犬の前十字靭帯断裂を手術せずに治療する方法

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大腿骨(太ももの骨)と脛骨(すねの骨)をつなぐ強力な靭帯は、前十字靭帯(CCLまたはACL)と呼ばれています。過剰なまたは長期的な負荷がかかることが原因で、前十字靭帯断裂が生じることがあります。また、激しい運動やランニングでも断裂が起こる場合があります。前十字靭帯断裂の症状として、軽い跛行(足を引きずる)や頻発する跛行、不安定な歩行、歩くのを嫌がる、そして膝関節の痛みなどがあります。前十字靭帯を整復するには手術が必要ですが、家庭療法や非外科的治療を行い、前十字靭帯の損傷に伴う一時的な傷みを和らげることができます。

方法 1
方法 1 の 2:

家庭療法を行う

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  1. How.com.vn 日本語: Step 1 手術を回避できる状況を知る 
    前十字靭帯断裂の治療には、手術療法または保存療法のどちらの方法も用いられます。一般的に、このふたつの方法を併用した治療法が犬にとって効果的です。しかし、最適な治療法は、犬の大きさ、身体状態、そして跛行の程度によって異なります。
    • 体重が20kg以下の犬には、手術は最適な治療法ではないかもしれません。
  2. How.com.vn 日本語: Step 2 減量して前十字靭帯断裂を治療する 
    前十字靭帯は、関節に負荷がかかる活動中に、関節を支えて脚を安定に保つ働きをします。靭帯に過度の力がかかるため、肥満は前十字靭帯断裂を招く主な原因のひとつです。そのため、犬の体重を減らすことで、回復を早めることができます。食事療法と運動を併用し、減量に努めましょう。
    • 犬の体重を減らすには、カロリー摂取量を少なくとも60%減らしましょう。
    • カロリー摂取量は急激に減らさずに、食事量を減らして回数を増やし、1日を通して与えましょう。
      • 消化器系の不調を防ぐために、徐々に新しい食事法へ切り替えましょう。そして、体重減少の効果を定期的に確認しましょう。
    • ウォーキングやランニングなどの定期的な運動(激しすぎない)をさせましょう。
      • 炎症を伴う重度の損傷であれば、非ステロイド性抗炎症剤(NSAIDs)を与えて痛みが緩和するまで運動は控えましょう。
      • 前十字靭帯の断裂が著しい場合は、特別なウォーターセラピー(水中ウォーキング・水泳療法)が推奨されています。
    • 獣医師に相談し、飼い犬の症状に基づいた適切な運動リストを入手しましょう。
    • 体重が減少すると膝関節への負担も軽減するため、靭帯の回復も早まります。
  3. How.com.vn 日本語: Step 3 飼い犬の活動を制限する 
    犬に十分な休息をとらせて活動を制限すると、回復を早めることができます。安静にして炎症を抑えることで、身体は自然に快方へ向かいます。飼い犬の活動を完全に制限することを勧める獣医師もいれば、ある程度の運動を勧める獣医師もいます。
    • 飛び跳ねてボールやフリスビーをキャッチする、または車やポーチから飛び降りることは禁物です。
    • 短いリードで歩く練習をしましょう。
  4. How.com.vn 日本語: Step 4 タオルスリングを使う 
    タオルをスリングとして下腹部に当てて犬の体重を支えると、回復が早くなることがあります。市販の歩行補助ハーネス・スリングを使うか、バスタオルや子供の古着のジャケットを使って簡単に手作りすることもできます。
    • バスタオルを利用する場合、大きめのバスタオルを縦半分に切り、犬の下腹部に当てます。そして、タオルの両端を持って上方に引っ張り、犬の歩行を補助しましょう。
    • 市販のアスレチックテープを使うこともできます。
    • 古着のジャケットを使う場合は、犬の下腹部にフィットするように袖を切り落としましょう。
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方法 2
方法 2 の 2:

手術以外の治療法を用いる

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  1. How.com.vn 日本語: Step 1 治療薬を使う 
    非ステロイド性抗炎症剤(NSAIDs)が前十字靭帯断裂の治療に有効な場合があります。抗炎症剤は、経過観察中の関節の痛みを和らげます。前十字靭帯断裂の治療には、異なる種類の非ステロイド性抗炎症剤が使われます。服用量は痛みの程度、体重、そして身体状態によって異なります。
    • 一般的には、オキシカム系(メロキシカム)の非ステロイド性抗炎症剤が使われています。この抗炎症剤は、筋骨格系のさまざまな痛みに広く使用されています。
      • 一般的な服用量は、メロキシカム(商標:Melovet ®-5mg)体重25kgあたり1ml、フィロコキシブ(プレビコックズ®)体重1kgあたり5mg(1日量)、カルプロフェン(リマダイル®)体重1kgあたり4.4mg(1日量)を投与します。
      • 国によって入手可能な薬および薬事法は異なります。
    • 一般的には、低用量かつ短期間の服用は安全で、高用量かつ長期間の投与は副作用が起こる場合があります。
    • 嘔吐、倦怠、鬱、下痢などの副作用が現れたら、薬の投与を中止して獣医師に相談しましょう。
  2. How.com.vn 日本語: Step 2 リハビリテーション(理学療法)を試す 
    理学療法士によるリハビリを行うと、前十字靭帯断裂の回復を早める場合があります。リハビリには、関節可動域訓練(ROM訓練、関節の可動域を維持、拡大する訓練)および関節モビライゼーション(関節をさまざまな振幅でゆっくりと動かし、動きの回復と痛みを軽減する訓練)、水中歩行、カバレッティレール(ハードル)、リードを付けた緩歩などがあります。症状が改善されたら、階段を昇る訓練や座位から立居への切り替え(座ってから立つ)訓練を徐々に行いましょう。
    • 水中ウォーキングや水泳は、犬の筋力を向上させます。
    • 水中歩行器の付いたタブやジェットプールなど、ウォーターセラピーの設備が整った動物病院もあります。
    • 冷凍療法、レーザー治療、神経筋電気刺激(NMES)などの理学療法も効果的です。
  3. How.com.vn 日本語: Step 3 装具を取り付ける 
    膝関節に付ける装具は関節を支える働きをしますが、この治療法の効果についての研究はまだ十分になされていません。膝関節装具を装着する目的は、関節と靭帯を支えて損傷した脚の負担を軽減することです。
    • 装具は大抵の場合、伸縮性のある丈夫な素材で作られており、太ももとすねに被せて装着し、膝関節の不要な動きを制限します。
    • 高齢すぎたり、幼すぎて手術適応外の犬に、膝関節装具が多く使われます。
    • 高額な手術費用が経済的な負担になる場合は、手術の代わりに装具治療を行うこともあります。
  4. How.com.vn 日本語: Step 4 フィジカルセラピーを受ける 
    脚ががある程度の強度を取り戻して運動機能が回復してきたら、靭帯のリハビリのための軽い運動を始めてもよいでしょう。ただし、症状を悪化させる恐れがあるため、次に紹介する運動は、必ず獣医師の許可を得てから行いましょう。理学療法士によるフィジカルセラピーは、手術後の回復を早めるという研究結果があります。ただし、フィジカルセラピーがほとんどの犬にとって、手術に替わる有効的な方法であるということではありません。
    • 座位から立居への切り替え:滑らない床に、膝をできるだけ体に近づけるように犬を座らせます。そして、できるだけゆっくと立ち上がるように指示しましょう。こうすると、損傷した脚に体重がかかります。これを5セット、1日3回実行しましょう。
    • 体重移動:滑らない床に犬を立たせ、損傷した脚に体重がかかるように、骨盤を左右に動かします。最初はあまり負荷をかけずに始め、犬が慣れてきたら徐々に力を加えていきましょう。犬がそれぞれの足を横に一歩踏み出すまで、負荷をかけても構いません。これを10セット、1日3回実行しましょう。
    • 損傷した脚への負荷:健常な足をち上げ、10~15秒間そのままにします。犬が手に寄りかかってきたら、犬がバランスを崩すように、持ち上げた脚を動かします。または、健常な足にペンなどをテープで巻き付け、損傷した脚に体重がかかるようにする方法もあります。ただし、必ず飼い主の監視の下で行いましょう。
    • 円を描く8の字歩行:犬にリードを付けて自分の左側に立たせ、小さな円を描きながら8の字歩行をしましょう。こうすると、体重が両脚にかかるため、脚力を高めて平衡感覚を養います。
  5. How.com.vn 日本語: Step 5 プロロセラピー(増殖療法)で靭帯を修復する 
    プロロセラピーは手術をせずに靭帯を修復し、慢性的な傷みを緩和する治療法です。「プロロ」は「proliferation(増殖)」を略したもので、この治療法では細胞や組織を増殖させて損傷部分を回復させます。増殖を誘導する薬剤を、損傷した靭帯または腱に注入して局部的な炎症を起こすことで治癒過程が始まり、コラーゲンの生成が直接促されて、損傷および衰弱した靭帯や腱組織の強度を高めます。
    • プロロセラピーは主に関節の痛みの緩和に用いられ、ヒトの関節靭帯の強度が30~40%増大したことが証明されています。犬や猫へのプロロセラピーの臨床結果も同様な数値を示しています。
    • 靭帯や腱の強度が増すと、関節が支えられて正常な安定性を保ち、痛みも軽減されます。
    • 特に飼い犬が高齢の場合や麻酔をかけられない場合、前十字靭帯の部分断裂の治療にプロロセラピーを検討してもよいでしょう。
  6. How.com.vn 日本語: Step 6 幹細胞治療を検討する 
    幹細胞治療は比較的新しい治療法で、犬の関節炎やその他の変性疾患に効果を示しています。ただし、この治療法では、幹細胞を採取する際に小手術を必要とし、また幹細胞の採取と移植の際に麻酔をかける必要があります。
  7. How.com.vn 日本語: Step 7 手術が必要な場合を見極める 
    大抵の獣医師は、飼い犬が治療を始めてから4~5週間、経過を観察することを勧めます。その後、犬は膝を使って正常に歩ける、または脚を軽く引きずる程度に歩けるようになるはずです。しかし、症状に変化がない場合は、手術を受ける必要があります。大抵の場合、体重の軽い犬は手術をせずに回復しますが、体重が重い犬は回復できない場合もしばしばあります。
    • たとえ症状が改善されても、関節炎などの二次的合併症が起こる場合があります。
      • 不可逆的な疾患である関節炎は、前十字靭帯断裂の回復が遅れている場合や、部分的に回復している場合に悪化することがあります。
      • 前十字靭帯断裂が起こると、飼い犬は損傷した脚には体重をかけず、反対側の脚を主に使うようになります。そうすると、健常な脚の前十字靭帯も徐々に断裂を起こす場合(症例の50%以上)があります。
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出典

  1. Colorado State University veterinary teaching hospital (2012), Treatment options for cranial cruciate ligament injury/disease of the dog knee.
  2. Edge-Hughes, L., & CAFCI, C. Conservative Management of Cruciate Ligament deficiency with Physical Therapy.
  3. Harari, J. (Ed.). (2004). Small animal surgery secrets. Elsevier Health Sciences. Pages 314-323
  4. Millis, D., & Levine, D. (Eds.). (2013). Canine rehabilitation and physical therapy. Elsevier Health Sciences.
  5. VCA Animal Hospital, Weight reduction in dog web reference (http://www.vcahospitals.com/main/pet-health-information/article/animal-health/weight-reduction-in-dogs/895)

このHow.com.vn記事について

How.com.vn 日本語: Ray Spragley, DVM
共著者 ::
獣医師
この記事の共著者 : Ray Spragley, DVM. レイ・スプラグレイ獣医師は、ニューヨークの動物病院「Zen Dog Veterinary Care PLLC」を経営する開業医です。複数の研究所や個人病院で経験を重ね、専門は頭蓋十字靭帯裂傷および椎間円板疾病(IVDD)の手術外治療、骨関節炎の疼痛管理。オールバニー大学で生物学学位を、ロス獣医学大学にて獣医学博士号を取得。ケーナイン・リハブ・インスティテュートにて認定犬リハビリテーションセラピスト (CCRT) 、チー大学にて認定動物鍼師 (CVA)資格を取得。 この記事は15,264回アクセスされました。
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