第1ヘリコプター団

陸上自衛隊の部隊

第1ヘリコプター団(だいいちヘリコプターだん、JGSDF 1st Helicopter Brigade)は、千葉県木更津市木更津駐屯地に団本部を置く、陸上総隊隷下の航空科部隊である。

第1ヘリコプター団
創設1968年(昭和43年)3月1日
所属政体日本の旗 日本
所属組織 陸上自衛隊
部隊編制単位
兵科航空科
兵種/任務/特性航空作戦
所在地千葉県 木更津市
編成地霞ヶ浦
上級単位陸上総隊
担当地域日本全国
主な戦歴福島第一原子力発電所事故での空中放水作戦
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概要 編集

第1輸送ヘリコプター群の4個飛行隊にCH-47J/JA輸送ヘリコプターを集中配備するほか、第102飛行隊にはUH-60JA多用途ヘリコプターを配備(編成時点で5機)しており、習志野駐屯地に駐屯する第1空挺団特殊作戦群や、相浦駐屯地等に駐屯する水陸機動団等と密接に連携し、空中機動を行う部隊である。また、皇室内閣総理大臣等の移動に使われるEC-225LPヘリコプターの運用を行う特別輸送ヘリコプター隊を隷下に置いている。第1ヘリコプター団長は陸将補で木更津駐屯地司令を兼ねる

2006年3月27日には、本州における連絡偵察機の集中運用を目的とした連絡偵察飛行隊が新編され、本部管理中隊および東北東部中部方面航空隊本部付隊所属のLR-1LR-2が管理換えされた。

長らく、制服左肩の部隊章(師団等標識)は上級部隊(大臣直轄・中央即応集団)だったが、2018年の陸上総隊に隷属替えと同時に第1ヘリコプター団独自の部隊章が設定された[1]

2020年(令和2年)3月26日隷下にV-22オスプレイを運用する輸送航空隊を新編した。

災害派遣においては「自衛隊の災害派遣に関する達」内の「陸上自衛隊災害派遣実施要領」により、第1ヘリコプター団が所在する駐屯地の駐屯地司令の職にある部隊等の長[2]は、陸上総隊司令官の承認を受け、第1ヘリコプター団の所要の部隊をその所在する警備区域[3]以外の警備区域に派遣することができる[4]、とされる。

木更津駐屯地には、AH-1Sコブラ対戦車ヘリコプターを主力とする、東部方面航空隊隷下の第4対戦車ヘリコプター隊も駐屯している。

丘珠駐屯地では、夏季の間だけ第1ヘリコプター団のCH-47J 2機が配置される北方運用配置が行われる。これは、同駐屯地にCH-47Jを収容できる格納庫がなく、雪の中に機体を置くのを避けるためである。

第1空挺団同様、「ヘリコプター団」は本団のみで、「第2――」「第3――」は存在しない。

2020年3月26日には、ティルトローター機のV-22オスプレイ等を運用し、水陸機動団を支援することを目的とした輸送航空隊が新編された[5]。木更津駐屯地へは暫定配備となり、今後、佐賀空港への本配備を予定しているほか、隷下1個CH-47J輸送ヘリコプター飛行隊が高遊原分屯地に駐屯する[6]

沿革 編集

第1ヘリコプター隊

第1ヘリコプター団

  • 1968年(昭和43年)
    • 3月1日:第1ヘリコプター隊を基幹として第1ヘリコプター団を新編。
    1. 第1ヘリコプター隊を2個飛行隊編成に改編。
    2. 隷下に第2ヘリコプター隊(やはり2個飛行隊編成)を新編。
    • 3月22日:第1ヘリコプター隊が木更津駐屯地に移駐。
    • 3月25日:第1ヘリコプター団本部が木更津駐屯地に移駐し、第1ヘリコプター団長が駐屯地司令に職務指定[7]
    • 6月1日:第2ヘリコプター隊が木更津駐屯地に移駐。
  • 1986年(昭和61年)12月19日:特別輸送飛行隊を木更津駐屯地に新編。
  • 2006年(平成18年)3月27日:本部管理中隊飛行班を連絡偵察飛行隊に改編。
  • 2007年(平成19年)3月28日:防衛大臣直轄から中央即応集団隷下に隷属替え。
  • 2008年(平成20年)
    • 3月25日~26日:部隊改編。
    1. 第1ヘリコプター隊及び第2ヘリコプター隊を廃止、代わって第1輸送ヘリコプター群(第103~第106飛行隊の4個飛行隊基幹)を木更津駐屯地に新編。
    2. 第102飛行隊を木更津駐屯地に新編。
    3. 特別輸送飛行隊を廃止し、特別輸送ヘリコプター隊を木更津駐屯地に新編。
  • 2015年(平成27年)7月13日:陸上自衛隊航空学校宇都宮校からLR-2操縦課程が移管[8]
  • 2016年(平成28年)2月15日:連絡偵察飛行隊のLR-1がラストフライト。陸上自衛隊でのLR-1運用終了[9]
  • 2018年(平成30年)3月27日:陸上総隊発足に伴い、中央即応集団隷下から陸上総隊隷下に隷属替え[10]。同時に制服左肩の部隊章(師団等標識)を団独自のものに変更[1]
  • 2020年(令和02年)
    1. 輸送航空隊本部、輸送航空隊本部中隊、第107飛行隊(V-22オスプレイ装備)、第108飛行隊(V-22オスプレイ装備)、第109飛行隊(CH-47を装備)および輸送航空野整備隊を新編[14]
    2. 第109飛行隊および隊機能の一部を高遊原分屯地に配置。
    • 7月:V-22オスプレイの受領。

部隊編成 編集

特記なければ木更津駐屯地に駐屯

  • 第1ヘリコプター団本部
  • 本部管理中隊「ヘリ団-本」
  • 第1輸送ヘリコプター群
    • 第1輸送ヘリコプター群本部
    • 第1輸送ヘリコプター群本部付隊
    • 第103飛行隊「103飛」:CH-47J/JA
    • 第104飛行隊「104飛」:CH-47J/JA
    • 第105飛行隊「105飛」:CH-47J/JA
    • 第106飛行隊「106飛」:CH-47J/JA
  • 輸送航空隊[5][6]
    • 輸送航空隊本部
    • 輸送航空隊本部中隊
    • 第107飛行隊「107飛」:V-22
    • 第108飛行隊「108飛」:V-22
    • 第109飛行隊「109飛」(高遊原分屯地):CH-47J
    • 輸送航空野整備隊
  • 特別輸送ヘリコプター隊「特ヘリ」:EC-225LPヘリコプター
  • 連絡偵察飛行隊「連偵飛」:LR-2
  • 第102飛行隊「102飛」:UH-60JA
  • 第1ヘリコプター野整備隊(航空補給整備部隊であり、団所属航空部隊に対する航空器材等の補給及び高度な整備を行う。また野外整備のほか、海上自衛隊の艦艇上での整備も行った実績もある。)

主要幹部 編集

官職名階級氏名補職発令日前職
第1ヘリコプター団長
兼 木更津駐屯地司令
陸将補廣瀬敏彦2022年12月23日北部方面総監部幕僚副長
副団長1等陸佐桑畑英紀2024年03月18日自衛隊山梨地方協力本部
高級幕僚2等陸佐齋藤健2023年12月01日第2対戦車ヘリコプター隊長
歴代の第1ヘリコプター隊長
(1等陸佐)
氏名在職期間出身校・期前職後職
01芝田武治1959年03月20日 - 1962年07月31日
※1959年08月01日 1等陸佐昇任
陸士45期陸上自衛隊航空学校中部方面航空隊
兼 八尾分とん地司令
02田中堯1962年08月01日 - 1963年11月15日陸士46期・
陸大59期
中部方面航空隊長
兼 八尾分とん地司令
陸上自衛隊航空学校
兼 明野駐とん地司令
-
内田精三
(2等陸佐)
1963年11月16日 - 1964年03月15日
※第1ヘリコプター隊長代理
陸士54期本務:第1ヘリコプター隊副隊長
03馬場義弘1964年03月16日 - 1967年07月16日
※1966年01月01日 1等陸佐昇任
陸士53期陸上自衛隊航空学校霞ヶ浦分校
教育課長
第1ヘリコプター隊付
岩本直一
(陸将補)
1967年07月17日 - 1968年02月29日京都帝国大学陸上幕僚監部総務課長第1ヘリコプター団長
歴代の第1ヘリコプター団長
(陸将補)
氏名在職期間出身校・期前職後職
01岩本直一1968年03月01日 - 1970年01月09日京都帝国大学第1ヘリコプター隊長第10師団司令部付
→1970年3月16日 退職(陸将昇任)
02大塚正七郎1970年01月10日 - 1972年03月15日陸士52期陸上自衛隊航空学校副校長陸上幕僚監部
→1972年7月1日 退職
03村岡英夫1972年03月16日 - 1974年03月15日陸士52期陸上幕僚監部航空課長陸上幕僚監部付
→1974年4月1日 退職
04中村規之1974年03月16日 - 1976年06月30日陸士56期陸上自衛隊航空学校副校長陸上自衛隊航空学校長
明野駐とん地司令
05能勢忠典1976年07月01日 - 1978年01月31日陸士57期陸上幕僚監部航空課長陸上自衛隊航空学校長
兼 明野駐とん地司令
06加藤誠1978年02月01日 - 1979年01月09日陸航士58期陸上幕僚監部航空課長
→1978年1月30日
第1ヘリコプター団付
陸上幕僚監部付
→1979年3月16日 退職
07藤本松彦1979年01月10日 - 1980年06月30日陸航士59期陸上自衛隊航空学校副校長第6師団
08中山公夫1980年07月01日 - 1982年06月30日陸士60期西部方面航空隊
高遊原分とん地司令
陸上自衛隊航空学校長
兼 明野駐屯地司令
09田村祐茂1982年07月01日 - 1984年03月15日法政大学
昭和28年卒
北部方面航空隊
丘珠駐屯地司令
陸上自衛隊航空学校長
兼 明野駐屯地司令
10安藤克彦1984年03月16日 - 1986年03月16日中央大学
昭和31年卒
北部方面航空隊長
兼 丘珠駐屯地司令
陸上自衛隊航空学校長
兼 明野駐屯地司令
11磯江順巌1986年03月17日 - 1988年03月16日高知大学
昭和30年卒
北部方面航空隊長
兼 丘珠駐屯地司令
退職
12菱田楢樹1988年03月16日 - 1990年03月15日防大1期北部方面航空隊長
兼 丘珠駐屯地司令
陸上幕僚監部付
→1990年4月1日 退職
13白川靖夫1990年03月16日 - 1992年03月15日防大6期陸上自衛隊航空学校副校長陸上自衛隊航空学校長
兼 明野駐屯地司令
14北郷誠1992年03月16日 - 1994年03月22日防大6期陸上自衛隊航空学校副校長陸上自衛隊航空学校長
兼 明野駐屯地司令
15佐藤文彦1994年03月23日 - 1996年06月30日防大8期中部方面航空隊
八尾駐屯地司令
第8師団副師団長
北熊本駐屯地司令
16吉田顯彦1996年07月01日 - 1997年06月30日防大10期陸上自衛隊航空学校副校長陸上自衛隊航空学校長
兼 明野駐屯地司令
17冨田稔1997年07月01日 - 1999年07月08日防大12期陸上自衛隊航空学校副校長陸上自衛隊航空学校長
兼 明野駐屯地司令
18山根峯治1999年07月09日 - 2001年06月28日防大14期陸上自衛隊航空学校副校長陸上自衛隊航空学校長
兼 明野駐屯地司令
19角裕行2001年06月29日 - 2003年03月26日防大16期陸上自衛隊航空学校副校長陸上自衛隊航空学校長
兼 明野駐屯地司令
20富本啓一2003年03月27日 - 2005年02月27日防大16期自衛隊福岡地方連絡部陸上自衛隊航空学校長
兼 明野駐屯地司令
21鎌田正広2005年02月28日 - 2006年08月03日防大21期陸上幕僚監部人事部募集課長陸上自衛隊航空学校長
兼 明野駐屯地司令
22福盛裕一2006年08月04日 - 2009年07月20日防大22期陸上自衛隊航空学校副校長陸上自衛隊航空学校長
兼 明野駐屯地司令
23金丸章彦2009年07月21日 - 2011年04月26日防大27期陸上幕僚監部人事部厚生課長陸上自衛隊航空学校長
兼 明野駐屯地司令
24清田安志2011年04月27日 - 2012年07月25日防大29期陸上幕僚監部監理部総務課
庶務室長
陸上幕僚監部監察官
25田中重伸2012年07月26日 - 2014年08月04日防大30期統合幕僚監部防衛計画部計画課長東北方面総監部幕僚副長
26田尻祐介2014年08月05日 - 2016年12月19日防大32期統合幕僚監部防衛計画部計画課長陸上自衛隊航空学校長
兼 明野駐屯地司令
27服部正2016年12月20日 - 2018年03月26日防大29期陸上自衛隊航空学校副校長陸上自衛隊航空学校長
兼 明野駐屯地司令
28酒井秀典2018年03月27日 - 2020年3月17日防大33期陸上自衛隊航空学校副校長第11旅団
29更谷光二2020年03月18日 - 2022年12月22日防大33期東北方面総監部幕僚副長陸上自衛隊航空学校長
兼 明野駐屯地司令
30廣瀬敏彦2022年12月23日 -防大36期北部方面総監部幕僚副長

主要装備品 編集

廃止(改編)部隊 編集

  • 第1ヘリコプター隊:1968年(昭和43年)2月29日 廃止。第1ヘリコプター団に改編。
  • 本部管理中隊飛行班:2006年(平成18年)3月26日 廃止。連絡偵察飛行隊に改編。
  • 第1ヘリコプター隊及び第2ヘリコプター隊(各2個飛行隊):2008年(平成20年)3月25日 廃止。第1輸送ヘリコプター群(4個飛行隊)に改編。
  • 特別輸送飛行隊:2008年(平成20年)3月25日 廃止。特別輸送ヘリコプター隊に改編。

脚注 編集

  1. ^ a b 陸上幕僚監部 (2018年7月13日). “陸上自衛官及び陸上自衛隊の自衛官候補生の部隊章に関する達(達第 24-1-13 号)” (PDF). 防衛省. 2019年1月15日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年1月15日閲覧。
  2. ^ 2020年現在、第1ヘリコプター団長が木更津駐屯地司令を兼務している。
  3. ^ 2019年3月現在、第1ヘリコプター団の警備区域は指定されていない。(木更津駐屯地のある木更津市は高射学校が担任。)
  4. ^ 自衛隊の災害派遣に関する達 別紙1 陸上自衛隊災害派遣実施要領 - 統合幕僚監部(平成30年3月27日 自衛隊統合達第11号)
  5. ^ a b c 防衛省発令(1佐職人事)2020年3月26日付”. 防衛省. 2020年3月26日閲覧。
  6. ^ a b c 防衛省 (2020年3月18日). “輸送航空隊の新編について”. 木更津市. 2020年3月25日閲覧。
  7. ^ 『官報』本紙 第12382号(昭和43年3月27日)
  8. ^ イカロス出版 Jwing No.207 2015年11月号 92頁 「行くぞ!NEWSマン 自衛隊・国内NEWS」
  9. ^ イカロス出版 Jwing No.213 2016年5月号 16頁-17頁 「陸上自衛隊木更津駐屯地 連絡偵察機LR-1用途廃止行事」数馬康裕
  10. ^ 自衛隊法施行令等の一部を改正する政令
  11. ^ 第1ヘリコプター団/木更津駐屯地 [@1st_helb] (2020年3月26日). "3月26日、#第1ヘリコプター団 は新たに #ティルトローター機 #V22 を装備する、#輸送航空隊 が新編されました。". X(旧Twitter)より2020年3月26日閲覧
  12. ^ “陸自・木更津駐屯地、オスプレイ部隊編成”. 千葉日報. (2020年3月26日). https://www.chibanippo.co.jp/news/national/677819 2020年3月26日閲覧。 
  13. ^ 菊池雅之 (2020年4月10日). “オスプレイ部隊に隊旗授与 トータル17機、島嶼防衛体制確立へ”. zakzak by 夕刊フジ. オリジナルの2020年4月22日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20200422140951/https://www.zakzak.co.jp/soc/news/200410/pol2004100002-n1.html 2022年4月26日閲覧。 
  14. ^ V-22オスプレイ装備の輸送航空隊が新編、隊旗授与”. 週刊WING. 2023年12月1日閲覧。

出典 編集

関連項目 編集

外部リンク 編集