外務・英連邦・開発大臣

イギリスの外務・英連邦省の長
外務英連邦大臣から転送)

国王陛下の外務・英連邦・開発大臣(こくおうへいかのがいむ・えいれんぽう・かいはつだいじん、英語: His Majesty's Principal Secretary of State for Foreign, Commonwealth and Development Affairs)は、イギリス(グレートブリテン及び北アイルランド連合王国)の外務・英連邦・開発省の長たる国務大臣である。一般にForeign Secretaryと略され、他国の外務大臣に相当する。Great Offices of Stateと呼ばれる、イギリスの内閣の中でも重要閣僚ポストの一つでもある。

イギリスの旗 イギリス
外務・英連邦・開発大臣
Secretary of State for Foreign, Commonwealth and Develpment Affairs
現職者
キャメロン男爵デーヴィッド・キャメロン(第4代)[1]
David Cameron

就任日 2023年11月13日
種類閣内大臣
所属機関内閣
庁舎カールトン・ハウス・テラス1番地
所在地ウェストミンスター
指名首相
リシ・スナク
任命国王
チャールズ3世
任期国王陛下の仰せのままに
創設1782年3月7日 (242年前) (1782-03-07)
初代チャールズ・ジェームズ・フォックス
俸給年額 154,089 GBP (2022)[2]
ウェブサイトFCO website

イギリスと諸外国との外交関係・イギリス連邦諸国及び地域・海外領土に関わる事項に加えて、海外におけるイギリスの国益の増進を担当する[3]。また、秘密情報部 (MI6) 及び政府通信本部 (GCHQ) を監督する行政上の権限も有する[4]

現在の外務・英連邦・開発大臣は、第75代イギリス首相を務めたデーヴィッド・キャメロン。キャメロンは2016年の首相退陣後に政界を引退していたが、2023年11月にリシ・スナク首相の要請を受けて政界に復帰してスナク内閣に入閣した[5]

概要 編集

イギリスにおいて、Secretary of State for Foreign Affairs外務大臣)の職は1782年の政府再編により創設され、北部国務卿南部国務卿がそれぞれ内務大臣と外務大臣になった。

Secretary of State for Foreign and Commonwealth Affairs外務・英連邦大臣)の職は、1968年に従来の外務大臣 (Secretary of State for Foreign Affairs) と英連邦大臣 (Secretary of State for Commonwealth Affairs) の職務が一つの省の下に統合する形で設置された。インド省は外務省の前身機関の一つであった。

外務・英連邦・開発大臣は内閣の一員であり、Great Offices of Stateと呼ばれる重要閣僚ポストの一つと見なされている。大臣の執務拠点はホワイトホールの外務・英連邦・開発省内にある。その他、首都ロンドンカールトン・ガーデンとケントのチーヴニング (Chevening) に大臣公邸がある。

歴代の外務大臣 編集

外務大臣(1782年-1968年) 編集

氏名肖像就任退任政党首相
1チャールズ・ジェームズ・フォックス 1782年3月27日1782年7月5日
辞職
ホイッグ党第2代ロッキンガム侯爵
2第2代グランサム男爵 1782年7月13日1783年4月2日ホイッグ党第2代シェルバーン伯爵
3チャールズ・ジェームズ・フォックス 1783年4月2日1783年12月19日ホイッグ党第3代ポートランド公爵
4テンプル伯爵 1783年12月19日1783年12月23日トーリー党ウィリアム・ピット (小ピット)
5カーマーゼン侯爵[注釈 1] 1783年12月23日1791年5月
(辞職)
トーリー党
6グレンヴィル男爵 1791年6月8日1801年2月20日トーリー党
7ハークスベリー男爵[注釈 2] 1801年2月20日1804年5月14日トーリー党ヘンリー・アディントン
8第2代ハロビー男爵英語版 1804年5月14日1805年1月11日トーリー党ウィリアム・ピット (小ピット)
9マルグレイヴ卿 1805年1月11日1806年2月7日トーリー党
10チャールズ・ジェームズ・フォックス 1806年2月7日1806年9月13日
(死去)
ホイッグ党グレンヴィル男爵
11ホーウィック子爵 1806年9月24日1807年3月25日ホイッグ党
12ジョージ・カニング 1807年3月25日1809年10月11日トーリー党第3代ポートランド公爵
13第3代バサースト伯爵 1809年10月11日1809年12月6日トーリー党
14初代ウェルズリー侯爵 1809年12月16日1812年3月4日トーリー党スペンサー・パーシヴァル
15カスルリー子爵 1812年3月4日1822年8月12日
(死去)
トーリー党第2代リヴァプール伯爵
16ジョージ・カニング 1822年9月16日1827年4月30日トーリー党
17初代ダドリー伯爵英語版 1827年4月30日1828年6月2日トーリー党ジョージ・カニング
初代ゴドリッチ子爵
18第4代アバディーン伯爵 1828年6月2日1830年11月22日トーリー党初代ウェリントン公爵
19第3代パーマストン子爵 1830年11月22日1834年11月14日ホイッグ党第2代グレイ伯爵
第2代メルバーン子爵
20初代ウェリントン公爵 1834年11月14日1835年4月18日トーリー党初代ウェリントン公爵
サー・ロバート・ピール準男爵
21第3代パーマストン子爵 1835年4月18日1841年9月2日ホイッグ党第2代メルバーン子爵
22第4代アバディーン伯爵 1841年9月2日1846年7月6日保守党サー・ロバート・ピール準男爵
23第3代パーマストン子爵 1846年7月6日1851年12月16日ホイッグ党ジョン・ラッセル卿
24第2代グランヴィル伯爵 1851年12月26日1851年2月27日ホイッグ党
25第3代マームズベリー伯爵1852年2月27日1852年12月28日保守党第14代ダービー伯爵
26ジョン・ラッセル卿 1852年12月28日1853年2月21日ホイッグ党第4代アバディーン伯爵
27第4代クラレンドン伯爵 1853年2月21日1858年2月26日ホイッグ党
第3代パーマストン子爵
28第3代マームズベリー伯爵1858年2月26日1859年6月18日ホイッグ第14代ダービー伯爵
29ジョン・ラッセル卿[注釈 3] 1859年6月18日1865年11月3日自由党第3代パーマストン子爵
30第4代クラレンドン伯爵 1865年11月3日1866年7月6日自由党初代ラッセル伯爵
31スタンリー卿 1866年7月6日1868年12月9日保守党第14代ダービー伯爵
ベンジャミン・ディズレーリ
32第4代クラレンドン伯爵 1868年12月9日1870年7月6日自由党ウィリアム・グラッドストン
33第2代グランヴィル伯爵 1870年7月6日1874年2月21日自由党
34第15代ダービー伯爵 1874年2月21日1878年4月2日保守党ベンジャミン・ディズレーリ
35第3代ソールズベリー侯爵 1878年4月2日1880年4月28日保守党
36第2代グランヴィル伯爵 1880年4月28日1885年6月24日自由党ウィリアム・グラッドストン
37第3代ソールズベリー侯爵 1885年6月24日1886年2月6日保守党第3代ソールズベリー侯爵
38第5代ローズベリー伯爵 1886年2月6日1886年8月3日自由党ウィリアム・グラッドストン
39初代イデスリー伯爵 1886年8月3日1887年1月12日
(死去)
保守党第3代ソールズベリー侯爵
40第3代ソールズベリー侯爵 1887年1月14日1892年8月11日保守党
41第5代ローズベリー伯爵 1892年8月18日1894年3月11日自由党ウィリアム・グラッドストン
42初代キンバリー伯爵 1894年3月11日1895年6月21日自由党第5代ローズベリー伯爵
43第3代ソールズベリー侯爵 1895年6月29日1900年11月12日保守党第3代ソールズベリー侯爵
44第5代ランズダウン侯爵 1900年11月12日1905年12月4日自由統一党第3代ソールズベリー侯爵
アーサー・バルフォア
45サー・エドワード・グレイ準男爵 1905年10月10日1916年10月10日自由党サー・ヘンリー・キャンベル=バナマン
ハーバート・ヘンリー・アスキス
46アーサー・バルフォア 1916年12月10日1919年10月23日保守党デビッド・ロイド・ジョージ
47カーゾン・オブ・ケドルストン伯爵[注釈 4] 1919年10月23日1924年1月22日保守党
アンドルー・ボナー・ロー
スタンリー・ボールドウィン
48ラムゼイ・マクドナルド 1924年1月22日1924年11月3日労働党ラムゼイ・マクドナルド
49サー・オースティン・チェンバレン 1924年11月6日1929年6月4日保守党スタンリー・ボールドウィン
50アーサー・ヘンダーソン 1929年6月7日1931年8月24日労働党ラムゼイ・マクドナルド
51初代レディング侯爵 1931年8月25日1931年11月5日自由党ラムゼイ・マクドナルド
52サー・ジョン・サイモン 1931年11月5日1935年6月7日国民自由党英語版ラムゼイ・マクドナルド
53サー・サミュエル・ホーア準男爵英語版 1935年6月7日1935年12月18日
(辞職)
保守党スタンリー・ボールドウィン
54アンソニー・イーデン 1935年12月22日1938年2月20日
(辞職)
保守党
ネヴィル・チェンバレン
55ハリファックス子爵 1938年2月21日1940年12月22日保守党
56アンソニー・イーデン 1940年12月22日1945年7月26日保守党ウィンストン・チャーチル
57アーネスト・ベヴィン 1945年7月27日1951年3月9日労働党クレメント・アトリー
58ハーバート・モリソン英語版 1951年3月9日1951年10月26日労働党
59アンソニー・イーデン 1951年10月28日1955年4月7日保守党サー・ウィンストン・チャーチル
60ハロルド・マクミラン 1955年4月7日1955年12月20日保守党サー・アンソニー・イーデン
61セルウィン・ロイド英語版 1955年12月20日1960年7月27日保守党
ハロルド・マクミラン
62第14代ヒューム伯爵[注釈 5] 1960年7月27日1963年10月20日保守党
63ラブ・バトラー 1963年10月20日1964年10月16日保守党サー・アレック・ダグラス=ヒューム
64パトリック・ゴードン・ウォーカー英語版 1964年10月16日1965年1月22日[注釈 6]労働党ハロルド・マクミラン
65マイケル・ステュワート英語版 1965年1月22日1966年8月11日労働党
66ジョージ・ブラウン英語版 1966年8月11日1968年3月16日
(辞職)
労働党
67マイケル・ステュワート 1968年3月16日1968年10月17日労働党

外務・英連邦大臣(1968年-2020年) 編集

氏名肖像就任退任政党首相
1マイケル・ステュワート 1968年10月17日1970年6月19日労働党ハロルド・ウィルソン
2サー・アレック・ダグラス=ヒューム 1970年6月20日1974年2月28日保守党エドワード・ヒース
3ジェームズ・キャラハン 1974年3月5日1976年4月5日労働党ハロルド・ウィルソン
4アンソニー・クロスランド英語版 1976年4月8日1977年2月19日
(死去)
労働党ジェームズ・キャラハン
5デイヴィッド・オーウェン 1977年2月22日1979年5月4日労働党
6第6代キャリントン男爵 1979年5月5日1982年4月5日
(辞任)
保守党マーガレット・サッチャー
7フランシス・ピム1982年4月6日1983年6月11日保守党
8サー・ジェフリー・ハウ 1983年6月11日1989年7月24日保守党
9ジョン・メージャー 1989年7月24日1989年10月26日保守党
10ダグラス・ハード 1989年10月26日1995年7月5日保守党
ジョン・メージャー
11マルコム・リフキンド英語版 1995年7月5日1997年5月2日保守党
12ロビン・クック 1997年5月2日2001年6月8日労働党トニー・ブレア
13ジャック・ストロー 2001年6月8日2006年5月5日労働党
14マーガレット・ベケット 2006年5月5日2007年6月28日労働党
15デイヴィッド・ミリバンド 2007年6月28日2010年5月11日労働党ゴードン・ブラウン
16ウィリアム・ヘイグ 2010年5月11日2014年7月14日保守党デーヴィッド・キャメロン
17フィリップ・ハモンド 2014年7月14日2016年7月13日保守党
18ボリス・ジョンソン 2016年7月13日2018年7月9日保守党テリーザ・メイ
19ジェレミー・ハント 2018年7月9日2019年7月24日保守党
20ドミニク・ラーブ 2019年7月24日2020年9月1日保守党ボリス・ジョンソン

外務・英連邦・開発大臣(2020年-現在) 編集

氏名肖像就任退任政党首相
1ドミニク・ラーブ 2020年9月1日2021年9月15日保守党ボリス・ジョンソン
2リズ・トラス 2021年9月15日2022年9月6日保守党
3ジェームズ・クレバリー 2022年9月6日2023年11月13日保守党リズ・トラス
リシ・スナク
4キャメロン男爵(デーヴィッド・キャメロン)[注釈 7] 2023年11月13日(現職)保守党

脚注 編集

注釈 編集

  1. ^ 在任中の1789年にリーズ公爵に叙される
  2. ^ 在任中の1803年11月に繰上勅書により未だ父が存命ながらハークスベリー男爵位を継承する。それまでは儀礼称号として使用していた。
  3. ^ 1861年にラッセル伯爵に叙される
  4. ^ 在任中の1921年のカーゾン・オブ・ケドルストン侯爵に叙される
  5. ^ 1963年に爵位返上
  6. ^ 1964年イギリス総選挙で落選
  7. ^ [1]

出典 編集

  1. ^ a b キャメロンは政界を引退し議席を有さなかったため、一代貴族に任命され貴族院議員として外相に就任した。
    "英首相、発言が問題視された内相を解任 後任はクレヴァリー外相、新外相はキャメロン元首相". BBC. 13 November 2023. 2023年11月17日閲覧
  2. ^ Salaries of Members of His Majesty's Government – Financial Year 2022–23” (2022年12月15日). 2023年11月25日閲覧。
  3. ^ Secretary of State for Foreign and Commonwealth Affairs”. Government of the United Kingdom. 2014年9月4日閲覧。
  4. ^ Ministerial responsibility” (英語). GCHQ Site (2016年3月23日). 2017年5月25日閲覧。 “Day-to-day ministerial responsibility for GCHQ lies with the Foreign Secretary.”
  5. ^ "英外相にキャメロン元首相 問題発言の内相解任に伴い". 毎日新聞デジタル. 毎日新聞社. 13 November 2023. 2023年11月13日閲覧

関連項目 編集

外部リンク 編集