恋のメキシカン・ロック

恋のメキシカン・ロック」(こいのメキシカンロック)は、1967年5月1日日本ビクター(現:JVCケンウッド)の音楽レコード事業部ビクターレコード(現:JVCケンウッド・ビクターエンタテインメント)より発売された橋幸夫の89枚目のシングルである(SV-558)[1]。後に橋主演の松竹映画「恋のメキシカンロック 恋と夢と冒険」が制作され、その主題歌となった。

恋のメキシカン・ロック
橋幸夫シングル
初出アルバム『恋のメキシカン・ロック/橋幸夫ベストヒット14
(LP・SJV-290)』
B面若い渚
リリース
ジャンル歌謡曲リズム歌謡
時間
レーベルVICTOR/日本ビクター
(SV-558)
作詞・作曲佐伯孝夫(作詞)
吉田正(作・編曲)
橋幸夫 シングル 年表
夜は恋する
(1967年3月15日)
恋のメキシカン・ロック
(1967年)
東西南北音頭
(1967年6月1日)
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概要

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  • 1960年に股旅「潮来笠」でデビューした橋幸夫は、1964年には作詞佐伯孝夫、作曲吉田正のコンビによる『恋をするなら』で邦楽に初めてエレキサウンドを導入。デビュー当時の股旅歌謡や時代歌謡、その後の青春歌謡に続いて、新たな分野としてリズム歌謡に進出した。その後この分野では『ゼッケンNO.1スタートだ』、『チェッ・チェッ・チェッ(涙にさよならを)』、『あの娘と僕(スイム・スイム・スイム)』の一連のリズム歌謡4曲で第7回日本レコード大賞企画賞を獲得している[2]。その翌年には同じ佐伯、吉田のコンビで、アメリアッチリズムによる「恋と涙の太陽」を発表し、本作はこのコンビによるリズム歌謡6作目となる。
  • 1968年時点での累計売上は85万枚[3]
  • 橋のリズム歌謡はこのコンビ以外にも「恋のインターチェンジ」(作詞:邱永漢、作曲:藤家虹二)や「僕等はみんな恋人さ」(作詞:岩谷時子、作曲:いずみたく)、利根一郎による楽曲があるが、狭義では佐伯、吉田のコンビの作品を指すのが一般的である。
  • 橋は本楽曲について「次の年のメキシコオリンピックでメキシコがクローズアップされて」いたことが背景にあったとし「細かいリズムを刻むパーカッションとブラスセクションの絡みが実にいい」と評している[4]
  • 本楽曲が橋のリズム歌謡の最終作となったが、これについては、いち早くエレキサウンドを導入した吉田正は「(その後)日本でもグループ・サウンズが流行し、....(若者)が自分達のオリジナル作品を携えて登場してきたのを見て...(リズム歌謡を)やめた」[5]としている。橋自身は「(リズム歌謡を)つづけようと思えば続けられたかもしれないが、あえてやめた。やはり、ちょっとブームが違ってきた」[6]と回顧し、逆に橋自身がグループ・サウンズを取り入れ「思い出のカテリーナ」(作詞:橋本淳、作曲:すぎやまこういち)をリリースするにいたる。
  • 大滝詠一は、厚家羅漢(あっけらかん)のペンネームで2005年に橋のリズム歌謡に特化したアルバム『SWIM! SWIM! SWIM!』をプロデュースして、本楽曲について「まさにリズム歌謡の最後を飾るにふさわしい曲」と評している[7]、。
  • ジャケットには「ニューステップ、メキシカンロックを踊ろう」と題して、日本タップダンス界の祖といわれる中川三郎が、ステップを図解で解説している[8]
  • 本楽曲は、橋の代表作の一として、多くのアルバムに収録されるとともに、ステージやTV番組でも頻繁に歌唱され、清水アキラの浮き輪を持ったモノマネとあいまって、橋を知らない世代でも広く知られている。
  • 2005年7月には橋のデビュー45周年を記念してデビュー曲「潮来笠」の舞台になった茨城県潮来市の前川あやめ園に潮来の伊太郎をモチーフとしたブロンズ像と歌碑が建てられ、合わせてジュークボックスも設置され[9]、本楽曲も「潮来笠」や「いつでも夢を」とともに聞くことが出来る。
  • また、同年11月には大甕駅2番線の発車メロディとして採用されている。
  • c/wの「若い渚」もA面と同じく佐伯孝夫、吉田正の制作となっている。

収録曲

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  1. 恋のメキシカン・ロック
    作詞:佐伯孝夫、作・編曲:吉田正
  2. 若い渚
    作詞:佐伯孝夫、作・編曲:吉田正

収録アルバム

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橋のベストアルバムの多くに本楽曲は含まれているが、代表的なものに

  • 『 SWIM! SWIM! SWIM!』(2005.07.21)
  • 『橋幸夫が選んだ橋幸夫ベスト40曲』(2000.10.04)
  • 『<TWIN BEST>』(1998.11.06)
  • 『橋幸夫ベスト~踊り唄~』(2008.11.19)

などがある。

カバー

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  • 三山ひろし(アルバム『歌い継ぐ!昭和の流行歌 VIII』収録)
  • スカポンタス(シングル『恋のメキシカン・ロック feat.橋幸夫』収録)
  • 橋幸夫(「RAP 恋のメキシカン・ロック」配信限定)

映画「恋のメキシカンロック 恋と夢と冒険」

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恋のメキシカンロック
恋と夢と冒険
Love's Great Adventure
監督桜井秀雄
脚本下飯坂菊馬
製作沢村国男
出演者橋幸夫
由美かおる
音楽鈴木淳
主題歌『恋のメキシカン・ロック』(橋幸夫)
撮影小杉正雄
編集杉原よ志
製作会社松竹
公開 1967年8月19日
上映時間84分
製作国 日本
言語 日本語
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  • 楽曲発表から3ヶ月後の8月19日には、松竹映画「恋のメキシカンロック 恋と夢と冒険」が公開された[10]。カラー・90分。脚本は下飯坂菊馬、監督は橋の関連の映画を複数手がけている桜井秀雄である。
  • 物語は、メキシコではなくグァム島で、スポーツは万能、歌は玄人はだしという伸夫(橋幸夫)と知りあった混血娘マリコ(由美かおる)の恋と冒険の物語。芦ノ湖でマリコが頬を蜂に刺され、伸夫が血を吸うため接吻したことから、物語は急展開する。
スタッフ
  • 製作:沢村国男
  • 脚本:下飯坂菊馬
  • 監督:桜井秀雄
  • 音楽:鈴木淳
  • 撮影:小杉正雄
  • 美術:梅田千代夫
  • 録音:鈴木正男
  • 照明:中川孝一
  • 編集:杉原よ志
  • スチール:梶本一三
出演者
同時上映
  • 『激流』
映像ソフト

1998年3月25日、松竹ホームビデオから本作のビデオソフト(VHS)が発売された。

出典

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  1. ^ 「シングルレコード・ディスコグラフィティ」橋幸夫・小野善太郎共著『橋幸夫歌謡魂』ISBN 4-948735-16-7 ワイズ出版(東京)1993/6 168-209頁参照
  2. ^ 金子勇『吉田正 誰よりも君を愛す』ISBN 978-4-623-05623-1 ミネルヴァ書房(京都) 2010/1 337頁
  3. ^ 堀内敬三『音楽明治百年史』音楽之友社、1968年、349-350頁。NDLJP:2518791/191
  4. ^ 橋幸夫・小野善太郎共著『橋幸夫歌謡魂』ISBN 4-948735-16-7 ワイズ出版(東京)1993/6 66頁
  5. ^ 吉田正『生命ある限り-吉田正・私の履歴書』日立市民文化事業団(茨城)2001/3 139頁
  6. ^ 橋幸夫・小野善太郎共著 前掲 67頁
  7. ^ 『SWIM! SWIM! SWIM!』ビクターエンタテインメント「ライナーノーツ」 7頁参照
  8. ^ 付属ジャケット裏面資料より
  9. ^ 『フォトいばらき:茨城県をもっと知りたい県民グラフ誌』2005年秋季号通巻561号 茨城県 2005年9月30日 4頁その他参照
  10. ^ 橋幸夫・小野善太郎共著 前掲 291頁

外部リンク

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