防衛研究所

東京都新宿区の防衛省市ヶ谷地区にある防衛省施設等機関
防衛研修所から転送)

防衛研究所(ぼうえいけんきゅうしょ、: National Institute for Defense Studies, NIDS)は、東京都新宿区防衛省市ヶ谷地区にある防衛省施設等機関の一つである。

防衛研究所
正式名称防衛研究所
英語名称National Institute for Defense Studies
略称NIDS
組織形態防衛省施設等機関
所在地日本の旗 日本
162-8808
東京都新宿区市谷本村町5番1号
設立年月日1952年8月1日
前身保安庁保安研修所
所管防衛省
出版物『安全保障戦略研究』
公式サイト防衛研究所
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概要 編集

安全保障に関する諸問題について政策的研究・分析を行う防衛省のシンクタンク的な組織で、自衛隊における高級幹部等育成のための戦略大学レベルの教育機関としての機能を有する。2011年度(平成23年度)、予算は約16億円、人員は研究員85名で管理員47名の132名である。

防衛省の政策研究の中核として、安全保障や戦史に関して、政策指向を調査研究し、戦史史料を管理して公開するほか、教育訓練で自衛官のほか関係諸国から学生を受け入れる[注釈 1]

2013年(平成25年)12月17日に閣議決定・公開された中期防衛力整備計画に基づき、2016年(平成28年)8月に防衛省目黒地区から市ヶ谷地区へ移転した。

2022年令和4年)8月1日をもって創立70周年を迎えて、キャッチコピーとして「NIDS 70th Anniversary ―更なる飛躍へ―」を掲げている[1]

設置課程 編集

  • 一般課程 - 1佐級の自衛官、課長補佐級の防衛省職員、他省庁・民間企業の研修員、他国軍の留学生らを対象とする約10か月の課程である。
  • 特別課程 - 一般課程の上級課程にあたり、将補・1佐級の自衛官と課長級の防衛省職員、他省庁・民間企業の研修員を対象とする約3週間の課程である。

沿革 編集

  • 1952年(昭和27年)8月 - 保安庁保安研修所として発足。
  • 1954年(昭和29年)7月 - 防衛庁発足、防衛研修所と改称。
  • 1956年(昭和31年)5月 - 陸上自衛隊幹部学校より戦史室を編入。
  • 1973年(昭和48年)4月 - 研究部、教育部の2部を新設、研究部に6研究室を新設し、調査研究・教育体制を確立。
  • 1976年(昭和51年)5月 - 戦史室を戦史部に改め、戦史部に2研究室を設置。
  • 1984年(昭和59年)7月 - 研究部を第1研究部及び第2研究部に組織改編。
  • 1985年(昭和60年)4月 - 防衛庁防衛研究所と改称し、政策部門に直結した調査研究体制を確立。
  • 1994年(平成6年)10月 - 陸・海・空自衛隊の各幹部学校及び統合幕僚学校の各図書室を防衛研究所の図書館(本館)に統合。
  • 2001年(平成13年)3月 - 図書館(史料閲覧室)が歴史的資料を適切に管理する公文書館に類する機関として総務大臣により指定。
  • 2002年(平成14年)
    • 4月 - 図書館に史料室を新設。
    • 8月 - 防衛研究所創立50周年。
  • 2004年(平成16年)4月 - 統括研究官を新設、第1研究部及び第2研究部を研究部に改編。
  • 2007年(平成19年)1月 - 防衛庁が省に昇格。防衛省防衛研究所と改称。
  • 2009年(平成21年)4月 - 研究部に第7研究室を新設。
  • 2011年(平成23年)9月 - 研究部を政策研究部、理論研究部及び地域研究部に、戦史部と図書館(史料室のみ)を戦史研究センターに改編するとともに企画部を新設。
  • 2012年(平成24年)8月 - 防衛研究所創立60周年。
  • 2015年(平成27年)4月 - 研究幹事、特別研究官(国際交流・図書担当)、特別研究官(政策シミュレーション担当)を新設。
  • 2016年(平成28年)4月 - 地域研究部に中国研究室を新設。

内部組織 編集

(2022年3月現在、主な出典:[3]

  • 防衛研究所長(文官背広組)・政令指定職4号(本省局長級))
  • 副所長(陸将補(一))
  • 研究幹事
  • 企画部(総務、人事、会計並びに調査研究及び研修の総合的な企画及び調整)
    • 総務課
    • 企画調整課
  • 政策研究部(防衛政策・諸外国の国防政策・戦略理論・グローバルな安全保障に関する調査研究)
    • 防衛政策研究室
    • 軍事戦略研究室
    • グローバル安全保障研究室
    • サイバー安全保障研究室
  • 理論研究部(我が国及び諸外国の政治・法制・社会及び国防経済学や紛争後復興に関する調査研究)
    • 政治・法制研究室
    • 社会・経済研究室
  • 地域研究部(国際関係及び諸外国の情勢に関する調査研究)
    • 中国研究室
    • アジア・アフリカ研究室
    • 米欧ロシア研究室
  • 教育部(幹部自衛官その他幹部職員への安全保障に関する教育)
    • 教務課
    • 教育課程運営室
  • 戦史研究センター(戦史に関する調査研究、戦史の編さん及び戦史史料の管理・調査研究)
    • 戦史研究室
    • 安全保障政策史研究室
    • 国際紛争史研究室
    • 史料室
  • 特別研究官(国際交流・図書担当)
    • 図書運営班
  • 特別研究官(政策シミュレーション担当)
    • 政策シミュレーション室
かつてあった内部組織
  • 図書館(航空自衛隊幹部学校に移管)

主要幹部 編集

官職名階級氏名補職発令日前職
防衛研究所長防衛教官石川武2023年07月14日大臣官房政策立案総括審議官
副所長陸将補橋爪良友2024年03月28日陸上自衛隊教育訓練研究本部副本部長
兼 総合企画部長
研究幹事防衛教官兵頭慎治2023年04月01日防衛研究所政策研究部長
教育部長1等海佐近藤俊明2023年04月01日防衛研究所所員
歴代の防衛研究所長(含・保安研修所長及び防衛研修所長)
氏名在職期間出身校前職後職
保安研修所長
01江口見登留1952.8.1 - 1952.8.13京都帝国大学警察予備隊本部次長内閣官房副長官
02北村隆1952.12.5 - 1954.6.30東京帝国大学防衛研修所長
防衛研修所長
01北村隆1954.7.1 - 1957.8.2東京帝国大学保安研修所長退職
→1960.12.27 国防会議事務局長
02林一夫1957.8.2 - 1961.7.3東京帝国大学防衛庁防衛局長調達庁長官
03佐伯喜一1961.7.4 - 1964.9.1東京帝国大学防衛研修所所員退職、野村総合研究所社長
04麻生茂1964.11.17 - 1967.7.27東京帝国大学防衛庁参事官防衛庁人事局長
05有吉久雄1967.7.28 - 1969.11.20東京帝国大学防衛庁長官官房防衛審議官福岡県警察本部長(警視監
06麻生茂
(再任)
1969.11.21 - 1970.5.30東京帝国大学防衛庁人事教育局長退職
→同6.1 国立国会図書館専門調査員
07山田正雄1970.10.1 - 1972.6.20東京帝国大学1970.7.1 陸上幕僚長退官退職
08宍戸基男1972.6.20 - 1974.6.7東京帝国大学防衛庁長官官房長退職
→同6.21日本住宅公団監事
09大西誠一郎1974.6.7 - 1977.7.15東京帝国大学防衛庁参事官退職
10水間明1977.7.15 - 1981.7.23東北大学防衛庁参事官退職
11三好富美雄1981.7.23 - 1984.7.6東京大学調達実施本部副本部長(総務担当)退職
12伊藤参午1984.7.6 - 1985.4.1東京大学防衛医科大学校副校長(管理担当)退職
13小谷久1985.4.1 - 1985.4.5東京大学防衛施設庁次長防衛研究所長
防衛研究所長
01小谷久1985.4.6 - 1987.6.23東京大学防衛研修所長退職
02澤田和彦1987.6.23 - 1989.7.31東京大学技術研究本部副本部長調達実施本部長
03長谷川宏1989.8.1 - 1990.7.1東京大学防衛庁教育訓練局長調達実施本部長
04小池清彦1990.7.2 - 1990.11.15東京大学調達実施本部副本部長(総務担当)防衛庁教育訓練局長
05藤井一夫1990.11.16 - 1991.10.17東京大学防衛庁防衛局長防衛施設庁長官
06米山市郎1991.10.18 - 1992.6.29東京大学内閣官房内閣安全保障室調達実施本部長
07坪井龍文1992.6.30 - 1993.6.24東京大学防衛庁人事局長内閣官房内閣安全保障室長
08廣中佑見1993.6.25 - 1994.7.1東京農工大学技術研究本部副本部長退職
09草津辰夫1994.7.1 - 1996.7.2中央大学防衛施設庁総務部長退職
10太田洋次1996.7.2 - 1997.6.30京都大学技術研究本部副本部長防衛庁運用局長
11大森敬治1997.7.1 - 1998.6.29東京大学調達実施本部副本部長(総務担当)防衛庁経理局長
12首藤新悟1998.6.30 - 1998.11.19一橋大学防衛施設庁施設部長防衛庁経理局長
13大越康弘1998.11.20 - 2000.6.30東京大学防衛庁運用局長退職
14新貝正勝2000.6.30 - 2002.8.1東京大学防衛庁人事教育局長契約本部長
→2003.11.17 中津市
15柳澤協二2002.8.2 - 2004.3.31東京大学防衛庁参事官内閣官房副長官補
(安全保障・危機管理担当)
-飯原一樹2004.4.1 - 2004.7.22東京大学防衛庁防衛局長として防衛研究所長事務代理
16小林誠一2004.7.23 - 2005.8.8東京大学防衛庁人事教育局長退職
17河尻融2005.8.8 - 2006.8.21慶應義塾大学防衛医科大学校副校長(管理担当)退職
18石井道夫2006.8.21 - 2007.9.1早稲田大学防衛大学校副校長退職
19戸田量弘2007.9.1 - 2008.8.1日本大学防衛大学校副校長
(企画・管理担当)
退職
20新保雅俊2008.8.1 - 2009.8.1東京大学外務省大臣官房審議官退職
21米岡修一2009.8.1 - 2010.7.29京都大学海上保安庁交通部長退職
22枡田一彦2010.7.29 - 2011.8.15東京大学防衛医科大学校副校長防衛省人事教育局長
23髙見澤將林2011.8.15 - 2013.7.1東京大学防衛省防衛政策局長内閣官房副長官補
24三村亨2013.7.1 - 2014.7.24東京大学防衛省人事教育局長防衛省経理装備局長
25齊藤敏夫2014.7.25 - 2015.10.1東京大学防衛監察本部副監察監退職
26鈴木良之2015.10.1 - 2016.6.30中央大学防衛監察本部副監察監防衛省人事教育局長
27中村範明2016.7.1 - 2017.8.1早稲田大学防衛大学校副校長(企画・管理担当)退職
28山本達夫2017.8.1 - 2018.8.3東京大学大臣官房審議官退職
29廣瀨行成2018.8.3 - 2020.1.31東京大学財務省名古屋税関退職
30田中聡2020.1.31 - 2021.8.31大阪大学法学部防衛省地方協力局次長退職
31齋藤雅一2021.9.1 - 2022.8.5東京大学大臣官房公文書監理官退職
32川崎方啓2022.8.5 - 2023.7.14東京大学工学部人事教育局長→
2022.7.1 大臣官房付
退職
33石川武2022.7.14 -東京大学大臣官房政策立案総括審議官
  • 所長(事務代理を除く)在職中の官職は防衛教官[注釈 2]。原則として他の官職・階級は兼ねない。ただし、第4代防衛研修所長・麻生茂は就任時から1965.6.15まで防衛庁教官と防衛庁参事官を兼官。
  • 第2代保安研修所長・北村隆はそのまま初代防衛研修所長に就任したが、自衛隊法附則第3項の経過措置規定による自動的な継続在任とされ、別途「防衛研修所長を命ずる」旨の就任辞令は発出されなかった。

参考文献 編集

  • 防衛研究所50年史編さん委員会『防衛研究所五十年史』防衛研究所、2003年。JP番号:20410466
  • 防衛研究所安全保障研究会『これからの安全保障環境――世界の動向・日本の課題 世界化と地域化の複合潮流を読む』亜紀書房、1999年。ISBN 978-4-7505-9914-4

関連項目 編集

関係する人物一覧 編集

在籍する(した)研究者には民間の出身者、自衛官(いわゆる「制服組」)出身者の双方が存在する。

脚注 編集

注釈 編集

  1. ^ 2011年度(平成23年度)現在、タイインドネシアインドフランス韓国中国各1名、アメリカ3名の全9名。
  2. ^ 保安庁時代は保安庁教官、防衛庁時代は防衛庁教官。

出典 編集

  1. ^ “創立70周年ロゴ・キャッチコピー” (PDF). 防衛研究所パンフレット. 防衛省防衛研究所. (2022年). p. 3. オリジナルの2022年8月1日時点におけるアーカイブ。. https://warp.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/12363935/www.nids.mod.go.jp/about_us/pamph/pdf/4_content02.pdf 
  2. ^ “防衛研究所、8月に市ケ谷移転「国際会議場」を完備「史料閲覧室」は9月26日開室”. 朝雲新聞. (2016年7月27日). オリジナルの2016年8月4日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20160804014302/http://www.asagumo-news.com/homepage/htdocs/news/newsflash/201607/160727/16072701.html 
  3. ^ 防衛大学校、防衛医科大学校、防衛研究所及び防衛監察本部組織規則(昭和29年総理府令第39号)のほか、防衛研究所パンフレット』(PDF)防衛省防衛研究所、2023年4月。 オリジナルの2023年10月7日時点におけるアーカイブhttps://www.nids.mod.go.jp/about_us/pamph/pdf/2023_pamph.pdf 

外部リンク 編集