ネットいじめの対策方法

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匿名性が非常に強く、時間を問わず自身のタイミングでアクセスが可能なインターネット空間の特性は、結果として「ネットいじめ」と称される、新たな行為を生み出してしまったと言えるでしょう。特定の人物の悪口や根拠のない誹謗中傷を書き込む、メールやラインなどで拡散するなど、いじめに関わっている人物の存在が特定できない場合もあり、被害者の心理的ダメージは計り知れません。こうした子ども社会の環境の変化を重視した政府(総務省)は、ネットいじめの実態を把握の上、子どもがこのような愚行に及ばぬよう、適切な対策を講じる必要性を訴えて、国としての対応状況を告知しています。最早他人事と目を背けてはいられないネットいじめの被害者に、不運にも我が子が選ばれてしまわないとも限りません。子どもがいじめの被害者もしくは加害者とならないためにも、保護者である大人には、後手に回ることなく適切な対策を講じる姿勢が求められています。[1]

方法 1
方法 1 の 4:

保護者の立場から検証する

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    現状を知る 増加傾向に歯止めがかからないネットいじめは、中学生から高校生と年齢を重ねるにつれ、全体のいじめに対する比率が高くなると報告されています。報告される発生件数の増加傾向を、学校(大人)がいじめの実態を把握できている裏付けと解釈する向きもありますが、報告件数は氷山の一角に過ぎず、数値が語る以上に深刻な状況であると捉えるべきでしょう。三次元の実社会ではなく、ネットという特殊な空間を舞台とするため、表向きは仲良しでも裏では悪口という、非常に複雑な人間関係が浮き彫りとなるのも特徴です。それだけに成熟途上の多感な被害者が、その事実に気づいた時の精神的ダメージは大きく、時に自殺を考えるほど悩んでしまうケースも伝えられています。[2]
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    問題点を理解する ネットいじめは被害者が気づかぬ、インターネットという空間で拡散し、それが実生活上の人間関係を歪めてしまう、特殊な負の連鎖を伴う行為です。この「何が生じているのか皆目見当がつかない」状況は、子どもに大きな不安感を抱かせるだけにとどまらず、わけがわからない混乱状態をも招きかねません。さらに匿名で繰り返し送りつけられるいじめメールに翻弄されてしまうと、正常な精神状態を保ち切れなくなって当然でしょう。文字で目に飛び込む悪口や誹謗中傷は、時に面と向かって告げられるそれらよりも、破壊力があります。結果人間不信に陥ってしまい、不登校となった事例が数多く報告されているため、子どもの心を守る意味でも、保護者を始めとする周囲の大人の早期察知が望まれます。
    • 近年ではLINEを用いたネットいじめの増加傾向が顕著とされています。閉鎖されたLINE内での仲間外れや誹謗中傷が行われるため、周囲の大人が気づけず対応が遅れる傾向が顕著なのが現状です。[3]
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    原因を知る ネットいじめの主な原因として、スマホの普及の低年齢化が加速し、子どもたちにとってインターネットが身近な存在となったことは大きいでしょう。たとえばGPS位置情報を用いた、子どもの安全確保目的で与えたスマホが、結果として適正な自己節制が求められるネット空間への扉となってしまい、興味本位と集団心理から、ネットいじめに及んでしまうこともあるかもしれません。
    • 平成30年度におけるスマホ所持率は、小学生が約35%(子ども携帯を含めると約90%)、中学生が約90%、高校生が95%以上との調査結果が報告されています。[4]
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方法 2
方法 2 の 4:

いじめの事例を検証する

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    SNSでの事例を知る いじめに用いるサイトや通信手段により、「LINEいじめ」「掲示板いじめ」などに区別して捉えられます。そうした中でも子どもが事の重大性を認識せず、深刻な事態を招いているとされるのが「SNSいじめ」と言えるでしょう。[5]
    • 個人情報流出 写真の投稿がメインのInstagramや簡単に情報を発信できるTwitterは、匿名性を隠れ蓑とした虚偽の情報や、個人情報の流出が生じやすい環境です。住所・氏名・電話番号が顔写真付きで第三者によって配信され、見知らぬ人からの着信や、恐喝に準じる被害を被る事例などが伝えられています。いじめのターゲットにされた被害者につながる、わずかな手がかり的な情報が配信されてしまうことで、深刻な被害や多大なる迷惑を被る可能性があります。
    • 悪口・誹謗中傷 ネットいじめの代表的手口と言えるのが、ターゲットに見据えた人物に関する悪口や誹謗中傷の書き込みです。いじめの対象となる人物に対し、LINEやTwitterを通じ、「ウザい」「死ね」「消え失せろ」などといった酷いメッセージを送る愚行も、悲しいかな後を絶たないのが現状です。子どもが中高生となり、ネットの特性をより深く理解できるようになると、複数のアカウントを準備し、それらからランダムに悪口や誹謗中傷を発信し続ける、いわゆる「捨てアカいじめ」に及ぶ事例も報告されています。
    • なりすまし 実在の人物になりすまし、その人物の友人の悪口や誹謗中傷を発信する、虚偽の情報を流すなど、なりすました人物の人間性や信用度を失墜させる行為もまた、ネット上で多数見られる悲しい事象です。結果的に被害者が学校に通いづらく、地元で暮らしにくい状況に追い込まれてしまうリスクが否めません。
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    掲示板・ブログ・プロフでの事例を知る いわゆるネット掲示板を利用したネットいじめは、LINEなどの普及前からその兆候が散見されていました。いわゆる掲示板に実名をあげて書き込まれた悪口や誹謗中傷、あるいは虚偽の内容に、第三者が匿名でそれらをさらに煽るような書き込みを続ける事例は数え切れず、多くの人がそうした配信を目にした経験を持っていることでしょう。
    • 特定の学校に関して個人が開設した『裏サイト』を利用したネットいじめも報告されています。[6]
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    LINE・メールでの事例を知る LINEを活用した代表的ないじめとして、特定のグループに招待せずに仲間外れにした状態で、ターゲットにした子どもの悪口で盛り上がる「グループ外し(LINE外し)」が挙げられます。さらにはグループ外しの対象者には、学校からの重要な通知などを故意に流さないなど、本人だけでなく家族をも困らせる、子どものいじめの範疇を超えた悪影響も報告されています。
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方法 3
方法 3 の 4:

子どもと向き合う

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    子どもが被害者である可能性を見極める 自身の子どもがネットいじめの被害者である可能性は、残念ですがゼロとは明言できないのが、今日の子ども社会の現実です。三次元の子ども社会におけるいじめと同様、親に心配をかけまいと気丈に振る舞っていたとしても、さまざまなところにSOSのシグナルが発せられています。以下に挙げる兆候が感じられたのであれば、ネットいじめに遭っている、もしくはなんらかの関りが生じていることを念頭に、まずは冷静に様子を観察しましょう。いきなり「もしかしてネットいじめに遭っていない?」などと直接尋ねたり、さらには問い詰めてはなりません。
    • 着信音を無音にしている それまでは好きな音色を嬉しそうに鳴らしていたのに、一転してこのような設定に変更している場合、何らかの着信を恐れている可能性が伺われます。
    • パケット通信料が不自然に増えている 何らかの好まざる着信が集中している証拠とも考えられます。
    • 常にSNSをチェックしている 自身に関する書き込みがされていないか、常に怯えている状況と考えられます。
    • 深夜に自室で利用する頻度が増えた 親に悟られたくない、自分ではどうしようもない、何らかの深刻な状況が生じているシグナルと考えられます。
    • スマホの使用を避けるようになった 子ども自身で講じられる、ネットいじめからの回避法といえますが、根本的な解決とは言えず、精神的に追いつめられている可能性が見過ごせません。
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    証拠を保存する 子どもがネットいじめの被害者であると判断できたのであれば、それを裏付ける証拠を保存しましょう。該当すると思われるサイト、メールの発信元、掲示板などに投稿しているユーザー名など、可能な限りの関連情報を記録し、スクリーンショットを撮りましょう。匿名性を隠れ蓑とした卑劣ないじめですが、こうした手がかりが加害者の特定につながります。
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    不安を取り除いてあげる ここで保護者として忘れてはならないのが、被害者として1人耐え忍んでいた、子どもの心の不安を取り除いてあげる対処です。たとえば子どもがネットいじめの事実を親に告げる際には、どれだけの勇気が必要だったか、子どもの立場に自信を置き換えて思いやり、その勇気と行動を褒めてあげましょう。同時に「絶対に大丈夫」「親である自分たちと一緒に問題を解決しよう」と、いかなる場面においても味方であることを伝え、不安定な精神状態を癒してあげましょう。
    • いじめの被害者となった子どもが、その原因が自分側にあるとの思い込みから、自己嫌悪に陥るケースも想定されます。「あなたは何も悪くない」と、やさしく力強く繰り返すことで、自分自身を責める行為に及ばぬよう、しっかり守ってあげる対処も大切です。[7]
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    加害者にならないために話し合う 今日の子どもにとって、ネット上への書き込みは日常的な行為であり、三次元における会話と変わらない、一個人としての単なる発言と位置付けられています。その結果、勢いだけで文字に残してしまう行為の中に、加害者意識を見出しづらく、さらにはTwitterのリツイートのようなワンクリックでの拡散に至っては、当人からすれば「単にクリックしただけ」の認識となりがちです。いじめという行為がどれだけ醜く、断じて及んではならない理由を、幼い頃から子どもに教える重要性は、ネット普及前から世の中全体が認識している通りです。普段から何でも話せる親子関係の構築に努め、円滑なコミュニケーションが可能な家庭環境であることもまた、無意識のうちにネットいじめの加害者にならないための重要なポイントです。
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方法 4
方法 4 の 4:

具体的な対策を講じる

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    管理者に削除依頼を申請する 掲示板その他に悪口や誹謗中傷などの書き込みを確認したのであれば、被害拡大を回避すべく、迅速に書き込みの削除依頼を、該当するサイトの管理者に連絡しましょう。まずは書き込みを確認したサイトのURLを控え、プリントアウトすることで、その内容を証拠として保存しましょう。続いて掲示板に設置されている管理者への連絡が可能なページを開き、必要事項を記載して送信ボタンをクリックすることで、こちらの意向を伝えることができます。ただし削除依頼の方法はそれぞれ異なるため、該当するサイトの利用規約などに記載されている削除依頼方法を確かめ、それらに沿った対応が求められます。[8]
    • 削除依頼に際しては、二次的な個人情報拡散のリスクを避けるべく、極力個人のメルアドは使用せず、学校その他の外部のメルアドから送信しましょう。また削除依頼に際し、依頼者の個人情報につながる氏名などの記載は不要です。
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    プロバイダに削除依頼を申請する 管理者への削除依頼に対応してもらえなかった場合や、管理者に連絡がつかない場合には、プロバイダに削除依頼を申請しましょう。
    • 削除依頼に応えてもらえない理由として、送信した削除依頼の内容に、削除に必要な情報が欠落していたなど、不備があった可能性が疑われます。送信内容を再確認の上、再送信して一定時間様子を見ましょう。それでも削除されない場合には、他の対処方法を視野に入れましょう。
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    鍵をかける設定にする Twitterには鍵をかけることで、認証したユーザー以外は自身のアカウントに干渉できなくなる、いわゆる非公開設定が備わっており、これを活用するのも1つの対策です。InstagramやFacebookにも、同様の効果が得られる機能があり、関りを持ちたくないエンドユーザーと一線を画す対応が可能です。ただしこうした相手をブロックする対応の事実は、ブロックされた側の知るところとなり、加害者が強い悪意を抱いている場合など、他のアカウント(捨てアカ)からの攻撃を招く引き金となる可能性も懸念されます。
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    学校に報告して連携を取る 多くの子どもには、次に自身がいじめの被害者となることを恐れ、その事実を知っていてもスルーしてしまう傾向が見られます。さらに大人に口外することで叱られることを回避すべく、申し合わせたかのように口を閉ざしてしまうことも、自身の子ども時代を振り返れば、容易に察せられる、子どもならではの対応です。こうした「見ざる・言わざる」がネットいじめを増長させる悪循環を防ぐべく、学校に自身の子どもの被害状況の詳細を伝え、ネットいじめを通報しやすい環境の構築を提案しましょう。加害者の子どもとその両親を責めて指導するのではなく、教師と保護者の協力体制をより強固にすることで、ネットいじめ撲滅に尽力できる環境の構築を目指しましょう。ポイントはむやみにネットへのアクセスを禁止するのではなく、正しい使用法を教え、子どもたちを善良な利用者へと育成する、見守る側の大人の対応と姿勢です。[9]
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    相談窓口に相談する 削除要請にも応じてもらえず、学校との連携も期待通りの対応が得られなかった場合、全国各所に開設されている、いじめ関連の相談窓口を活用しましょう。文部科学省ではいじめ問題に悩む子どもや保護者からの相談に24時間体制で対応する『24時間子供SOSダイヤル(0120-0-78310)』を開設しています。さらには児童相談所、警察、いのちの電話協会、臨床心理士会などの相談機関とも連携し、相談内容に対し、より的確なアドバイスを届けられる態勢が構築されています。保護者としても臆することなく、積極的に専門家の意見を仰ぐ姿勢で、ネットいじめ問題の解決に臨みましょう。[10]
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    弁護士に相談する 保護者の立場としては、子ども同士のトラブルを弁護士に相談することに対し、抵抗感から躊躇してしまいがちでしょう。不用意に大袈裟にせず、穏便に事態を収拾したい気持ちは理解できますが、専門家の意見を仰ぐことで、それまで気づかなかった打開策のヒントが得られるかもしれません。ネットいじめは子ども社会だけにとどまらず、あらゆる世代の被害者が後を絶たない、社会全体で是正に努めるべき問題です。とりわけ民事・刑事的措置を視野に入れた対応を講じるのであれば、専門知識が不可欠であり、法のスペシャリストである弁護士に相談しましょう。
    • 個人で対応するよりも弁護士に依頼することで、IPアドレスや個人情報の開示請求がスムーズになる可能性が高まります。[11]
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    常に子どもを見守り続ける 子どもが被害者に選ばれてしまったネットいじめは、子どもの心に深い傷を刻んでしまっています。大人目線では問題が解決し、子ども同士の関係性も表面上は良好な距離感に修正できたと映っていたとしても、心の傷は短時間で癒えることはありません。それは被害者だけでなく、悪意なく結果的に加害者の立ち位置に誘われた子どもたちも一緒です。大人が常に新鮮かつ正しい知識を積極的に吸収し、それに基づき精一杯の愛情を注ぐスタンスで、未来へと成長を続ける子どもたちを見守り続けましょう。
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ポイント

  • ネットいじめはネット空間という、極めて匿名性が強い特殊な環境と、そこに配信されているさまざまなサイトの特徴が生み出した、人間の集団心理の弱さが浮き彫りとなった、悲しく悪しい行為と言えるでしょう。
  • 加害者に罪の意識がなく、被害者側に何の落ち度も見当たらず、なぜ始まったのか、その理由の見極めが困難な事例が少なくありません。
  • 被害者となってしまった子どもは、それまでとは違う素振りなどでSOSを発信しており、保護者はそうしたシグナルを見落とさぬよう、その言動などを冷静に見極める対応が望まれます。
  • 掲示板などに誹謗中傷などが書き込まれた場合は、所定の手順に沿って削除依頼を申請しましょう。
  • ネットいじめの実態が把握できたのであれば、学校と連携を取り、子どもたちを善良なデジタル利用者に育てる環境を構築しましょう。
  • 被害者・加害者を問わず、ネットいじめの当事者となってしまった子どもの心は傷ついています。優しく厳しく大きな愛で見守り続けてあげましょう。
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注意事項

  • 我が子がネットいじめの被害者である可能性を察知した際に、早期解決を焦るあまり、子どもを問い詰めてしまわぬよう、細心の注意を払いましょう。結果的に詰問と伝わってしまい、さらに子どもを精神的に追い詰めてしまっては取り返しがつきません。
  • ネットいじめ解決のゴールは、加害者側の子どもと親に非を認めさせ、いわゆる賠償に応じさせることではありません。二度と同じ愚かな過ちを犯さぬよう、いじめという行為の醜さを全員で理解し、再発防止に努められる生活環境の再構築です。
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このHow.com.vn記事について

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