大都市自治体

トルコの大都市圏

トルコには81の県があり、そのうち30が大都市自治体[1]トルコ語: büyükşehir belediyeleri大都市広域市[2]大都市広域自治体[3]とも)に指定されている。大都市自治体の下には区自治体が置かれ(トルコ語: ilçe belediyesi)、一般の県の市自治体(トルコ語: ilçe belediyesi)と町自治体(トルコ語: belde belediyesi)とは同格である。大都市自治体の周辺部には准区自治体(トルコ語: altı kademe belediyesi)も設置できるが[1]、現在は県全体が大都市自治体に指定されているため設置されていない。

大都市自治体と指定年の地図

県との違いは大都市自治体の首長が公選で選出されるのに対し、県知事内務省から任命される官僚が務めている[1][3]。また、トルコで県都の市名は県名と必ず一致するが、大都市自治体に指定されている県の県庁所在地の区自治体は別の名前に変更することが可能である。

歴史 編集

最初の大都市自治体は1984年に、「大都市自治体行政に関する法律と同等の効力を持つ政令を改正し承認する法律」(トルコ語: Büyuk Şehir Belediyelerinin Yönetimi Hakkında Kanun Hükmünde Kararnamenin Diğiştirelek Kabulü Hakkında Kanun)により設立された[1]。当時指定されたのはイスタンブールアンカライズミルの3つの都市である。各大都市自治体には、いくつかの区が設置された[4]

その後、1986年アダナ[5]1987年ブルサ[6]ガズィアンテプ[7]コンヤ[8]1988年カイセリ[9]が加わり、総数は8市に増えた。1993年アンタルヤディヤルバクルエルズルムエスキシェヒルイズミットメルスィンサムスンの7つの新しい大都市自治体が設立された[10]。2000年にサカリヤも大都市自治体に指定された[11]

2004年以前は人口75万人以上の都市部のみが大都市自治体として指定されていたが、2004年に指定範囲は都市の人口規模に応じて拡大した[注 1]ことにより、イスタンブル県コジャエリ県の全域が大都市自治体に指定され、大都市自治体の範囲は県境と重なることになる[12]2012年に人口が75万人を超えているすべての県、および既に大都市自治体を有する県は一気に大都市自治体に昇格した[13]。これにより大都市自治体の数が急増しており、29市となっている。新規指定の県はアイドゥン県バルケスィル県デニズリ県ハタイ県マラティヤ県マニサ県カフラマンマラシュ県マルディン県ムーラ県テキルダー県トラブゾン県シャンルウルファ県ヴァン県の13県である。拡大指定の県はアダナ県アンカラ県アンタルヤ県ブルサ県ディヤルバクル県エスキシェヒル県エルズルム県ガズィアンテプ県イズミル県カイセリ県コンヤ県メルスィン県サカリヤ県サムスン県である[13]。ただし、行政区画としての県は廃止されておらず、警察部局などが県の管轄範囲に残っている[3]

2013年、オルドゥ県が加わったことで、大都市自治体の総数は30となっている[14]

大都市自治体の一覧 編集

大都市自治体名県名設立日付人口(2013年)[15]人口(2021年)[16]区の数
アダナアダナ県1986年6月5日2,149,1602,263,37315
アンカラアンカラ県1984年3月23日5,045,0835,747,32525
アンタルヤアンタルヤ県1993年9月9日2,158,2652,619,83219
アイドゥンアイドゥン県2012年12月6日1,020,9571,134,03117
バルケスィルバルケスィル県2012年12月6日1,162,7611,250,61020
ブルサブルサ県1986年6月18日2,740,9703,147,81817
デニズリデニズリ県2012年12月6日963,4641,051,05619
ディヤルバクルディヤルバクル県1993年9月9日1,607,4371,791,37317
エルズルムエルズルム県1993年9月9日766,729756,89320
エスキシェヒルエスキシェヒル県1993年9月9日799,724898,36914
ガズィアンテプガズィアンテプ県1986年6月20日1,844,4382,130,4329
ハタイハタイ県2012年12月6日1,503,0661,670,71215
メルスィンメルスィン県[注 2]1993年9月9日1,705,7741,891,14513
イスタンブルイスタンブル県1984年3月23日14,160,46715,840,90039
イズミルイズミル県1984年3月23日4,061,0744,425,78930
カイセリカイセリ県1988年12月7日1,295,3551,434,35716
コジャエリ[注 3]コジャエリ県1993年9月9日1,676,2022,033,44112
コンヤコンヤ県1986年6月20日2,079,2252,277,01731
マラティヤマラティヤ県2012年12月6日762,538808,69213
マニサマニサ県2012年12月6日1,359,4631,456,62617
カフラマンマラシュカフラマンマラシュ県2012年12月6日1,075,0761,171,29811
マルディンマルディン県2012年12月6日779,738862,75710
ムーラムーラ県2012年12月6日866,6651,021,14113
オルドゥオルドゥ県2013年3月14日731,452[注 4]760,87219
サカリヤ[注 5]サカリヤ県2000年3月6日917,3731,060,87616
サムスンサムスン県1993年9月9日1,261,8101,371,27417
テキルダーテキルダー県2012年12月6日874,4751,113,40011
トラブゾントラブゾン県2012年12月6日758,237816,68418
シャンルウルファシャンルウルファ県2012年12月6日1,801,9802,143,02013
ヴァンヴァン県2012年12月6日1,070,1131,141,01513
合計58,999,70166,092,128519

脚注 編集

注釈 編集

  1. ^ 大都市自治体の範囲についてはイスタンブール県コジャエリ県の全域、その他の人口100万人未満の都市は県庁の庁舎から半径20キロの距離まで、100万以上200万未満の都市は県庁舎から30キロの距離まで、200万以上の都市は県庁舎から50キロの距離まで指定できる。ただし、指定範囲は県境を越えることはできない。
  2. ^ 旧名イチェル県
  3. ^ コジャエリ県の中心地であったイズミット市は現在区である。
  4. ^ 2013年時点の人口は75万を超えていた。
  5. ^ サカリヤ県の中心地であったアダパザル市は現在区である。

出典 編集

  1. ^ a b c d 澤江史子. “第二章 トルコの選挙制度と政党”. 日本国際問題研究所. 2022年2月3日閲覧。
  2. ^ 統一地方選挙、大都市部で与党連合が苦戦(トルコ) | ビジネス短信”. ジェトロ (2019年4月4日). 2022年2月3日閲覧。
  3. ^ a b c イスタンブールについて”. www.istanbul.tr.emb-japan.go.jp. 在イスタンブール日本国総領事館. 2022年2月3日閲覧。
  4. ^ TÜRK BELEDİYECİLİĞİNİN GELİŞİM SÜRECİ”. www.mevzuatdergisi.com. 2022年2月3日閲覧。
  5. ^ ADANA İLİNDE SEYHAN VE YÜREĞİR ADIYLA İKİ İLÇE KURULMASl HAKKINDA KANUN” (トルコ語) (19/6/1986). 2022年2月3日閲覧。
  6. ^ BURSA İLİ MERKEZİNDE OSMANGAZİ, YILDIRIM VE NİLÜFER ADIYLA ÜÇ İLÇE KURULMASI HAKKINDA KANUN” (トルコ語) (18/6/1987). 2022年2月3日閲覧。
  7. ^ GAZİANTEP İLİ MERKEZİNDE ŞEHİTKAMİL VE ŞAHİNBEY ADIYLA İKİ İLÇE KURULMASI HAKKINDA KANUN” (トルコ語) (20/6/1987). 2022年2月3日閲覧。
  8. ^ KONYA İLİ MERKEZİNDE KARATAY, SELÇUKLU VE MERAM ADIYLA ÜÇ iLÇE KURULMASI HAKKINDA KANUN” (トルコ語) (20/6/1987). 2022年2月3日閲覧。
  9. ^ KAYSERİ İL MERKEZİNDE MELİKGAZİ VE KOCASİNAN ADIYLA İKİ İLÇE KURULMASI HAKKINDA KANUN” (トルコ語) (7/12/1988). 2022年2月3日閲覧。
  10. ^ YEDİ İLDE BÜYÜKŞEHİR BELEDİYESİ KURULMASI HAKKINDA KANUN HÜKMÜNDE KARARNAME” (トルコ語) (1993年). 2022年2月3日閲覧。
  11. ^ SAKARYA İLİNDE BÜYÜK ŞEHİR BELEDİYESİ KURULMASI HAKKINDA KANUN HÜKMÜNDE KARARNAME” (トルコ語) (2000年). 2022年2月3日閲覧。
  12. ^ BÜYÜKŞEHİR BELEDİYESİ KANUNU” (10/7/2004). 2022年2月4日閲覧。
  13. ^ a b ON ÜÇ İLDE BÜYÜKŞEHİR BELEDİYESİ VE YİRMİ ALTI İLÇE KURULMASI İLE BAZI KANUN VE KANUN HÜKMÜNDE KARARNAMELERDE DEĞİŞİKLİK YAPILMASINA DAİR KANUN”. www.resmigazete.gov.tr (12/11/2012). 2022年2月3日閲覧。
  14. ^ ON ÜÇ İLDE BÜYÜKŞEHİR BELEDİYESİ VE YİRMİ ALTI İLÇE KURULMASI İLE BAZI KANUN VE KANUN HÜKMÜNDE KARARNAMELERDE DEĞİŞİKLİK YAPILMASINA DAİR KANUNDA DEĞİŞİKLİK YAPILMASI HAKKINDA KANUN”. www.resmigazete.gov.tr (14/3/2013). 2022年2月3日閲覧。
  15. ^ Statistical Institute 2013”. 2015年1月30日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年1月30日閲覧。
  16. ^ TÜİK Kurumsal”. data.tuik.gov.tr. 2022年2月11日閲覧。

関連項目 編集