プレミアシップ・ラグビー

プレミアシップ・ラグビー: Premiership Rugby)は、イングランドのプロラグビーユニオン競技会である。スポンサー名を冠してギャラガー・プレミアシップ・ラグビー(Gallagher Premiership Rugby)またはギャラガー・プレミアシップとも呼ばれる[1]。プレミアシップは12クラブからなり、イングランドのラグビーユニオンの構成英語版の最上位ディビジョンである。プレミアシップのクラブは欧州の2つの主要なクラブ競技会、ヨーロピアンラグビーチャンピオンズカップヨーロピアンラグビーチャレンジカップへの出場資格を得る。シーズン毎にプレミアシップで最下位に終わったチームは2部のRFUチャンピオンシップへ降格する。RFUチャンピオンシップの優勝チームはプレミアシップへ昇格する。

Premiership Rugby
今シーズン・大会:
現在進行のスポーツイベント 2023–24 Premiership Rugby
競技ラグビーユニオン
創立1987年 (37年前) (1987)
統治者RFU
代表Simon Massie-Taylor
参加チーム10
リーグレベルLevel 1
下位大会RFU Championship
国内カップ戦Premiership Rugby Cup
国際カップ戦European Rugby Champions Cup
European Rugby Challenge Cup
イングランドの旗 England
テレビ局TNT Sports
ITV
公式サイトpremiershiprugby.com

リーグ戦形式の大会は1987年から開催され、現在のプレミアシップの体制へと発展してきた。

概要 編集

プレミアシップのシーズンは、毎年9月から5月にかけて12チームによるホーム・アンド・アウェー方式の総当たり戦(計22試合)を行い、勝ち点を競う。

勝ち点は次のように与えられる。

  • 勝ち…4点
  • 引き分け…2点
  • 負け…0点(ただし7点差以内の負け…1点)
  • 1試合に4トライ以上…1点

レギュラーシーズンで4位以内だったチームは優勝を決めるプレーオフに進出する。1位は4位と、2位は3位とそれぞれ準決勝を行い、1位と2位のチームはホームアドバンテージを持つ。準決勝で勝利したチームがトゥイッケナム・スタジアムで行われる決勝に臨む。最下位に終わったチームは下部リーグのRFUチャンピオンシップに降格し、次のシーズンにはRFUチャンピオンズシップでプレーオフを勝ち抜いたチームが昇格することとなる。また、上位6チームは次のヨーロピアンラグビーチャンピオンズカップへの出場権を得る。

歴史 編集

始まり: 1972年までのイングランド国内ラグビーユニオン 編集

イングランドにおけるラグビーユニオンの統括団体、ラグビー・フットボール・ユニオン(RFU)は、リーグ構造の導入が「汚ない」プレーを増やし、クラブに対して選手へ支払いを行うように圧力をかける(それによってアマチュア精神に背く)ことになると考えていたため、これに長年あらがった。その代わりに、クラブは自身で試合を企画し、伝統戦を有していた。唯一の組織された大会はカウンティカップとカウンティ選手権であった。前者はクラブによって、後者はカウンティ(州)代表チームによってプレーされた。デイリー・テレグラフ紙ならびに(ヨークシャー・ポスト英語版紙といった)いくつかの地方紙はチームの成績に基づいて「ペナント」を編纂したが、大会の強さにはばらつきがあったため、これはせいぜいシーズンを通したチームの成績の見積もりだった。

1972年–1995年: リーグとカップ 編集

1972年、ノックアウト方式の全国カップ、RFUクラブ競技会(アングロ・ウェルシュカップの前身)を認可した。まずは地域のメリットテーブル(実績表の意味)がこれに続き、続いて1980年代中頃に全国的なメリットテーブルが続いた。リーグ戦への移行の原因の1つは、新しい定期的な大会により時間がとれなくなり、一部の伝統戦が失われたためであった。

リーグシステムはカーリッジリーグが設立された1987年以来発展し、現在はおよそ1000クラブが昇格降格制度のある108のリーグに分かれてプレーしている。

初シーズン、クラブはお互いに都合の良い日付に試合を開催する予定だった。初年度参加クラブはバースブリストルコヴェントリーグロスターハーレクインズレスターモーズリーノッティンガムオレルセールワスプスウォータールーであった。初シーズンは全面的な成功となり、全国リーグの上位階級のクラブは観客数の増加、地元の支持者と全国的な企業からの関心、定期的な試合開催による選手の技術水準の向上が報告された。リーグ戦の導入がフィールド上での暴力の増加をもたらすという懸念は概して杞憂に終わった。

翌シーズンまでに、RFUはリーグ戦の開催日を土曜日の固定し、これによってクラブが試合のスケジュール調整を行う必要がなくなった。草創期にはホーム・アンド・アウェー構造はなく、各チームが互いに1度対戦した。

初期はバースレスターの2チームが順位表の上位を独占した。

1994年、リーグ構造が初めてホーム・アンド・アウェーの総当たり方式に拡大された。1994-95シーズンは初めてSky Sportsによるライブ中継が始まった(Sky Sportsによる中継はBT Sportsが独占放映権を取得する2013ー14シーズンまで続いた)[2]

1996年: プロラグビーユニオンの幕開け 編集

リーグは1996-97シーズンにプロフェッショナルに転換し、ロンドン・ワスプスが初代王者となった。サラセンズニューカッスルノーサンプトンのようなクラブは富裕層の後援者を引き付けることができた。しかし一方、プロ時代になって、ウェストハートルプールリッチモンドロンドン・スコティッシュのようなクラブは支援者が手を引いたことで破産を余儀無くされる結果をもたらした[3]

2000年–2002年: プレミアシップ、チャンピオンシップ、プレーオフ 編集

2000-01シーズンはシーズン構造の再補修が行われた。2000-2001シーズンには8チームによるプレーオフ(チャンピオンシップ)が導入された。しかしながら、 レギュラーシーズンを首位で終えたチームがまだイングランドチャンピオンと見なされた。

2001-02シーズンからは8チームプレーオフの優勝者にイングランドチャンピオンの栄誉が与えられることが論議を呼びながら決定された[4]。ファンからの激しい抗議があり、この提案は撤回された。

2003年–2014年: プレーオフが優位に 編集

2002-03シーズンから、新たなプレーオフ形式が導入された。ここでは、レギュラーシーズン首位のチームが、2位と3位のチーム間の試合の勝者と対戦することになった。この試合(プレミアシップファイナル)の勝者はイングランドチャンピオンとして認められることとなる。グロスターは大差でリーグを制覇したものの、ファイナルまで3週間待たなかえればいけなかった。勢いを失ったグロスターは、(プレーオフ初戦でシーズン3位のノーサンプトンを破って勢いに乗る)ワスプスに敗れた。プレーオフ構造は2005-06シーズンに改革され、1位のチームは準決勝で4位のチームと対戦するようになった(ショーネシープレーオフ方式英語版)。

2014年–現在: 米国構想 編集

イングランドのプレミアシップ・ラグビー・リミテッドとフランスのリーグ・ナシオナル・ド・リュグビー英語版(LNR)との対立のため、2013–14以後のハイネケンカップの将来が不確かなものとなり、プレミアシップ・ラグビー・リミテッドはブランドをアメリカ合衆国へ拡大するいくつかの動きを模索した。2013年5月、プレミアシップ・ラグビー・リミテッドと米国が拠点のRugbyLawは早ければ2014年には米国でプロラグビーリーグを設立する計画に入った[5]。この計画の第一段階として、ベテランの代表選手と若いアメリカ人選手の合同チームである「アメリカン・バーバリアンズ」が出場する2試合のプレシーズン公開試合が含まれていた。「アメリカン・バーバリンアンズ」は2013年8月に米国とロンドンで試合を行う予定だったが、この計画は頓挫し、試合は無期限に延期された[6]

2013年8月、レスター・タイガースのチェアマン、Peter Tomは、プレミアシップ・ラグビー・リミテッドがプレミアシップの試合を米国で開催する可能性について議論してきたことを確認した[5][7]。アメリカ合衆国での初試合は2016年3月12日開催され、ニューヨーク都市圏にあるレッドブル・アリーナサラセンズロンドン・アイリッシュを破った[8]。この試合はロンドン・アイリッシュが各シーズン1試合のホームゲームを米国でプレーするという3年契約の1回目であったが、ロンドン・アイリッシュが2015-16シーズン終了時にプレミアシップから降格したことでこの計画は断念された[9]。2017年にアメリカのスポーツマーティンング企業AEGと新たな契約が結ばれ、2017–18からの4シーズンにプレミアシップの試合を少なくとも1回米国で見られるようにすることになった。この新契約の下での初試合は2017年9月16日に開催され、ペンシルバニア州フィラデルフィア郊外のチェスターにあるタレン・エナジー・スタジアムニューカッスル・ファルコンズサラセンズ相手のホームゲームをプレーした[9]。2018-19シーズンは米国での試合開催は計画されなかったものの、サラセンズハーレクインズとのラウンド6の試合がプレミアシップ・ラグビーの試合として初めて米国のテレビネットワーク英語版で放送された。

クラブ 編集

2023–24シーズン 編集

Premiership Rugby clubs
クラブ創設年本拠地スタジアム収容人数タイトル数(最終)
バース1865年バースレクリエーション・グラウンド14,5006 (1996)
ブリストル・ベアーズ1888年ブリストルアシュトン・ゲート27,0000 (N/A)
エクセター1871年エクセターサンディ・パーク12,9212 (2020)
グロスター1873グロスターキングスホルム・スタジアム16,1150 (N/A)
ハーレクインズ1866年ロンドントゥイッケナムトゥイッケナム・ストゥープ14,8002 (2021)
レスター・タイガース1880年レスターウェルフォード・ロード25,84911 (2022)
ニューカッスル・ファルコンズ1877年ニューカッスル・アポン・タインキングストン・パーク10,2001 (1998)
ノーサンプトン・セインツ1880年ノーサンプトンフランクリンズ・ガーデンズ15,2492 (2024)
セール・シャークス1861年サルフォードサルフォード・シティ・スタジアム12,0001 (2006)
サラセンズ1876年ロンドンヘンドンアリアンツ・パーク8,5006 (2023)
  • 註: ラグビーユニオンの試合のための収容人数はスタジアムの公式な収容人数とは異なる。

スポンサーシップ 編集

期間スポンサー名称
1987–1997カーリッジ・ブルワリー英語版Courage League National Division One
1997–2000アライド・ダンバー英語版Allied Dunbar Premiership
2000–2005チューリッヒ保険グループZurich Premiership
2005–2010ギネスGuinness Premiership
2010–2018アビバAviva Premiership
2018–currentアーサー・J・ギャラガー& Co.英語版Gallagher Premiership

歴代優勝クラブ 編集

プレーオフ決勝 編集

シーズンプレーオフ優勝Score準優勝観客数レギュラー1位
2000–01*レスター22–10バース33,500レスター
2001–02*グロスター28–23ブリストル28,500レスター
2002–03ワスプス39–3グロスター42,000グロスター
2003–04ワスプス10–6バース59,500バース
2004–05ワスプス39–14レスター66,000レスター
2005–06セール・シャークス45–20レスター58,000セール・シャークス
2006–07レスター44–16グロスター59,000グロスター
2007–08ワスプス26–16レスター81,600グロスター
2008–09レスター10–9ロンドン・アイリッシュ81,601レスター
2009–10レスター33–27サラセンズ81,600レスター
2010–11サラセンズ22–18レスター80,016レスター
2011–12ハーレクインズ30–23レスター81,779ハーレクインズ
2012–13レスター37–17ノーサンプトン81,703サラセンズ
2013–14ノーサンプトン24–20 (aet)サラセンズ81,193サラセンズ
2014–15サラセンズ28–16バース80,589ノーサンプトン
2015-16サラセンズ28-20エクセター77,109サラセンズ
2016-17エクセター23-20 (aet)ワスプス79,657ワスプス
2017-18サラセンズ27-10エクセター75,128エクセター
2018-19サラセンズ37-34エクセター75,329エクセター
2019-20エクセター19-13ワスプスエクセター
2020-21ハーレクインズ40-38エクセター10,000ブリストル
2021-22レスター15-12サラセンズ72,748レスター
2022-23サラセンズ35-25セール61,875サラセンズ
2023-24ノーサンプトン25-21バースノーサンプトン
  • *2001と2002シーズンは上位8チームによるトーナメント方式で優勝を争った。
  • aet - 延長戦での決着

出典 編集

  1. ^ "Gallagher Premiership Rugby to kick off on 31 August 2018" (Press release). Premiership Rugby. 12 April 2018. 2018年5月30日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年4月17日閲覧
  2. ^ Partners | Sky Sports”. Premiership Rugby (2012年6月28日). 2013年4月27日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年7月31日閲覧。
  3. ^ Club History”. London Scottish FC (2013年4月13日). 2016年4月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年4月19日閲覧。
  4. ^ “Leicester livid as seasons spoils are left up for grabs”. The Independent. (2001年2月10日). オリジナルの2012年1月23日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20120123072024/http://www.independent.co.uk/sport/rugby/rugby-union/leicester-livid-as-seasons-spoils-are-left-up-for-grabs-691178.html 2009年1月28日閲覧。 
  5. ^ a b Dart, Tom (2013年5月11日). “NFL joins plan aiming to create professional rugby union league in US”. Guardian Media. オリジナルの2013年12月3日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20131203134618/http://www.theguardian.com/sport/2013/may/11/nfl-rugby-union-rugbylaw-barbarians-irish 2013年8月4日閲覧。 
  6. ^ Dart, Tom (2013年6月5日). “US professional rugby union project delayed to 2014”. Guardian Media. オリジナルの2013年8月16日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20130816234555/http://www.theguardian.com/sport/2013/jun/05/us-professional-rugby-union-london-irish 2013年8月4日閲覧。 
  7. ^ “America to host Aviva Premiership matches?”. ESPN Scrum. (2013年8月4日). オリジナルの2013年8月7日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20130807231016/http://www.espnscrum.com/premiership-2013-14/rugby/story/192919.html 2013年8月4日閲覧。 
  8. ^ “London Irish to play Saracens in New York Premiership match”. (2015年10月27日). オリジナルの2015年10月28日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20151028020131/http://www.bbc.co.uk/sport/0/rugby-union/34647359 2015年10月27日閲覧。 
  9. ^ a b Pengelly, Martin (2017年5月17日). “Saracens to face Newcastle in Philadelphia under four-year US deal”. Theguardian.com. オリジナルの2017年5月21日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20170521083151/https://www.theguardian.com/sport/2017/may/17/saracens-newcastle-philadelphia-premiership-rugby 2017年5月22日閲覧。 

関連項目 編集

外部リンク 編集