海上幕僚長(かいじょうばくりょうちょう、: Chief of Staff, Maritime Self Defense Force)は、海上幕僚監部の長。海上自衛官の最高位である。旧軍、他国の海軍参謀総長軍令部総長)に相当する。

日本の旗 日本
海上幕僚長
Chief of Staff, Maritime Self Defense Force
海上幕僚長(甲)階級章
海上幕僚長旗
現職者
海将酒井良(第35代)

就任日 2022年令和4年)3月30日
組織行政府
防衛省
種類自衛官
所属機関海上幕僚監部
任命防衛大臣
初代就任山崎小五郎(海上警備隊総監)
創設1952年(昭和27年)4月26日
ウェブサイト防衛省・自衛隊

概要 編集

海上幕僚長 (丙)階級章

大日本帝国海軍軍令部総長アメリカ海軍海軍作戦部長イギリス海軍第一海軍卿、またはフランス海軍などの海軍参謀総長に相当し、防衛大臣の指揮監督の下、海上自衛隊の任務および隊員の服務を監督し、それらに関する最高の専門的助言者として大臣を補佐する。海上自衛隊の人事、教育訓練、防衛力整備、後方補給などを司るフォースプロバイダー(練度管理責任者)として平時の部隊を管理し、有事の際にはフォースユーザー(事態対処責任者)の統合幕僚長に海上自衛隊の部隊を提供する役目を担っている[1]防衛省に設置される特別の機関の一つである防衛会議の構成員であり、次官級審議官と同等の政令指定職7号[注 1]の役職である。

階級は海将であるが、通常の海将が海軍中将に相当するのに対し、海上幕僚長は統合幕僚長と同じ特別の階級章が定められているため、海軍大将相当である。特別の階級章とは、通常の海将の階級章は肩章が金地に桜星が3つ、冬服上衣の袖章が金の太線1本の上に金の中線2本に桜星1つであるのに対し、統合幕僚長および海上幕僚長たる海将は肩章が金地に桜星が4つ、冬服上衣の袖章が金の太線1本の上に金の中線3本に桜星1つとなっている[注 2]。自衛隊において大将相当官は統合幕僚長・陸上幕僚長・海上幕僚長・航空幕僚長の4人だけである。

定年 編集

海将たる海上自衛官は60歳を以て定年退官となるが、海上幕僚長たる海将の定年は62歳となっている。

海将の定年を超えて海上幕僚長の職位にある海上自衛官が海上幕僚長の職務を辞任したり、解任された場合はその時点で定年に達したものと見做され自動的に定年退官となる。

歴代の海上幕僚長 編集

歴代の海上幕僚長(前身の役職を含む)
氏名写真在職期間出身出身校・期前職後職
海上警備隊総監
1山崎小五郎 1952.4.26 - 1952.7.31福岡東京帝国大学
昭和6年卒
逓信省
海上保安庁次長第二幕僚長
第二幕僚長
1山崎小五郎 1952.8.1 - 1954.6.30同上同上海上警備隊総監海上幕僚長
海上幕僚長
01山崎小五郎 1954.7.1 - 1954.8.2同上同上第二幕僚長[注 3]運輸事務次官
02長澤浩 1954.8.3 - 1958.8.14福島海兵49期・
海大30期
海上幕僚副長退職
03庵原貢 1958.8.15 - 1961.8.14兵庫海兵52期・
海大35期
自衛艦隊司令退職
04中山定義 1961.8.15 - 1963.6.30島根海兵54期・
海大36期
自衛艦隊司令官退職
05杉江一三 1963.7.1 - 1964.8.13愛知海兵56期・
海大37期
自衛艦隊司令官第2代統合幕僚会議議長
06西村友晴 1964.8.14 - 1966.4.29福岡海兵59期海上幕僚副長退職
07板谷隆一 1966.4.30 - 1969.6.30佐賀海兵60期横須賀地方総監第5代統合幕僚会議議長
08内田一臣 1969.7.1 - 1972.3.15岡山海兵63期護衛艦隊司令官退職
09石田捨雄 1972.3.16 - 1973.11.30愛知海兵64期海上幕僚副長退職
10鮫島博一 1973.12.1 - 1976.3.15鹿児島海兵66期航空集団司令官第9代統合幕僚会議議長
11中村悌次 1976.3.16 - 1977.8.31京都海兵67期自衛艦隊司令官退職
12大賀良平 1977.9.1 - 1980.2.14長崎海兵71期大湊地方総監退職
13矢田次夫 1980.2.15 - 1981.2.15鳥取海兵72期自衛艦隊司令官第13代統合幕僚会議議長
14前田優 1981.2.16 - 1983.4.25兵庫海兵73期自衛艦隊司令官退職
15吉田學 1983.4.26 - 1985.7.31岐阜海兵75期海上幕僚副長退職
16長田博 1985.8.1 - 1987.7.6神奈川海兵76期自衛艦隊司令官退職
17東山収一郎[注 4] 1987.7.7 - 1989.8.30東京東京水産大
4期幹候
横須賀地方総監退職
18佐久間一 1989.8.31 - 1991.6.30神奈川防大1期佐世保地方総監第19代統合幕僚会議議長
19岡部文雄 1991.7.1 - 1993.6.30福岡防大2期佐世保地方総監退職
20林崎千明 1993.7.1 - 1994.12.14岩手防大4期佐世保地方総監退職
21福地建夫 1994.12.15 - 1996.3.24東京防大5期横須賀地方総監退職
22夏川和也 1996.3.25 - 1997.10.12山口防大6期佐世保地方総監第22代統合幕僚会議議長
23山本安正 1997.10.13 - 1999.3.30東京防大7期横須賀地方総監退職
24藤田幸生 1999.3.31 - 2001.3.26高知防大9期海上幕僚副長退職
25石川亨 2001.3.27 - 2003.1.27埼玉防大11期佐世保地方総監第25代統合幕僚会議議長
26古庄幸一 2003.1.28 - 2005.1.11大分防大13期海上幕僚副長退職
27齋藤隆 2005.1.12 - 2006.8.3神奈川防大14期横須賀地方総監第2代統合幕僚長
28吉川榮治[注 5] 2006.8.4 - 2008.3.23大阪防大15期横須賀地方総監退職
29赤星慶治 2008.3.24 - 2010.7.25大分防大17期佐世保地方総監退職
30杉本正彦[注 6] 2010.7.26 - 2012.7.25富山防大18期自衛艦隊司令官退職
31河野克俊 2012.7.26 - 2014.10.13神奈川[注 7]防大21期自衛艦隊司令官第5代統合幕僚長
32武居智久 2014.10.14 - 2016.12.21長野防大23期横須賀地方総監退職
33村川豊 2016.12.22 - 2019.3.31神奈川防大25期海上幕僚副長退職
34山村浩 2019.4.1 - 2022.3.29山口防大28期海上幕僚副長退職
35酒井良 2022.3.30 -滋賀防大31期横須賀地方総監

脚注 編集

注釈 編集

  1. ^ 自衛官#自衛官と防衛省内局及び他省庁の官僚との比較を参照
  2. ^ 1962年(昭和37年)12月1日、自衛隊法施行規則の一部改正により現在の階級章が制定された。それ以前は他の海将と同じ階級章であり、左胸に幕僚長であることを示す幕僚長章を着けていた。
  3. ^ 任命辞令なし(自衛隊法附則第3項第5項による在任)。
  4. ^ 海軍兵学校出身者が定年退官を迎えた一方で、海軍兵学校出身者と防衛大学校出身者との間を埋める存在として、一般大学出身者と海上保安大学校出身者が将官ポストに就いたが、海保大出身の海上自衛官は、そのまま海上保安庁に残留した者との人事上のバランスをとるため、海幕長に就任することはなかった(当時、海保大出身である生え抜きの海上保安官が就任できた最高位のポストは警備救難監(現・海上保安監)であり、それと同格の海自におけるポストは、自衛艦隊司令官と横須賀地方総監(いずれも指定職第5号))。
  5. ^ イージス艦情報漏洩しらね火災、イージス艦衝突事故による事実上の更迭。
  6. ^ たちかぜ自衛官いじめ自殺事件の情報隠蔽問題で注意処分を受け依願退職
  7. ^ 北海道函館市生まれ。

出典 編集

  1. ^ 統合運用について 防衛省 2010年3月

関連項目 編集

外部リンク 編集