ナショナルトレーニングセンター

ナショナルトレーニングセンター (National Training Center、NTC) は、「スポーツ振興基本計画」(2000年9月文部省告示)を受けて設置された日本のトップレベル競技者用トレーニング施設。中核拠点東京都北区)と競技別強化拠点(国内各地)がある。

中核拠点には命名権が導入され、2009年(平成21年)5月11日から「味の素ナショナルトレーニングセンター」と呼ばれている(後述)。

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中核拠点「味の素ナショナルトレーニングセンター」 編集

味の素ナショナルトレーニングセンター 屋内トレーニングセンター・ウエスト


味の素ナショナルトレーニングセンター・ウエスト(2020年)

施設情報
愛称味の素ナショナルトレーニングセンター
正式名称ハイパフォーマンススポーツセンター ナショナルトレーニングセンター 屋内トレーニングセンター・ウエスト
用途JOC加盟団体所属の競技選手の強化
設計者石本建築事務所佐藤総合計画共同企業体
施工大林組
事業主体 日本文部科学省
管理運営独立行政法人日本スポーツ振興センター (JSC)
構造形式S造、一部SRC造
延床面積約29,000 m2
階数地上3階、地下1階
着工2006年(平成18年)8月
竣工2007年(平成19年)12月
所在地115-0056
東京都北区西が丘3-15-1
位置北緯35度46分2.2秒 東経139度42分29.2秒 / 北緯35.767278度 東経139.708111度 / 35.767278; 139.708111 (味の素ナショナルトレーニングセンター 屋内トレーニングセンター・ウエスト)座標: 北緯35度46分2.2秒 東経139度42分29.2秒 / 北緯35.767278度 東経139.708111度 / 35.767278; 139.708111 (味の素ナショナルトレーニングセンター 屋内トレーニングセンター・ウエスト)
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味の素ナショナルトレーニングセンター 屋内トレーニングセンター・イースト

味の素ナショナルトレーニングセンター・ウエスト(2020年)
施設情報
愛称味の素ナショナルトレーニングセンター・イースト
正式名称ハイパフォーマンススポーツセンター ナショナルトレーニングセンター 屋内トレーニングセンター・イースト[1]
用途JOC/JPC加盟団体所属の競技選手の強化
設計者松田平田設計・教育施設研究所共同企業体[1]
施工フジタ[1]
事業主体 日本文部科学省
管理運営独立行政法人日本スポーツ振興センター (JSC)
構造形式S造SRC造RC造
敷地面積14,696 m2
延床面積29,991 m2
階数地上6階、地下1階
着工2017年(平成29年)7月[2]
竣工2019年(令和元年)6月[2]
所在地115-0056
東京都北区西が丘3-12-22
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NTCイースト開業前のNTCウエスト、現在と異なりパラリンピックのロゴがない
味の素ナショナルトレーニングセンター・イースト 正面出口(2020年)

一般に「ナショナルトレーニングセンター中核拠点」(NTC中核拠点)を指して、単に「ナショナルトレーニングセンター」と呼称。

NTC中核拠点施設は北京オリンピックに間に合わせる形で、370億円[3] かけて国が設置した。独立行政法人日本スポーツ振興センター (JSC) が管理し、JOCが運用して、JOC加盟団体所属の競技選手強化目的で利用されている。隣接地には国立スポーツ科学センターがあり、NTC中核拠点と連携している。

JOCエリートアカデミーが設けられ、ジュニア期からトップアスリート育成され、平成25年度は中学1年から高校3年まで(レスリング14名、卓球19名、フェンシング11名 計44名)育成されている。

国立西が丘運動場跡地に建つ施設には、屋内テニスコート、屋内トレーニングセンター。および、移転した国立国語研究所の跡地に宿泊施設があり、十条駐屯地赤羽地区の跡地には、屋根付きの陸上用トラックがある。

一連施設の建設・運営管理費用は主に、日本スポーツ振興センターの事業の一つである、スポーツ振興くじの益金によって賄われている。

主な施設 編集

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いずれも東京都北区にある。

NTCウエスト
NTCイースト
  • 屋内トレーニングセンター・イースト(西が丘3-12-22)
    • 5階:アーチェリー場・卓球場(2階吹き抜け)[4]
    • 3階:フェンシング場(2階吹き抜け)[4]
    • 2階:共用体育場(4階吹き抜け)・水泳場(2階吹き抜け)[4]
    • 地下1階:射撃場[4]
    • 宿泊施設:82室143名収容[5]

沿革 編集

  • 2006年(平成18年)6月30日 - 国立西が丘運動場が廃止。
  • 2008年(平成20年)1月21日 - 供用開始。
  • 2009年(平成21年)5月11日 - 味の素命名権契約を結び「味の素ナショナルトレーニングセンター」となる。
  • 2012年(平成24年)6月 - パラリンピック日本代表選手がチームとして初使用[3]
  • 2016年(平成28年)4月 - オリンピック・パラリンピックの一体的強化を目的にNTCと国立スポーツ科学センターを統合し組織名を「ハイパフォーマンススポーツセンター」(HPSC)に改称。
  • 2019年(令和元年)9月10日 - パラリンピック選手に対応した拡充棟「NTCイースト」が開業、既存棟の愛称を「NTCウエスト」に改称[5][4]
  • 2020年(令和2年)
    • 4月8日 - 2019新型コロナウイルスに伴い営業中止。寄宿していたアスリートは退去し電話・メールによる相談のみの対応とする[6]
    • 5月27日 - 競技別練習場の利用を再開[7]
    • 6月22日 - 卓球日本代表を皮切りに合宿利用を再開[8]

命名権 編集

NTC中核拠点施設を管理する日本スポーツ振興センター(NAASH)が同施設の名称も管理しているが、その命名権をNAASHからJOCが預かり、売却先を探していた[9]

2009年(平成21年)5月11日、JOCと味の素との間で命名権売買について契約がなされ、同日から4年間、NTC中核拠点施設は「味の素ナショナルトレーニングセンター」と呼ばれることになった[10]。これは、国立施設として日本初の命名権導入例である[10]

消費税を除いた契約金額は、1年あたり8千万円、4年総額で3億2千万円[10]。この命名権料の半額がNAASHへと入る[9]。味の素は「JOCゴールドパートナー」の契約も同時に行っており、命名権料と合わせて4年総額で8億円前後を支払う見込み[9]。また、敷地内の食堂に味の素提供の調味料やサプリメントが用意され、それらを応用した栄養指導も行う。

アクセス 編集

主な周辺施設 編集

競技別強化拠点 編集

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国内既存施設に対して、国が指定して施設所有者に出資し、施設所有者が管理する。運用ディレクターも設置される。JOC加盟団体所属の競技選手が優先して使用できる。

NTC競技別強化拠点施設は、冬季競技、海洋・水辺系競技、屋外系競技、および、高地トレーニングの4分野に分類される。2007年(平成19年)から逐次指定されている。

競技 等施設名位置所在地
スキージャンプ大倉山ジャンプ競技場北緯43度3分3.9秒 東経141度17分26.4秒北海道札幌市
宮の森ジャンプ競技場北緯43度02分22秒 東経141度17分41秒
スケート(スピード)明治北海道十勝オーバル北緯42度53分37.3秒 東経143度8分32秒北海道帯広市
エムウェーブ北緯36度38分26.4秒 東経138度14分25秒長野県長野市
スケート(フィギュア)中京大学アイスアリーナ
(オーロラリンク)
北緯35度8分21秒 東経137度8分47秒愛知県豊田市
関空アイスアリーナ大阪府泉佐野市
スケート(ショート)帝産アイススケートトレーニングセンター北緯35度57分39.3秒 東経138度28分41.6秒長野県南佐久郡南牧村
アイスホッケー白鳥王子アイスアリーナ北緯42度38分20.9秒 東経141度36分23.4秒北海道苫小牧市
バイアスロン西岡バイアスロン競技場北緯42度58分21秒 東経141度22分14秒北海道札幌市
ボブスレー
リュージュ
長野市ボブスレー・リュージュパーク
(スパイラル)
北緯36度42分39.1秒 東経138度9分26.8秒長野県長野市
カーリングスカップ軽井沢北緯36度19分21.5秒 東経138度35分52.5秒長野県北佐久郡軽井沢町
陸上競技投擲熊谷スポーツ文化公園陸上競技場
付帯投てき場
北緯36度9分51.1秒 東経139度24分48.7秒埼玉県熊谷市
ボート戸田公園戸田漕艇場
および国立戸田艇庫
北緯35度48分6.6秒 東経139度40分37秒埼玉県戸田市
カヌー木場潟カヌー競技場北緯36度21分51.2秒 東経136度26分51.8秒石川県小松市
サッカージャパンフットボールヴィレッジ北緯37度14分39.8秒 東経141度0分7.4秒福島県双葉郡楢葉町広野町
自転車日本サイクルスポーツセンター北緯35度0分33.6秒 東経139度0分42.4秒静岡県伊豆市
ライフル射撃埼玉県長瀞総合射撃場北緯36度7分42.7秒 東経139度5分50.8秒埼玉県秩父郡長瀞町
クレー射撃神奈川県立伊勢原射撃場北緯35度25分17.8秒 東経139度17分04秒神奈川県伊勢原市
セーリング和歌山マリーナ北緯34度9分20.1秒 東経135度10分33.1秒和歌山県和歌山市
アーチェリーつま恋リゾート「彩の郷」北緯34度45分49.9秒 東経138度2分15.1秒静岡県掛川市
馬術御殿場市馬術・スポーツセンター北緯35度19分57.2秒 東経138度52分48.5秒静岡県御殿場市
ホッケー川崎重工ホッケースタジアム北緯35度23分6.8秒 東経136度51分41.6秒岐阜県各務原市
高地トレーニング蔵王坊平アスリートヴィレッジ北緯38度7分26.8秒 東経140度23分35.5秒山形県上山市
飛騨御嶽高原高地トレーニングエリア北緯36度0分5.1秒 東経137度31分58.2秒岐阜県高山市下呂市
その他(テコンドー羽島市防災ステーション岐阜県羽島市

問題点 編集

  • 文部科学省の管轄下にあるため、当初は厚生労働省の管轄である障害者スポーツではトップレベル競技者であっても特例を除いて基本的に中核拠点NTCが使用出来なかった[11]。その後2014年度から障害者スポーツが文部科学省へ移管され、2015年度に設置されたスポーツ庁でスポーツ行政の関係機構が一本化され、鈴木大地初代スポーツ庁長官が2016年10月に示したオリパラ一体化政策「鈴木プラン」の一環としてパラスポーツ仕様のトレーニング施設整備が打ち出され[12]、2019年にパラスポーツ・バリアフリー化に対応した拡充棟「屋内トレーニングセンター・イースト」が開設された事により障害者スポーツへの問題点は解消されている。
  • ドーム社長の安田秀一は、NTC制度を含む莫大な公的補助による五輪選手育成の制度について「金メダルを税金で取る政策の理由を説明することはできない」として懐疑的な意見を表明している[13]
  • ボブスレー・リュージュの競技別強化拠点に指定されている長野市ボブスレー・リュージュパークにおいては、NTC指定に伴いイベント開催やレジャー施設への転用といった一般利用が制限されそり競技のマイナーさに起因する低利用率による低収益と相まって経営難となり、2017年度をもって主機能である製氷コース運営をとりやめている[14]

脚注 編集

  1. ^ a b c 【日本スポーツ振興センター】NTC屋内東館が開所 パラリンピック選手の利便性向上へ - 建設通信新聞2019年9月11日
  2. ^ a b お知らせ看板情報<ナショナルトレーニングセンター拡充棟(仮称)新営その他工事> - 建設データバンク
  3. ^ a b インサイド:障害者スポーツの現場から パラリンピックを前に/2(毎日新聞 2012年8月22日)
  4. ^ a b c d e <東京2020>五輪・パラリンピック強化新拠点 NTC拡充棟 高みへ共に励む - 東京新聞2019年8月27日
  5. ^ a b 2019年8月22日中日新聞朝刊22面NTC拡充棟公開
  6. ^ <新型コロナ>五輪トレセン閉鎖 来月6日まで 選手一時退去 - 東京新聞2020年4月9日朝刊
  7. ^ ナショナルトレーニングセンターなど 27日から利用再開 - NHK NEWS WEB(2020年5月26日)
  8. ^ 22日から代表合宿再開、7月初旬にもダブルス練習開始へ/卓球 - iza(2020年6月7日)
  9. ^ a b c NTCの新名称は「味の素ナショナルトレセン」に(産経新聞 2009年5月11日)
  10. ^ a b c ~国立施設として日本初のネーミングライツ導入~
    「味の素ナショナルトレーニングセンター」
    「JOCゴールドパートナー」契約も併せて締結
    (味の素 2009年5月11日)
  11. ^ スポーツ、祭典で見えた課題 識者に聞く(日本経済新聞 2012年10月11日)
  12. ^ 競技力強化のための今後の支援方針(鈴木プラン) - スポーツ庁
  13. ^ ガラパゴスからの脱却 五輪はきっかけになるか ドーム社長 安田秀一 ルールに「従う側」(下) - 日本経済新聞2019年12月26日
  14. ^ 長野五輪の遺産「スパイラル」休止に学ぶ教訓 - 東洋経済ONLINE 2019年5月23日

関連項目 編集

外部リンク 編集