養子縁組をする方法

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国内の子どもがいない夫婦は増えていて、結婚持続期間15~19年の夫婦を対象とした調査の2015年のデータでは6.2%となっています。[1] 1977年では3%ですから、倍以上になったということです。子どもがいないのには、いろいろな理由が考えられますが、「欲しいけれどできないから」というケースも少なくはなく、それを理由に挙げる夫婦は23.5%にも及びます。[2] 子どもがいないことを問題と考える夫婦にとって、その解決策の一つに養子縁組がありますが、それほど多いことではなく、経験者や知識がある人の話を聞きたくても、なかなか聞けないのが現状でしょう。そこで、ここでは養子縁組する方法を紹介します。

パート 1
パート 1 の 4:

養子縁組を見直す

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    養子縁組の基本を知る 養子縁組とは具体的な血縁関係とは関係なく、法律上の親子関係を成立させる制度です。養子縁組による親を養親といい、子を養子といいます。養親(ようしん)と同じような立場に里親がありますが、養子縁組と里親制度は性質が異なり、里親制度の里親には法的な親子関係はありません。
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    養子縁組の種類を知る 養子縁組には「普通養子縁組」と「特別養子縁組」の二つの種類があります。普通養子縁組は養⼦が戸籍上は実親との親⼦関係を存続したまま養親との親⼦関係をつくる養⼦縁組で、特別養子縁組は養子が⼾籍上も実親との親⼦関係をなくす養子縁組です。
    • 普通養子縁組の目的は主に「家」の存続や親のため、特別養子縁組の目的は主に子どもの福祉や利益を図るためです。[3] 普通養子縁組は養子として迎え入れる人の年齢に制限はなく、成年者であれば市区町村への手続きだけで終わるのに対して、特別養子縁組は養子として迎え入れる人の年齢は原則として15歳未満で、6カ月以上の監護(監督して保護すること)の期間が必要です。
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    国内の養子縁組の現状を知る 生みの親のもとで育つことができない子どもたちは約45,000人いるとされています。それに対して厚生労働省のデータ(2015年)によると未成年養子の養子縁組の成立件数は1,223件です。この数字は、欧米にくらべると、かなり少ないものです。[4]
    • 養子縁組の成立件数を人口比で見ると、日本は0.001%、ドイツは0.005%、フランスは0.006%です。海外の状況や国内の生みの親のもとで育つことができない子どもの数、また、特別養子組の数が増えていることからなどから、国内の養子縁組の数は増えていくことが予想されます。
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パート 2
パート 2 の 4:

養子を迎える準備をする

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    養子縁組をあらためて考える 養子縁組は養親、養子ともに、その後の人生を大きく左右します。いろいろな要素を考えたうえで判断しましょう。たとえば経済面は十分に考慮したい要素の一つで、養子縁組の手続き自体は、それほど費用はかかりませんが、子どもを育てるには学費や生活費など、多くの費用がかかります。
    • 普通養子縁組は、手続き費用として養子1人あたり800円の収入印紙や、予納郵券(裁判所から書類を送ってもらうための切手)を買うための料金がかかります。[5] また、特別養子縁組を結ぶために民間のあっせん事業者を利用する場合は費用がかかり、事業者が養親希望者から受領した金額は27,000~2,876,000円となっています(金額の幅が大きいのが現状です)。[6]
    • 一人の子どもの出産から大学卒業までの総費用については、食費やお小遣いなどの基本的な養育費が1,640万円で、それに加えて学費がすべて公立でも2,985万円がかかるというデータがあります。[7]
    • 養子縁組には養子がコンプレックスを抱いたり、実子や親族から財産目当てなどと思われてしまうなどのリスクもあります。[8]
    • 養子縁組をすると、養子の名字は養親と同じものになります。
    • 普通養子縁組では養子縁組後の相続は実の親が亡くなったときと、養親がなくなったときのどちらにも発生します。
    • 普通養子縁組では養子は養親の戸籍に入れる際に戸籍に養子縁組の事実が記載されます。一方、特別養子縁組では戸籍を見ても養子であることがわからないようになっています。
    • 養子縁組の解消については普通養子縁組は可能、特別養子縁組は原則として不可となっています。
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    養親になるための条件を知る 養親になるためには、法律で決められている条件を満たす必要があります。たとえば年齢について普通養子縁組は成年者(20歳以上)、特別養子縁組は原則として25歳以上(夫婦の一方が25歳以上であれば、もう一方は20歳以上で可)とされています。
    • 普通養子縁組の養親の年齢以外の条件には「子が養親者より年上ではないこと」などがあります。
    • 特別養子縁組の養親の年齢以外の条件には「養子の年齢は原則15歳未満」「実親の同意」「実親の育児が不適切など子の利益のために特別の必要があると認められるとき(この判断は家庭裁判所が行います)」「夫婦共同で養親になること」などがあります。
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    いろいろなケースの養子縁組を知る 2020年6月現在、国内では同性の結婚は認められていませんが、同性のカップルが養子縁組をすることは可能で、実例もあります。[9] ただし、それは普通養子縁組のみで、特別養子縁組は「夫婦共同で養親になること」が条件の一つであるため同性カップルは不可となっています。また、外国籍の人と結婚していて養子を迎えたい、外国籍の子どもを養子にしたいなど外国籍の人が関係する場合は、関係者する人の国籍がある国の法律も関係します。
    • 同性カップルが普通養子縁組をする場合も、手続きは異性カップルと同じです。
    • 二人で同じ戸籍に入れる、二人で一緒に住む家を探しやすくなるなどの理由で、カップルのうちの年下のほうが養子になる同性カップルもいます。[10]
    • 外国籍の人が関係する場合は手続き等が複雑になるため、弁護士に相談したほうがよいことも少なくありません。たとば外国籍の人を養子にしても、養子の年齢によっては、その人が日本で暮らせる在留資格を得ることにはなりません。[11]
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パート 3
パート 3 の 4:

普通養子縁組をする

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    普通養子縁組の手続きの違いを知る 普通養子縁組は養子として迎えようとしている人が未成年者の場合とそうでない場合では手続きが異なります。未成年者の場合は家庭裁判所の許可が必要です。
    • 家庭裁判所の許可を得てからの手続きは対象が未成年の場合も、そうでない場合も共通しています。
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    養子が未成年者の場合は家庭裁判所の許可を得る 家庭裁判所の許可を得るには養子縁組許可申立書(もうしたてしょ)を養子として迎え入れようとしている人の住所の家庭裁判所に提出して許可を得ます。
    • 養子縁組許可申立書は最高裁判所の公式サイトからPDFデータをダウンロードできます。[12]
    • 家庭裁判所には養子縁組許可申立書のほかに、申立人(養親)の戸籍謄本、養子の戸籍謄本、未成年者が15歳未満の場合は代諾者(法定代理人)の戸籍謄本(全部事項証明書)を提出します。[13] なお、費用として養子一人につき800円の収入印紙と予納郵券(裁判所から書類を送ってもらうための切手)が必要です。
    • 養子縁組許可申立書を受理したあと、家庭裁判所では、当事者の事情を知るために養子、実親などの養子の親権者、養子の未成年後見人の陳述を聴取します。当事者は家庭裁判所で質問を受けたり、場合によっては生活環境確認のために住居を訪問されることもあります。
    • 家庭裁判所が、その養子縁組が養子にとって妥当と判断すると養子縁組を許可する審判が下され、養子縁組許可審判書が交付されます。
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    市区町村で普通養子縁組の手続きをする 手続きをできるのは養子縁組の当事者である養親または養子です(ただだし養子が15歳未満のときは代諾者による届出が必須)。手続きをする場所は、養親または養子の本籍地または所在地の市区町村の戸籍係(代諾者による届け出は、その所在地の市区町村の戸籍係)です。
    • 手続きでは養子縁組届け(養子縁組届の証人として成人2名による証人欄への記入および署名押印が必要、かつ養子が15歳未満で親権者である父母のほかに監護者がいる場合はその人の同意の記載も必要)、届出人の印鑑、届出人の本人確認書類(運転免許証など)、養子となる人が未成年者の場合は家庭裁判所の養子縁組許可審判書の謄本、後見人が被後見人を養子とする場合は家庭裁判所の許可書の謄本、養親または養子となる人に配偶者がいる場合は配偶者の同意書(配偶者とともに届出する場合は不要)などが必要です。また、市区町村によってはマイナンバーカードが必要なこともあるので、該当の市区町村の公式サイトなどで確認しましょう。[14]
    • 基本的には普通養子縁組は養親となる者と養子となる者との合意に基づく届出だけで成立します。[15]
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パート 4
パート 4 の 4:

特別養子縁組をする

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    慎重に判断する 特別養子縁組をすると、養子は実親の財産を相続する権利や、実親から扶養を受ける権利がなくなります。将来も含めて、それが養子のためになるのか、じっくりと考えたうえで判断しましょう。
    • 特別養子縁組をするのは、身寄りがない子どもを養子とするケースや親が育てることができない親戚の子どもを引き取るケースなどがあります。
    • 特別養子縁組は実親の反対などにより認められないこともあり、その数は2014~2015年の2年間で217件でした。[16]
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    特別養子縁組の許可を得る 特別養子縁組の手続きは家庭裁判所で行います。具体的には、まず養親(あるいは児童相談所長)が、自分の居住地を管轄する市区町村の家庭裁判所に申立てをします。申立てには特別養子適格(適格とは定められた資格にかなっていること)と特別養子縁組成立に関する書類が必要です。
    • 特別養子適格に関する書類としては特別養子適格の確認申立書と標準的な申立添付書類(養子となる者の戸籍謄本と養子となる者の実父母の戸籍謄本)、特別養子縁組成立に関する書類としては特別養子縁組成立申立て書と標準的な申立添付書類(養親となる者の戸籍謄本)などがあります。
    • 特別養子縁組は監護の期間があるのも普通養子縁組と違う点です。養親となる人が家庭裁判所に申立てしたから一定期間(6カ月以上)は監護の期間として様子を見ることになっています。
    • 監護の期間がすぎてから家庭裁判所が特別養子縁組を認めると特別養子縁組が成立します。養子は養親の名字となり、実親との親族関係が終了します。
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    戸籍を変更する 戸籍の変更は家庭裁判所では行ってくれないため、審判確定の日から10日以内に届出人の本籍地または所在地の市区町村役所に特別養子縁組届の届出をします。
    • 基本的に市区町村役所への届出には特別養子縁組届書、戸籍全部事項証明書、届出人の印鑑、家庭裁判所の審判書の謄本および確定証明書が必要です。市区町村によって異なることもあるので、詳しくは届出をする市区町村の公式サイトなどで確認しましょう。
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    専門機関のあっせんで特別養子縁組をする 「対象の子どもは今はいないけれど、身寄りのない子どもを特別養子縁組をして親として育てたい」という場合は、児童相談所や民間の専門機関にあっせんをしてもらうという方法があります。
    • 児童相談所は児童福祉の専門機関で各都道府県に設けられています。
    • 児童相談所に養子縁組里親の相談をすると、研修・調査を経て、養子縁組里親に登録されます。[17] 登録後の次のステップは、養子縁組里親としての子どもを養育で、児童相談所が紹介した子どもと3~4か月程度の交流をします。そして、児童相談所が里親の意思や子どもの状況などを総合的に判断して養育の委託の可否を決定し、可能と判断されたら6カ月程度養育します。そこで問題がなければ、家庭裁判所に申立てをして特別養子縁組許可を得ます(家庭裁判所への申立て以降の流れは上記の「特別養子縁組の許可を得る」と同様です)。
    • 特別養子縁組をあっせんする民間の機関は全国各地にあり、なかでも国の許可を得た機関が安心です。[18] 手順や費用は機関によって異なるので、まずは公式サイトで確認するとよいでしょう。
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ポイント

  • 養子縁組には普通養子縁組と特別養子縁組があり、とくに実親との関係を断ち切る特別養子縁組は審査に時間がかかり、民間のあっせん機関に依頼すると費用もかかります。慎重に判断しましょう。
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注意事項

  • 養子縁組は当事者だけではなく、親戚などの周りの人も関係するので、周囲と相談のうえ、決めたほうがよいことが少なくありません。
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このHow.com.vn記事について

How.com.vnは「ウィキ」サイトの一つであり、記事の多くは複数の著者によって共著されています。 この記事は、著者の皆さんがボランティアで執筆・推敲を行い、時間をかけて編集されました。 この記事は1,148回アクセスされました。
カテゴリ: 子供
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