現代仁侠伝』(げんだいにんきょうでん)は1997年11月8日に公開された日本映画。主演:奥田瑛二、監督:降旗康男。製作:東映京都撮影所[1]、配給:東映

現代仁侠伝
監督降旗康男
脚本塙五郎
出演者奥田瑛二
高橋恵子
西城秀樹
とよた真帆
石橋蓮司
宅麻伸
音楽佐藤勝
撮影水巻祐介
編集荒木健夫
製作会社東映京都撮影所 
配給日本の旗 東映
公開日本の旗 1997年11月8日
上映時間113分
製作国日本の旗 日本
言語日本語
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キャスト 編集

スタッフ 編集

製作 編集

1994年5月14日公開の『首領を殺った男』の興行不振を持って、東映ヤクザ映画は時世に合わないと基本的に製作中止を表明したが[2][3][4][5]、ヤクザ映画以外もその後不振続きの一方で[5][3]レンタルビデオ店でいぜんアウトローものに強いニーズがあり[5]、ビデオ、テレビの2次、3次使用を含めればヤクザ映画は、いぜん利益を生む確率が高く[5]、当面ギャンブルしている余裕もないため[5]、「原点に戻ろう」と、本作からヤクザ映画を復活させた[3][5]。「レンタルビデオではこの分野が若い世代の関心を集めている」と分析し[3]、三年ぶりの「にんきょう」を強調し[3]、新しい観客層に向けた新任侠映画が試行された[3]

キャスティング 編集

島田紳助片岡鶴太郎ともゲスト出演のような形では出たくないという申し出があり[6]、もともと脚本にあった重要な役をキャスティングした[6]

興行 編集

当初は1997年6月公開を予定していた[3][7]。ところが1997年5月10日から東映で配給した『失楽園』が、4~5年ないぐらいの思いがけないメガヒットで[7]、5週間興行の予定を9週間のロングラン上映に切り換えたため[8]、『現代仁侠伝』は11月まで公開がずれ込んだ[3][7][9]

評価 編集

  • 田中千世子は「男が美しい。久しぶりにそう思った。顔のキレイな男の子たちはたくさんいるが、男としてまるごと美しい男は近ごろ滅多にいない。やくざ映画の男たちは伝統的に肌をよくみせるが、男色美学が絡んでいるからと思うが、これは中世に栄え、室町将軍も愛した日本の伝統文化だ。奥田瑛二の色気は男色美学の系譜を誇らしげに引き継ぐものといえる」などと評している[10]
  • 読売新聞は「作品の完成度は低くない。厚みを感じさせる映像と構成、手堅い演出。看板路線の復活だけに、実績のある最高のスタッフで東映らしい映画を作ったと思う。だがそれは新たな挑戦とは言えず、新味に欠けたものになった。豪華な食材で代わり映えしない料理を出したようなものだ。かつての栄光を支えた人たちは、伝統に頼るだけで客は戻る、と本気で信じているらしい。これでは新しい客は獲得できない」などと評した[3]
  • 山根貞男は「客が数人しかいず、中身がそれにふさわしい。これも『北京原人 Who are you?』と同様、企画の段階でボツにすべきシロモノであろう。全編、何もかも唖然とするほど容易で、二十数年前、同じ撮影所から"仁義なき戦いシリーズ"が生み出されたことなど、まるで空洞化してしまっている」などとこき下ろした[1]
  • 大高宏雄は「堂々と邦画番線に出てきた『現代仁侠伝』は、そのアナクロ企画がアナクロに徹し切れず、ただ単に物語の交通整理を小器用に行っただけの情けないヤクザ映画である。この作品は企画に上がり、製作が決まった時点でヒットの可能性が断たれている。どのように見たって観客不在のアナクロ企画であり、それならいっそ凶々しい殺気が匂い立つ過激なバイオレンスものに徹してしまえばよかったのだ。そのアナクロ性を補うのがビデオ市場なのだろうが、そこでも重要になってくるのが俳優たちの力量であろう。しかし『恋極道』での痛々しい躍動感が今も生々しい主演の奥田瑛二は、カタギとヤクザの二律背反性を演技の切実さとして提示できず、ヒロインとよた真帆はその清楚さが愛する男と兄の狭間で何ら動揺も見せていかない。唯一、敵役の石橋蓮司が問答無用の凄味を発散させて映画に凶々しさを付与するが、全体を律するまではとてもいかない」などと論じている[9]

同時上映 編集

脚注 編集

  1. ^ a b 山根貞男「日本映画時評122 映画の新しい波 観客動員の低迷と興行界の新しい動き」『キネマ旬報』1998年2月下旬号 254-255頁、キネマ旬報社 
  2. ^ “『会社に固執』『離れて自分発見』 対照的サラリーマン映画、公開中”. 朝日新聞夕刊 (朝日新聞社): p. 7. (1994年11月4日) 東直子 (1994年9月28日). “東映、『首領を殺った男』―発送・脚本、新味なし (なぜ売れない新誤算の研究)”. 日本経済新聞 (日本経済新聞社): p. 29 
  3. ^ a b c d e f g h i “不倫の次は義理と人情やくざ映画『現代仁侠伝』と『なにわ忠臣蔵』”. 読売新聞大阪夕刊 (読売新聞大阪本社): p. 1. (1997年11月17日) 福永聖二 (1997年11月27日). “〈映画〉 『現代仁侠伝』=東映 手堅い演出、新味に欠ける”. 読売新聞夕刊 (読売新聞社): p. 1 
  4. ^ 大高宏雄「日本映画 観客動員の低迷と興行界の新しい動き」『キネマ旬報増刊 ビデオイヤーブック1995』1995年4月28日発行 388頁、キネマ旬報社。 「映画トピックジャーナル」『キネマ旬報』1995年1月上旬号 170頁、キネマ旬報社。 「映画トピックジャーナル」『キネマ旬報』1995年9月下旬号 159頁、キネマ旬報社。 北川れい子「やくざ映画を見て育ってきた私だけれどもうこの路線の復活はないだろう 封切時期が重なったやくざ映画を語る」『映画撮影』1994年6月号 No.212、日本映画撮影監督協会、22-25頁。 橋口一成福間健二・細野辰・荒井晴彦「ヤクザ映画に延命の可能性はあるか『首領を殺った男』『大阪極道戦争しのいだれ』」『映画芸術』1994年夏号 No.372、プロダクション映芸、61頁。 山根貞男「東映やくざ映画の最後か 『首領を殺った男』の現場へ」『映画の貌』みすず書房、1996年、194-201頁。ISBN 4-622-04412-9 山平重樹『高倉健と任侠映画』徳間書店、2015年、438-446頁。ISBN 978-4-19-907028-0 
  5. ^ a b c d e f 「文化通信情報」『AVジャーナル』1997年5月、文化通信社、5-6頁。 
  6. ^ a b 野村正昭「特集 現代仁侠伝 降旗康男インタビュー 任侠という観念の中でのたうち回る男の潔さ」『キネマ旬報』1997年11月下旬号 88-89頁、キネマ旬報社。 
  7. ^ a b c 「文化通信情報」『AVジャーナル』1997年5月、文化通信社、6頁。 
  8. ^ 「RANDOMACCEES(2)」『AVジャーナル』1997年11月、文化通信社、53頁。 
  9. ^ a b 大高宏雄「映画戦線異状なし 日本映画番外地―俳優篇」『キネマ旬報』1997年12月下旬号 160-161頁、キネマ旬報社。 
  10. ^ 田中千世子「特集 現代仁侠伝 孤独へと追いやられる男の美しさとエロティシズム」『キネマ旬報』1997年11月下旬号 86-87頁、キネマ旬報社。 

外部リンク 編集