アリカンテ県

スペインの県

アリカンテ県(アリカンテけん、スペイン語 : Provincia de Alicante)またはアラカント県バレンシア語Província d'Alacant)は、スペインバレンシア州。県都はアリカンテ。スペイン語名とバレンシア語名が優劣の差なく公式名であり、両言語名をスラッシュで区切ってAlicante/Alacantと表記されることがある。

アリカンテ県
アリカンテ県の旗アリカンテ県の紋章
アリカンテ県の位置
アリカンテ県の位置
 バレンシア州
県都 アリカンテ
公用語バレンシア語カスティーリャ語
議会
 • 上院
 • 下院
 • 州議会

4議席
12議席
35議席
面積
 • 総計
 • スペイン国内の%
 • 順位

5,816.53km2[1]
1.16%
41位
人口(2017年)
 • 総計
 •スペイン国内の %
 • 人口密度
 • 順位

1,825,332人
4.11%
334.23人/km2
5位
自治体数126
住民の呼称alicantino/-a
郵便番号03
ISO 3166-2ES-A
県議会公式ページ
スペインの県 スペインの旗

地理 編集

アリカンテ県の地勢

北側はバレンシア州バレンシア県、南側はムルシア州、西側はカスティーリャ=ラ・マンチャ州アルバセーテ県に接しており、東側は地中海に面している。アリカンテ県北東部の地中海岸にはナウ岬英語版があり、アリカンテ県南端のすぐ南側にはマール・メノールがある。

山地 編集

北西部は山地が広がるが、地中海沿岸や南部には平地が広がる。山地はスブベティコ山系の一角にあたり、アイタナ山英語版(1558m)、カンパーナ峰英語版(1410m)、モントカブレール山英語版(1389m)、カラスカール・デ・ラ・フォント・ロハ山(1354m)、マイグモー山塊(1296m)、クレビリェント山地英語版(835m)、モントゥゴー山塊英語版(753m)などがある。

水文 編集

乾燥した気候であり降水量が少なく、大規模な河川は存在しない。通常時には水が流れていないランブラ(涸れ川)が多く、これらの河川では豪雨の際にのみ水が流れる。

ベニアレス貯水池から北東に向かってガンディア付近で地中海にそそぐヒローナ川英語版アルコイ近くから北東に向かって流れるセルピス川英語版アルテア付近で地中海にそそぐアルガル川英語版、アマドリオ貯水池を持ちビジャホヨーサ/ラ・ビラ・ホヨーサ付近で地中海にそそぐアマドリオ川英語版、内陸部のビリェーナ近郊を通るがエルチェに至る前に水流がなくなっているビナロポ川英語版ムルシア州ムルシアなどを流れた後にオリウエラを通って地中海に至るセグラ川などがある。

地中海沿岸にはエル・フォンド自然公園英語版などの湿地がある。アリカンテ県南部には多数のラグーンがあり、マタ塩湖とトーレビエハ塩湖はまとめてマタ湖・トーレビエハ湖自然公園英語版に指定されている。

気候 編集

アリカンテ県の大部分はステップ気候であり、年降水量は300mmを下回る地域が多い。長い夏季はとても暑く乾燥しており、冬季は涼しい。北東部のナウ岬周辺などは、半乾燥性気候より穏やかな地中海性気候である。アリカンテ県に卓越する植生は、タイムビャクシン属などの灌木である。

人口 編集

地中海に面するアリカンテ
内陸部にあるエルチェ

2017年の人口は1,825,332人であり、これはスペイン全体の4.11%を占めている。人口はスペインの50県中第5位である。人口自体は州都バレンシアがあるバレンシア県を下回るが、人口密度はバレンシア県を上回っている。人口が集中する都市はあるものの、ある程度はまんべんなく分散している。


アラカント県 / アリカンテ県の人口推移 1900-2010
出典:INE(スペイン国立統計局)1900年 - 1991年[2]、1996年 - [3]

歴史 編集

1833年スペイン地方行政区分再編ではスペイン全土に49のが設置された。この際にアリカンテ県も設置され、県都はアリカンテに定められた。

1939年から1975年のフランコ独裁体制化を経て、スペインの民主化英語版移行期の1970年代末から1980年代初頭にはスペイン全土に17の自治州が設置された。1982年7月10日にはアリカンテ県など8県からなるバレンシア州が発足した。

行政区画 編集

主な自治体 編集

県内には126のムニシピオ(基礎自治体)があり、9のコマルカ(郡)に分けられる。地中海岸には北からガンディアデニアハベア/シャビアベニドルムビジャホヨーサ/ラ・ビラ・ホヨーサ、県都アリカンテトーレビエハなどの自治体がある。山地が広がる北西部の内陸部にはアルコイビリェーナエルダスペイン語版があり、平地が広がる南部の内陸部にはエルチェオリウエラがある。

順位基礎自治体公式名人口
(2012年)[3]
1アリカンテAlacant / Alicante334,678人アラカンティー
2エルチェElx / Elche230,587人バッジ・ヴィナロポー
3トレビエハTorrevieja103,720人ベガ・バッハ・デル・セグーラ
4オリウエラOrihuela90,087人ベガ・バッハ・デル・セグーラ
5ベニドルムBenidorm72,991人マリーナ・バッハ
6アルコイAlcoi / Alcoy60,837人ラルコイアー
7サン・ビセンテ・デル・ラスペイグSan Vicente del Raspeig / Sant Vicent del Raspeig55,100人アラカンティー
8エルダスペイン語版Elda54,536人メディオ・ビナロポー
9デニアDénia / Denia44,455人マリーナ・アルタ
10ビリェーナVillena34,894人アルト・ビナロポー

コマルカと自治体 編集

コマルカ(郡)構成自治体(太字は中心となる自治体)
ラルコイアーアルコイバニェーレス・デ・マリオーラベニファリムカスタージャイビオニルペナギラティビ
コムタアグレスアルコレージャアルコセール・デ・プラーネスアルファファーラアルムダイナラルケリーア・ダズナールバローネスベナサウベニアレスベニジョーバベニジュップベニマルフルベニマソットコセンタイナファジェーカファモルカガイアーネスゴルガロルチャミジェーナムーロ・ダルコイプラーネスクアトレトンデータトジョス
マリーナ・アルタアドスビアアルカラリーベニアルベッチベニドレッチベニジェンブラベニメーリベニーサカルプカステイ・デ・カステイスデニアガタ・デ・ゴルゴスリーベルムルラオンダーラオルバパルセントペドレゲールペゴエル・ポブレ・ノウ・デ・ベニアチェイエルス・ポブレッツエル・ラフォル・ダルムニアサグラサネート・イ・ネグラルスセニージャテウラーダトルモスラ・ヴァル・ダルカラーラ・ヴァル・デボラ・ヴァル・デ・ガジネーララ・ヴァル・デ・ラグアールエル・ヴェルジェールシャビアシャロー
マリーナ・バッハラルファズ・デル・ピアルテアベニアルダーベニドルムベニファートベニマンテイボルージャカジョーザ・デン・サリアーコンフリーデスフィネストラートエル・カステイ・デ・グアダレストラ・ヌシアオルシェータポロプレジェウセージャタルベナラ・ビラ・ジョイオーザ
アルト・ビナロポーベネイシャーマビアールエル・カンプ・デ・ミラカニャーダサリーナスサクスビリェーナ
メディオ・ビナロポーアルゲーニャアスペエルダエル・フォンドー・デ・レズ・ネウスオンドン・デ・ロス・フライレスモンフォルテ・デル・シッドモノーヴェルノヴェルダペトレールエル・ピノースラ・ロマーナ
バッジ・ヴィナロポーCrevillent、エルチェ、Santa Pola
アラカンティーAgost、Aigües、アリカンテ、Busot、El Campello、Mutxamel、Sant Joan d'Alacant、サン・ビセンテ・デル・ラスペイグ、Torremanzanas / La Torre de les Maçanes、Jijona/Xixona
ベガ・バッハ・デル・セグーラAlbatera、Algorfa、Almoradí、Benejúzar、Benferri、Benijófar、Bigastro、Callosa de Segura、Catral、Cox、Daya Nueva、Daya Vieja、Dolores、Formentera del Segura、Granja de Rocamora、Guardamar del Segura、Jacarilla、Los Montesinos、オリウエラ、Pilar de la Horadada、Rafal、Redován、Rojales、San Fulgencio、San Isidro、San Miguel de Salinas、トレビエハ

社会 編集

交通 編集

1967年にはアリカンテとエルチェの中間付近に、アリカンテ=エルチェ空港が開港した。コスタ・ブランカ英語版への観光客などが利用しており、年間旅客数は1000万人近くに達している。旅客数はバレンシア空港をしのいでバレンシア州最多であり、スペイン全体ではアドルフォ・スアレス・マドリード=バラハス空港バルセロナ=エル・プラット空港パルマ・デ・マヨルカ空港マラガ=コスタ・デル・ソル空港などに次ぐ規模である。旅客便の80%は国際線であり、イギリスドイツオランダからの旅客数が多い。

もっとも規模の大きな港湾はアリカンテ港英語版であり、特にクルーズ船の寄港地として知られている。アリカンテ港からはアフリカ大陸アルジェリアオランアルジェに向けて、アルジェ・フェリーズ英語版による定期便が運行されている。その他にも大小25以上の港湾があり、漁港ヨットハーバーの機能を兼ねている港湾が多い。デニア港からはバレアレス諸島イビサ島マヨルカ島パルマ・デ・マヨルカ)に向けて、サンタ・ポーラ港やトーレビエハ港からはサンタ・ポーラの沿岸5㎞にあるタバルカ島スペイン語版に向けて定期便が運行されている。

教育 編集

アリカンテ大学

アリカンテ県には2つの公立大学(州立大学)、1つの私立大学、1つの高等工科学校がある。1552年にはバレンシア王国バレンシア大学に次ぐ2番目の中世大学としてオリウエラ大学スペイン語版が設立されたが、スペイン王国フェルナンド6世の治世の1835年に閉鎖されている。

スペインの民主化以降期の1979年には、アリカンテ県初の公立大学としてアリカンテ大学が設立された。アリカンテ大学はアリカンテの北部郊外のサン・ビセンテ・デル・ラスペイグに広大なキャンパスを有し、50以上の専攻で30,000人以上の学生が学んでいる。1996年にはエルチェエルチェ・ミゲル・エルナンデス大学が設立され、約19,000人の学生が学んでいる。エルチェにあるメインキャンパスのほかに、オリウエラアルテアサン・ジョアン・ダラカント英語版にも小規模なキャンパスを有する。

カトリック系の私立大学として、1999年にはエルチェにCEUカルデナル・エレーラ大学英語版が設立された。マドリードCEUサン・パブロ大学バルセロナアバト・オリーバCEU大学英語版と同系列である。アルコイにはバレンシア工科大学に付属するアルコイ高等工科学校スペイン語版(バレンシア工科大学アルコイキャンパス)がある。アリカンテ県にまだ大学が存在しない1964年に開校した高等工科学校である。

脚注 編集