護に対する本音を出し合い、各々のできること・できないことを確かめ合い、リーダー格の『主介護者』と、それぞれ役割分担を、全員が納得する形で決めましょう。親がまだ元気で、普通に意思疎通を図れる段階で、日常会話を通して介護に対する考えや希望を聞き出しておく対応も大切です。世代間のギャップが否めない親の中には、自分の中だけで「子供たちはこうしてくれるに違いない」と決めてかかっている人も見られます。ざっくばらんな会話を通じ、できることとできないことを伝え、時に必要と感じたのであれば、真剣に話しましょう。[7]
    • 可能であれば親の年金収入や預貯金額なども確かめておきましょう。介護に必要となる費用面を、より正確に算段しておく準備も大切です。
    • 印鑑、通帳、権利証その他の重要書類、資産についても、万一の際に保管場所がわかる状態を整えておきましょう。
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方法 4
方法 4 の 4:

介護生活に臨む

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    基本的な考え方を確かめる 実際に介護生活に臨むに際しては、今一度介護に対する基本的な考え方を、自身の中で確かめる作業が大切です。きちんとした指針や姿勢を持たないまま、ただその時々の『点』の対応では、親と自身が望む一貫性の見られる介護とは言えません。ここで求められるのは、専門的な知識やノウハウを難しく捉えるのではなく、『心』に視線を合わせた自己確認です。[8]
    • 尊厳を守る 遡ること30~40年前、認知症は「痴呆」と称され、社会全体の正しい認識も乏しく、認知症の人を非人間的に扱う価値観が存在していました。しかしながら今日では、認知症の人も、必要な援助を受けながら社会生活を継続する権利が保障されており、当事者の尊厳を守る重要性も周知されています。認知症の要介護者を『あれもこれもできなくなった人』などと捉えることなく、一人の人間として向き合う介護が望まれます。「もしも自分が認知症になったら」と立場を置き換えて考えることで、要介護者が望むケアをしっかりと見つめて実践しましょう。
    • できることは本人にやってもらう より親切な介護を心がけているつもりで、要介護者に関するすべてを世話してあげる対応は、必ずしも適切な介護とは限りません。本人にできることはやってもらうことで、生きがいを実感してもらいましょう。得意なことであれば積極的に取り組んでもらうことで、本人の自尊心を保ってあげる計らいは、心ある介護に他なりません。自身の存在と行動が第三者の役に立っていることを実感することで、認知症の進行に伴い不安視される、徘徊や妄想などの困った症状(BPSD)発症の抑制効果も期待できるでしょう。
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    互いの気持ちの理解に努める 介護する側とされる側双方の気持ちは、時に反対方向に向きがちです。互いに感情を有する人間である以上、腹立たしい、悲しいなどの負の感情を抱いたとしても、それは間違った心の動きではありません。とりわけ介護者は常に、相手が何を望んでいるのか、口に出している言葉は本当の気持ちなのかなど、常に真意の理解に努めましょう。[9]
    • 介護の対象が親であることから、疑問を詰問する(問い詰める・問い正す)ような言動に及ばぬよう、注意が必要です。我が子に負担をかけていることへの申し訳なさから、心を閉ざして本音を話してくれなくなってしまうと、スムーズな介護に支障が生じかねず、相互信頼関係にも悪影響が懸念されます。
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    自身の生活を守る 献身的な介護生活の結果、介護者である自分自身の生活が崩壊してしまってはなりません。介護が終わり親を見送った後も、自分と家族はこの経済社会を生きて行かねばならず、そのために必要な収入の確保と貯え、そして何より健全な肉体と精神が不可欠です。たとえば自分の時間が確保できず、ストレスから心身のコンディションを崩してしまっては、親と自身の双方が望む介護の実践が、難しくなってしまいます。「出口がない介護」などと囁かれますが、自らを介護の袋小路に追い込んではなりません。『まずは自身の健やかな生活の確保なくして介護生活は成り立たず』と覚えておきましょう。[10]
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    自分1人で抱え込まない 介護という現実を自分1人だけですべて抱え込まず、ケアマネージャーや信頼できる第三者などに、疑問や不安を臆せず相談する姿勢で臨みましょう。先にも触れた通り、今日の日本には、要介護者と介護人に必要なサポートを届ける、各種機関、施設、専門家が存在しています。責任感から「この程度で弱音を口にしてはならない」などの誤った考えに陥ってしまい、すべてを自分1人で抱え込んでしまうと、いつかは圧し潰されてしまいます。親の介護は当事者とその家族だけの問題ではありません。僅かでも負の感情が心を過ぎったのであれば、遠慮なくSOSを発信することで、より適切なサポートを得ながら続けるべき、晩年の親子の心ある共同作業、それが介護です。
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ポイント

  • 要介護状態となった場合、まずは介護保険サービス利用の手続きを行い、ケアマネージャーを探しましょう。
  • 不安や疑問を曖昧なまま1人で全てを抱え込まず、臆せずケアマネージャーや信頼できる第三者、専門機関などに相談する姿勢を忘れず、介護生活を続けましょう。
  • 介護者の負担が大きくなりがちの在宅(同居)介護に臨む際には、そのメリットとデメリットを十分理解の上で、これから続く介護生活を冷静に見据える準備が不可欠です。
  • 尊厳を守り、できることは自分でやってもらう介護を通じ、要介護者に生きがいを実感してもらえる、相手の心に目を向けた介護を心がけましょう。
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注意事項

  • 突然の介護の始まりから、兄弟姉妹(家族)間のトラブルに発展する可能性が無視できません。これまでの前例を検証し、自らが講じられる対応を通じ、リスク回避に努めましょう。
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このHow.com.vn記事について

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