Skylakeマイクロアーキテクチャ

Skylakeマイクロアーキテクチャ(スカイレイク マイクロアーキテクチャ)とは、インテルによって開発されたマイクロプロセッサマイクロアーキテクチャである。Broadwellの後継となる第6世代Intel Coreプロセッサとして2015年8月に製品化された。

Skylake
生産時期2015年8月から
生産者インテル
プロセスルール14nm
アーキテクチャx64
マイクロアーキテクチャSkylake
命令セットx86-64, Intel 64
コア数2から28
(スレッド数:2から36)
ソケット
  • LGA 1151
  • LGA 2066
  • LGA 3647
前世代プロセッサBroadwell
次世代プロセッサKaby Lake
Cascade Lake
L1キャッシュコアあたり64KiB
(命令32+データ32)
L2キャッシュコアあたり256KiB
L3キャッシュコアあたり最大2MiB
ブランド名
  • Core m3
  • Core m5
  • Core m7
  • Core i3
  • Core i5
  • Core i7
  • Core i9
  • Celeron
  • Pentium
  • Xeon
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SkylakeマイクロアーキテクチャはBaniasConroeSandy Bridgeと同じイスラエルハイファが担当し、開発期間4年で性能増大を目指したが、途中4.5Wでの動作を追加することが決まり、省電力と性能のバランスを採る方向に設計が変更された[1]

2014年のIDFで動作デモが公開され[2]、14nmプロセスルールにおける製造に難航したBroadwellとは異なりモバイルからサーバーまでスケーラブルな製品展開を可能としたが、一般向けとハイエンド向けでアーキテクチャが分かれている[3]

デスクトップ向け10nmプロセスルールの開発が難航し移行が進まなかった中で、Kaby LakeCoffee LakeAmber LakeWhiskey LakeComet Lakeと6年にもわたってSkylakeマイクロアーキテクチャが使われ続けた。

特徴 編集

  • 14 nm プロセスルール
  • 最大5命令同時デコード、6 uOPs同時発行
  • アウトオブオーダリソースの増強
  • DDR4メモリに対応
  • ファイングレインパワーコントロール
  • Intel Speed Shift Technologyを搭載
  • デジタルPLL
  • Intel MPX(Memory Protection eXtentions)命令に対応

一般向け 編集

  • Intel SGX命令を搭載
  • Gen 9 Graphicsの統合
  • カメラ用のISPを統合
  • DMI3.0インターフェイス
  • FIVRのオミット

ハイエンド向け 編集

  • AVX-512
  • 実行ポートに512-bitのFMAユニットを追加
  • L2 1MB/コア、ノンインクルーシブ化されたLLC 1.375MB/コア
  • 最大6メモリーチャネル
  • メッシュバス
  • UPI

製品構成 編集

デスクトップ向け 編集

モデルナンバー末尾に「K」が付いたモデルはCPUクーラーが付属しない。

コア (スレッド)ブランド・型番GPUCPU周波数

(GHz)

TDP

(W)

GPU周波数

(GHz)

L3

キャッシュ

(MB)

ソケット発売日価格

(US$)

ベースターボベース最大
18(36)Core i97980XEN/A2.64.4165N/AN/A24.75LGA20662017年7月21日1999
16(32)7960X2.8221699
14(28)7940X3.119.251399
12(24)7920X2.914016.51199
10(20)7900X3.34.513.752017年7月14日999
8(16)Core i77820X3.611599
6(12)7800X3.54.08.25389
4(8)6700KHD 5304.04.2910.351.158LGA11512015年8月5日339
67003.44.0652015年9月2日303
6700T2.83.6351.1
4(4)Core i56600K3.53.9911.1562015年8月5日242
66003.3652015年9月2日213
6600T2.73.5351.1
65003.23.6651.05192
6500T2.53.1351.1
6402PHD 5102.83.4650.952016年1月28日182
6400HD 5302.73.32015年9月2日187
6400T2.22.835182
2(4)Core i363203.9N/A511.1542015年10月30日
63003.8
6300T3.3350.95
61003.7511.053
6100T3.2350.952015年9月27日
6098PHD 5103.6541.052016年1月28日117
2(2)PentiumG4520HD 530512015年10月30日
G45003.5
G4500T3.0350.952015年9月27日
G4400HD 5103.3541.02015年10月30日
G4400T2.9350.95
CeleronG39205122015年Q452
G39002.842
G3900T2.635-

モバイル向け 編集

Xeonのモバイル向けモデルが初めてリリースされた。Core i7では、Extreme Editionではないオーバークロック対応モデル(6820HK)が初めてリリースされた。また従来モバイル向けでは2コア4スレッドモデルのみのリリースだったCore i5に、デスクトップ向けと同じ4コア4スレッドのモデルが初めてリリースされた。

Core mではCore m7/m5/m3とランク分けがなされた。

コア
(スレッド)
ブランド・型番GPUCPU周波数
(GHz)
TDP
(W)
GPU
周波数
(GHz)
L3
キャッシュ
(MB)
ECC
メモリ
対応
発売日価格
(US$)
定格ターボ定格cTDP定格最大
1コア2コアUpDown
4(8)Xeon E31535M v5HD P5302.93.83.645N/A350.351.058はい2015年10月27日623
1505M v52.83.73.5434
Core i76920HQHD 5302.93.83.6いいえ568
6820HQ2.73.63.4378
6820HK2015年9月1日1
6700HQ2.63.53.36
2(4)6660UIris 5402.43.4159.50.342016年Q1415
6650U2.23.22015年Q3
6600UHD 5202.6257.52015年9月1日1393
6567UIris 5503.33.63.428N/A231.12015年Q3-
6560UIris 5402.23.23.1159.51.05-
6500UHD 5202.53.13.0257.52015年9月1日1393
4(4)Core i56440HQHD 5302.63.53.345N/A350.350.9562015年10月27日250
2(4)6360UIris 5402.03.12.9159.50.31.042015年Q3304
4(4)6300HQHD 5302.33.23.045350.350.9562015年9月1日1250
2(4)6300UHD 5202.43.02.915257.50.31.032015年Q3281
6287UIris 5503.13.53.328N/A231.14304
6267U2.93.33.11.05
6260UIris 5401.82.92.7159.50.95
6200UHD 5202.32.8257.51.032015年9月1日1281
Core i36167UIris 5502.7N/A28N/A232015年Q3304
6100HHD 53035N/A0.350.92015年9月1日1225
6100UHD 5202.3157.50.31.0281
Pentium4405UHD 5102.1100.9522015年11月161
4405Y1.564.50.8
2(2)Celeron3955U2.015100.92015年Q4-
3855U1.6-
2(4)Core m76Y75HD 5151.23.12.94.573.51.042015年9月1日1393
Core m56Y571.12.82.40.9281
6Y542.7
Core m36Y300.92.22.03.80.85
  • 1アジア以外の地域では2015年9月27日の予定。

[4]

サーバー/ワークステーション向け 編集

コア
(スレッド)
ブランド・型番GPUCPU周波数
(GHz)
TDP
(W)
GPU
周波数
(MHz)
L3
キャッシュ
(MB)
GPU
eDRAM
(MB)
ソケット発売日価格
(US$)
定格ターボ定格トレイボックス
4(8)Xeon E31280v5N/A3.7480N/A8N/ALGA1151612-
1275v5HD P5303.63502015年11月11日339-
1270v5N/AN/A328339
1260Lv52.93.945294-
1245v5HD P5303.5803502015年11月11日284-
1240v5N/AN/A272282
1240Lv52.13.225278-
4(4)1235Lv5HD P53023350250-
4(8)1230v5N/A3.43.880N/A2015年11月11日261
4(4)1225v5HD P5303.33.7350213-
1220v5N/A33.5N/A193-

後継 編集

後継製品の開発コードは当初Skymont[5]と言われていたがCannon Lakeとなった。その後10nmプロセスルールの遅延により予定は変更され、Skylakeと同じ14nmプロセスルールのKaby Lakeを挟むこととなった。Kaby Lakeは2016年9月に第7世代Intel CoreプロセッサとしてノートPC用の低電圧仕様が先行発表され、続いて2017年1月にノートPC用の標準電圧仕様およびデスクトップ用が発表された。更に14nmプロセスルールでCoffee Lakeを2018年に投入し、並行して10nmプロセスルールのCannon Lakeを投入する予定[6]とされたが、Coffee Lakeはやや前倒しされて2017年5月に第8世代Intel Coreプロセッサとして予告[7]、2017年10月より順次発売された。最終的にCannon Lakeは2018年5月にCore i3 8121Uとして出荷[8]されるに留った。

脆弱性対応 編集

Skylakeマイクロアーキテクチャには、多数の脆弱性がある。Intelや各メーカーは、ファームウェアやOSで脆弱性の緩和を図ったが、より効果的な対策には次世代のIce_Lakeマイクロアーキテクチャを待たねばならなかった。

脆弱性コード名公称概要Coffee Lake Reflesh

Whisky Lakeの一部

Comet Lake
Variant 1Spectre条件付き分岐における

境界チェックの回避(Bounds Check Bypass)CVE-2017-5753

オペレーティングシステムオペレーティングシステム
Variant 2Spectre分岐先のインジェクション

(Branch Target Injection)CVE-2017-5715

マイクロコード

オペレーティングシステム

マイクロコード

オペレーティングシステム

Variant 3Meltdown不正なデータキャッシュの読み込み

(Rogue Data Cache Load)CVE-2017-5754

ハードウェアハードウェア
Variant 3aN/A不正なシステムレジスタの読み取り

(Rogue System Register Read )CVE-2018-3640

マイクロコード

オペレーティングシステム

マイクロコントローラ
Variant 4N/A書き込み前メモリの参照

(Speculative Store Bypass)CVE-2018-3639

マイクロコード

オペレーティングシステム

マイクロコード

オペレーティングシステム

L1TFForeshadowL1キャッシュへの不正なアクセス

CVE-2018-3646

ハードウェアハードウェア
MFBDSZombieload

RIDL

ストアバッファに関する

サイドチャネルによる情報漏洩CVE-2018-12130

マイクロコードハードウェア
MSBDSFalloutフルバッファに関する

サイドチャネルによる情報漏洩CVE-2018-12126

マイクロコードハードウェア
MLPDSRIDLロードポートに関する

サイドチャネルによる情報漏洩CVE-2018-12127

マイクロコードハードウェア
MDSUMRIDLキャッシュ不可メモリに関する

サイドチャネルによる情報漏洩CVE-2019-11091

マイクロコードハードウェア

その他 編集

Skylakeマイクロアーキテクチャを搭載したWindows 7Windows 8.1について、重要なセキュリティアップデートを除き、2017年7月17日まで(予定)のサポートに短縮されることがマイクロソフトから公式発表されていた[9] が、後にほぼ撤回[10] となった。またWindows 11へのアップデートの要件がSkylakeのCore Xシリーズ、Xeon Wシリーズへと緩和された[11]

脚注 編集

  1. ^ 笠原 一輝 (2015年9月7日). “Intelの開発責任者に聞く、Skylake開発秘話”. https://pc.watch.impress.co.jp/docs/column/ubiq/719844.html 2020年5月31日閲覧。 
  2. ^ 「Skylake」が動いた! IntelがIDF14で次期アーキテクチャの動作デモを初公開”. ITMedia (2014年9月11日). 2015年9月7日閲覧。
  3. ^ 後藤 弘茂 (2018年2月13日). “28コアサーバーCPU「Skylake-SP」の詳細”. 2020年5月31日閲覧。
  4. ^ Skylakeのデスクトップ向け通常版およびモバイル版が一斉発表” (2015年9月2日). 2015年9月2日閲覧。
  5. ^ Demerjian, Charlie. “After Intel's Haswell comes Broadwell”. Semiaccurate.com. 2012年1月4日閲覧。
  6. ^ 【笠原一輝のユビキタス情報局】Intel、2018年に14nmの新CPU“Coffee Lake”を投入 ~10nmに微細化されるCannon Lakeと並列投入 - PC Watch
  7. ^ 若杉 紀彦 (2017年5月30日). “第8世代Coreは年内投入で、第7世代から3割性能向上”. https://pc.watch.impress.co.jp/docs/news/event/1062440.html 2017年6月2日閲覧。 
  8. ^ 劉 尭 (2018年5月17日). “Cannon LakeのCore i3-8121Uがこっそり発表、AVX-512命令対応もGPUは無効か”. https://pc.watch.impress.co.jp/docs/news/1122271.html 2020年5月31日閲覧。 
  9. ^ Microsoft、SkylakeでのWindows 7/8.1サポートを2017年7月までに短縮 ~Intel、AMD、Qualcommの次期SoCはWindows 10のみをサポート”. インプレス (2016年1月18日). 2016年2月14日閲覧。
  10. ^ Windows 7/8.1搭載Skylake PCのサポート期間短縮は結局撤回に”. インプレス (2016年8月12日). 2016年8月14日閲覧。
  11. ^ Microsoft、「Windows 11」にアップデートできるプロセッサを少し追加 チェックプログラムも再公開へ

関連項目 編集