リリアン・J・ブラウン

アメリカの推理作家 (1913-2011)

リリアン・J・ブラウンLilian Jackson Braun Bettinger[1]1913年6月20日[2] - 2011年6月4日[2])は、アメリカ合衆国推理作家。代表作は、2匹のシャム猫「ココとヤムヤム」と記者のジェイムズ・クィラランらが主人公の「シャム猫ココシリーズ」。

リリアン・J・ブラウン
誕生リリアン・ジャクソン・ブラウン
Lilian Jackson Braun
1913年6月20日
アメリカ合衆国の旗 マサチューセッツ州チコピー
死没 (2011-06-04) 2011年6月4日(97歳没)
アメリカ合衆国の旗 サウスカロライナ州ランドラム
職業記者、編集者、作家
言語英語
国籍アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
活動期間1962年 - 2007年
ジャンル推理小説
代表作シャム猫ココシリーズ
配偶者アール・ベッティンガー(夫)
ウィキポータル 文学
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経歴

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10代の頃からミシガン州デトロイトの新聞『デトロイト・ニュース英語版』にスポーツの詩や、デトロイトのデパートの広告記事などを書いていた。その後は同じくデトロイトの新聞社である《デトロイト・フリー・プレス英語版》に記者として1979年に退職するまで約30年勤めた。

1962年、飼い猫のシャム猫がマンションの10階から突き落とされて殺された怒りと悲しみを忘れるために、記者業の傍ら執筆した短編「マダム・フロイの罪」(原題:The Sin of Madame Phloi)が『エラリー・クイーンズ・ミステリ・マガジン』6月号に掲載され作家としてデビューした。この作品は「The Best Ditective Stories of 1963」に選出され、エラリー・クイーンに「もっと猫の話を書くよう」勧められたことから、ココ・シリーズ執筆の契機となった。

1966年から1968年にかけて、『猫は手がかりを読む』(原題:The Cat Who Could Read Backwords)、『猫はソファをかじる』(原題:The Cat Who Ate Danish Modern)、『猫はスイッチを入れる』(原題:The Cat Who Turned On and Off)の3作を出版したが、当時、猫は不人気のペットであったため第4作『猫は殺しをかぎつける』(原題:The Cat Who Saw Red)は出版社の事情でお蔵入りとなり、その間に夫の死など生活に追われている内に、シリーズのことは忘れてしまったという。

その後、『猫は殺しをかぎつける』の原稿を読んだ再婚相手で俳優のアール・ベッティンガー (Earl Bettinger) の薦めで原稿をバークリー・ブックス(ペンギン・グループの傘下)に送り、1986年に約18年ぶりに作家として復帰し(当時73歳)、前3作も同社から再版され、ベストセラー作家の仲間入りを果たした。同作はアメリカ探偵作家クラブ賞の最優秀ペーパーバック賞にノミネートされた。その後も精力的に執筆を続け、生涯に長編29冊、短編集1冊、番外編2冊を発表した。

ココシリーズは、2007年1月に第29作『猫はひげを自慢する』(原題:The Cat Who Had 60 Whiskers)が出版された後、第30作として『The Cat Who Smelled Smoke』のタイトルが発表されていたが、刊行には至らなかった。晩年はノースカロライナ州トライオンに夫と2匹の猫と共に暮らし、2011年6月4日サウスカロライナ州ランドラムのホスピスで死去した。尚、ブラウンはプライベートに関しては秘匿する方針を貫いていたため、正確な生年月日は編集者も知らず、彼女の死去と共に明かされた。生前のインタビューでは「精神年齢は35、肉体年齢は50、実年齢はお答えしないことにしています」と語っていた。

また、彼女は「テクノフォビア」という最新技術に対して恐怖症ともいうべき症状を有していたようで、執筆にはタイプライターを使い続けていた。

作品リスト

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シャム猫ココシリーズ

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シリーズの詳細についてはシャム猫ココシリーズ参照。 日本語の翻訳版は羽田詩津子の訳でハヤカワ・ミステリ文庫から刊行されている。

#邦題原題刊行年
刊行年月
ISBN
1猫は手がかりを読むThe Cat Who Could Read Backwards1966年1988年11月ISBN 4-15-077202-9
2猫はソファをかじるThe Cat Who Ate Danish Modern1967年1989年8月ISBN 4-15-077203-7
3猫はスイッチを入れるThe Cat Who Turned On and Off1968年1990年4月ISBN 4-15-077204-5
4猫は殺しをかぎつけるThe Cat Who Saw Red1986年1988年5月ISBN 4-15-077201-0
5猫はブラームスを演奏するThe Cat Who Played Brahms1987年2001年6月ISBN 4-15-077220-7
6猫は郵便配達をするThe Cat Who Played Post Office1987年2002年1月ISBN 4-15-077221-5
7猫はシェイクスピアを知っているThe Cat Who Knew Shakespeare1988年1991年1月ISBN 4-15-077206-1
8猫は糊をなめるThe Cat Who Sniffed Glue1988年1991年9月ISBN 4-15-077207-X
9猫は床下にもぐるThe Cat Who Went Underground1989年1993年9月ISBN 4-15-077208-8
10猫は幽霊と話すThe Cat Who Talked to Ghosts1990年1994年4月ISBN 4-15-077209-6
11猫はペントハウスに住むThe Cat Who Lived High1990年1994年12月ISBN 4-15-077210-X
12猫は鳥を見つめるThe Cat Who Knew a Cardinal1991年1995年4月ISBN 4-15-077211-8
13猫は山をも動かすThe Cat Who Moved a Mountain1992年1995年11月ISBN 4-15-077212-6
14猫は留守番をするThe Cat Who Wasn't There1992年1996年8月ISBN 4-15-077213-4
15猫はクロゼットに隠れるThe Cat Who Went into the Closet1993年1997年9月ISBN 4-15-077214-2
16猫は島へ渡るThe Cat Who Came to Breakfast1994年1997年12月ISBN 4-15-077215-0
17猫は汽笛を鳴らすThe Cat Who Blew the Whistle1994年1998年8月ISBN 4-15-077216-9
18猫はチーズをねだるThe Cat Who Said Cheese1996年1999年5月ISBN 4-15-077217-7
19猫は泥棒を追いかけるThe Cat Who Tailed a Thief1997年1999年12月ISBN 4-15-077217-7
20猫は鳥と歌うThe Cat Who Sang for Birds1998年2000年6月ISBN 4-15-077219-3
21猫は流れ星を見るThe Cat Who Saw Stars1999年2002年6月ISBN 4-15-077222-3
22猫はコインを貯めるThe Cat Who Robbed a Bank2000年2002年12月ISBN 4-15-077223-1
23猫は火事場にかけつけるThe Cat Who Smelled a Rat2001年2003年6月ISBN 4-15-077224-X
24猫は川辺で首をかしげるThe Cat Who Went Up the Creek2002年2004年2月ISBN 4-15-077225-8
25猫は銀幕にデビューするThe Cat Who Brought Down the House2003年2005年2月ISBN 4-15-077226-6
26猫は七面鳥とおしゃべりするThe Cat Who Talked Turkey2004年2006年1月ISBN 4-15-077228-2
27猫はバナナの皮をむくThe Cat Who Went Bananas2005年2006年6月ISBN 4-15-077229-0
28猫は爆弾を落とすThe Cat Who Dropped a Bombshell2006年2006年12月ISBN 4-15-077230-4
29猫はひげを自慢するThe Cat Who Had 60 Whiskers2007年2007年6月ISBN 978-4-15-077231-4

その他

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  • 猫は14の謎を持つ The Cat Who Had 14 Tales(1988年) - 猫が登場するがココ・シリーズではない
  • Qwilleran's Short and Tall Tales【短編集・未訳】(2002年) - ココ・シリーズの主人公クィラランが作中で企画した作品
  • 猫は日記をつける The Private Life of the Cat Who... Tales of Koko and Yumyum from the Journal of James Mackintosh Qwilleran(2003年) - クィラランが書いた日記という設定で書かれた作品

脚注

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出典

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  • 「ココ・シリーズは永遠に」 羽田詩津子 『ハヤカワ・ミステリ・マガジン』(早川書房)2011年10月号 p.117 - p.121

外部リンク

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