発達障害の子どもを育てる方法

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2012年の全国の公立小中学校で約5万人を対象にした調査によると、「発達障害の可能性がある」とされた児童生徒の割合は6.5%でした。[1] つまり、およそ15人に一人は発達障害の可能性があり、少なくてもクラスに一人は、そのような生徒がいるということになります。しかも、この調査は通常学級に通う児童生徒を対象にしているため、特別支援学校などに通っている発達障害児・知的障害のある子などはデータから除かれています。発達障害は身近な存在で、その育て方に悩んでいる親は少なくありません。そこで、ここでは適切に発達障害の子どもを育てる方法を紹介します。

パート 1
パート 1 の 3:

発達障害を理解する

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    発達障害の基本を理解する まずは発達障害とはどのようなものか、あらためて理解を深めましょう。発達障害とは、生まれつき脳の発達に障害があることの総称です。多くの場合、小さい頃から症状が現れ、その症状は人とのコミュニケーションに問題がある、落ち着きがないなど、人によってさまざまです。[2]
    • 発達障害は自閉スペクトラム症、注意欠陥・多動性障害、学習障害、チック障害、吃音(症)などに分類されます。なかには、複数のタイプの発達障害があることも少なくありません。
    • 自閉スペクトラム症は自閉症、高機能自閉症、アスペルガー症候群の総称です。英語では「Autism Spectrum Disorder」と表記され、略してASDとも呼ばれます。対人関係が苦手、強いこだわりといった特徴があり、子どもの約20~50人に1人が該当するといわれています。男女比は男性のほうが多く、女性の約2~4倍とされています。
      • 自閉スペクトラム症には言葉の遅れ、知的障害、こだわりという要素があり、自閉症は、そのすべてが該当します。また、高機能障害は言葉の遅れ、こだわり、アスペルガー症候群はこだわりだけが該当します。[3]
    • 注意欠陥・多動性障害は英語では「Attention Deficit Hyperactivity Disorder」と表記され、そこからADHDとも呼ばれます。主な特徴は、年齢に見合わない不注意さ、好きなこと以外に対する集中力がなくて、ほとんど関心や興味を示さない多動性、思いついたことをよく考えずに即座に行動に移してしまう衝動性などです。状況に応じて柔軟に対応するのが苦手で、ミスや不注意が他の人とくらべて目立ちやすく、日常生活に支障をきたすおそれがあります。[4]
    • 学習障害は英語では「Learning Disability」と表記され、そこからLDとも呼ばれます。知的な遅れや視聴覚の障害がなく、教育環境も整っていて本人の努力にも問題がないにもかかわらず、読み書きや計算などの特定の領域で学習の遅れがみられる状態をいいます。
    • チック障害はチック症ともいい、運動性チック症、音声チック症があります。症状としては本人の意思とは関係なく、まばたきなどの体の一部の速い動きや咳払いなどの発声を繰り返すといった状態が一定期間、続きます。一時的に出現して2~3カ月で消えていく場合と、軽くなったり重くなったりして何年か続く場合があるとされています。[5]
    • 吃音(症)は、いわゆる「どもり」のことで、話し言葉が滑らかに出ない発話障害です。幼児期に発症する場合がほとんどで、男性に多くみられます。7~8割くらいが自然に治るといわれていますが、成人でも吃音の症状がある人も少なくはありません。[6]
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    発達障害の現状を理解する 発達障害の子どもは増えています。例えば、通級(日本の義務教育における特別支援教育の制度の一つで通常の学級に在籍していながら個別的な特別支援教育を受けることのできる制度)による指導を受けている子どものなかで、注意欠陥・多動性障害は2006年から2013の間で約6.3倍にもなっています。[7] 発達障害は社会問題ととらえられていて、国も発達障害支援法などで発達障害の子どもがいる家庭のサポート体制の整理に取り組んでいます。[8]
    • 発達障害支援法は2004年12月に成立し、翌年4月に施行されました。国が本格的に取り組むようになってからの歴史は2000年に入ってからと浅く、今後、ますます充実していくことが期待されています。
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    発達障害のサポート体制を理解する 発達障害の子どもがいる家庭をサポートしてくれる代表的な施設は発達障害者支援センターです。発達障害者支援センターの窓口は地方自治体ですが、そこから委託された事業所でも相談を受け付けています。[9]
    • 発達障害者支援センターは専門家が家族の相談を受ける相談支援、発達のサポートをする発達支援、就労の情報を提供してくれる就労支援などをしてくれます。
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パート 2
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発達障害に気づく

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    気づきの傾向を知る 適切に育てるために、自分の子どもが発達障害かどうかを把握することは大切です。ただ、子どもの発達障害は判断が難しく、気づかないことも少なくはありません(反対に発達障害ではないのにそうではないかと疑ってしまうこともあります)。とくに3歳くらいまでは、保育園に通っている場合は保育士から指摘を受けて医療機関にかかり診断を受ける場合がほとんどとされています。[10]
    • とくに核家族での初めての子どもの場合は、一般的な子どもの成長の様子を知る経験が少ない(経験者が周りにいない)ため、判断が難しい傾向があります。
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    自分で子どもの発達障害に気づく 発達障害の子どもの特徴には、会話が成立しないことや視線の向け方が不自然であることなどがあります。また、子どもが母親から離れることに必要以上に不安な様子を見せたり、他の子どもとうまく遊べない場合なども発達障害の可能性があります。
    • 子どもが一方的に欲求を伝えるだけであったり、相手が言った言葉を繰り返すのも発達障害の可能性があります。
    • 落ち着きがなく、スーパーなどですぐにどこかに行ってしまったり、手をひらひらさせるなどの感覚欲求が激しい場合も発達障害の可能性があります。
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    周りが発達障害に気づくポイントを知る 子どもと接する機会が多い保育士がどのような事項から発達障害をチェックするのかも理解しておきましょう。保育所・学童保育における気づきのポイントには、①人との関わり方・コミュニケーション、②イマジネーション・想像性、③注意・集中、④感覚、⑤運動、⑥学習、⑦情緒・感情などがあります。以下のような傾向に注意してみましょう。[11]
    • 人との関わり方・コミュニケーション:ひとり遊びが多い、一方的でやりとりがしにくい、話が上手で難しいことを知っているが一方的に話すことが多いなど
    • イマジネーション・想像性:相手にとって失礼なことや相手が傷つくことを言ってしまう、友だちがふざけてやっていることをいじめられたと思ってしまうなど
    • 注意・集中:落ち着きがない、一つのことに没頭すると話しかけても耳に入らないなど
    • 感覚:音に敏感ですぐに耳をふさぐ、靴下をいつも脱いでしまうなど
    • 運動:極端に不器用、身体がクニャクニャとしていることが多いなど
    • 学習:難しい漢字を読むことができるのに簡単なひらがなが書けないなど
    • 情緒・感情:極端な怖がり、すぐにパニックになるなど
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    専門機関に診断してもらう 発達障害の子どもは周りの子どもとは少し違う特徴があるため、他の子どもにいじめられたり、自分は変な子なのかと悩んでいる可能性があります。また、親自身はもちろん、保育士も発達障害であることがわかると、より適切な対応をしやすくなります。発達障害の可能性があったら、すみやかに専門機関に診てもらいましょう。
    • 発達障害の診断・対応が可能な病院などの専門機関は「○○市(住まいの地域) 発達障害 診断」で検索すると見つけることができます。
    • 専門機関では専門家によるエピソード聴取や数種類の自己記入式テストなどを実施して、その子どもが発達障害かどうかを判断します。
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パート 3
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発達障害の子どもを育てる

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    専門機関と協力する 発達障害の子どもの育て方に絶対的な正解はなく、基本的には専門家と相談しながら、子どもの性格や状況に応じて適切な育て方を見つけていくことになります。具体的には状況に応じて生活リズムを整える工夫をしたり、必要に応じて薬を使用するなどして治療をしていきます。[12]
    • 発達障害は、年齢とともに落ち着いてくることはあるものの根本から治すことは難しいとされています。治療は困っていることへの対応が中心になります。
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    早い段階で対応する 子どもの心は不安定です。発達障害の子どもへの対応は、できるだけ早いほうがよく、そうすることによって自尊感情(自分自身を価値ある者だと感じる感覚)の低下や劣等感の強まりなどの心理面の問題、不登校や周囲の大人への反抗的な言動などの行動面の問題を予防することができると考えられています。[13]
    • 発達障害の子どもへの対応は10歳までが鍵となるという考え方もあります。[14]
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    受け入れて環境を整える 発達障害の子どもは豊かな才能を秘めていることがあります。エジソンやモーツァルトといった歴史に名を残す偉人も発達障害で、その才能を開花させたのは、保護者をはじめとする周囲の人が子どものありのままの姿を受け入れ、好きなこと(得意なこと)に没頭できる環境を整えたからといわれています。[15] 子どもの明るい未来のために、そのような子育ての姿勢を見習うことも大切です。
    • 精神障害や知能障害を持ちながら、特殊な計算能力や、並外れた記憶力など、ごく特定の分野に突出した能力を発揮する人や症状をサヴァン症候群といいます。[16] サヴァン症候群は発達障害にともなって見られることが多いとされています。
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    自閉スペクトラム症の子どもを育てる 発達障害のなかでも、もっとも症例が多いとされる自閉スペクトラム症の子どもの育て方のポイントの一つは、長所を伸ばすように接することです。不得意な分野を訓練するのではなく、得意な分野を伸ばすことに力を入れるようにします。[17]
    • 自閉スペクトラム症の子どもは、周りに合わせることが苦手なことが少なくありません。学校などの集団生活では、それがいじめの原因になることもありますが、いじめられることがないように環境を整えてあげることも大切です。
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    注意欠陥・多動性障害の子どもを育てる 自閉スペクトラム症と並んで多いとされている注意欠陥・多動性障害の子どもの育て方のポイントの一つは、問題が生じにくい環境をつくることです。例えば、何をどのような手順でおこなうのか、どうなったら終わりなのかなどを子どもに示してから、課題に取り掛かってもらうとよいでしょう。
    • 子ども自身が自らの行動を統制するスキルや他人との協調性を身につけやすくすることを目的に薬を使う治療法もあります。
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ポイント

  • 発達障害は、脳機能(認知)の障害です。育て方やしつけが原因でもなく、精神疾患でもないことを理解しましょう。[18]
  • 発達障害は虫垂炎(盲腸)のように手術をすれば完治するというものではありません。時間をかけて、日々の暮らしのなかで工夫をしながら育てていくことが大切です。
  • ひと口に発達障害といっても、その症状はさまざまで、なかには大きな問題を抱えることなく就職している人もいます。また、最近は発達障害と診断を受けた人の雇用も増加傾向にあります。[19]
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注意事項

  • 人間には個性があり、周りと少し違っても発達障害ではないこともあります。発達障害かどうかは、自分で判断するのではなく、専門機関に診てもらいましょう。
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このHow.com.vn記事について

How.com.vnは「ウィキ」サイトの一つであり、記事の多くは複数の著者によって共著されています。 この記事は、著者の皆さんがボランティアで執筆・推敲を行い、時間をかけて編集されました。
カテゴリ: 子供
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