阪急電車 (小説)

日本の小説、メディアミックス作品

阪急電車』(はんきゅうでんしゃ)は、有川浩の連作短編小説集。表紙イラストは徒花スクモ(ハードカバー版・文庫版とも)。

阪急電車
著者有川浩
イラスト徒花スクモ
発行日2008年1月22日
発行元幻冬舎
ジャンル短編小説
日本の旗 日本
言語日本語
形態四六判
ページ数221
公式サイトwww.gentosha.co.jp
コードISBN 978-4-344-01450-3
ウィキポータル 文学
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物語の舞台となる阪急今津線の電車 - 宝塚市

幻冬舎の隔月刊の文芸雑誌『papyrus』にて2007年に全6回連載され、単行本が2008年1月22日に幻冬舎から刊行。幻冬舎文庫版が2010年8月5日に発刊。

映画版および漫画版などのメディア展開についても本項で説明する。

作品概要

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舞台となる阪急今津線は、南北十字に阪急神戸本線を縦断する計10駅のミニ路線総称である。接点の西宮北口駅で北線と南線が各々独立している。

この作品は、所要14分である北線の8つの駅を舞台とし、その乗客が織り成す様々なエピソードを一往復に当たる全16話で描写する。

それまでの有川の作品は、近未来・軍事・怪獣関係の設定を用いたものが多いが、本作品では実世界を舞台にしている。高知県出身の作者は、大学時代に今津線の沿線に下宿していたが故、今津線が一番思い入れのある路線であり、中でも小林駅にもっとも思い入れがあるという。

2010年8月、東宝が映画化すると発表され、2011年4月29日に公開された。

2012年5月14日付のオリコン文庫部門で100万部を突破し、文庫部門12作目の100万部突破となった[1]

初出

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各章の駅名の後には(西宮北口方面行き)とあるのが正式名称だが、ここでは省略する。

書籍情報

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ラジオドラマ

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関西MBSラジオの番組『ありがとう浜村淳です』の中の「ありがとうファミリー劇場」において、2008年4月に2週間連続放送された。

漫画

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ウェブコミック誌『MAGNA』にて作画村山渉による漫画版が連載を2008年7月から開始したがウェブサイト自体の終了により、実誌『コミックバーズ』に移籍し2009年1月号から再開した。しかし2009年3月号を最後に休載、事実上の打ち切り。

映画

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阪急電車 片道15分の奇跡
映画の宣伝ヘッドマークが掲出された阪急今津線の車両 - 西宮北口駅
監督三宅喜重
脚本岡田惠和
原作有川浩
出演者中谷美紀
戸田恵梨香
宮本信子
芦田愛菜
音楽吉俣良
主題歌aikoホーム
撮影池田英孝
編集普嶋信一
製作会社「阪急電車」製作委員会
配給東宝
公開 日本 2011年4月29日
上映時間120分
製作国 日本
言語日本語
興行収入11.4億円
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映画宣伝用ヘッドマーク 9300F - 梅田駅

阪急電車 片道15分の奇跡』(はんきゅうでんしゃ かたみちじゅうごふんのきせき)のタイトルで、ローカル電車を舞台とした群像劇である。主演は中谷美紀、脚本は岡田惠和。阪急電鉄や宝塚歌劇団を始めとする阪急阪神ホールディングス約30社がバックアップし[2]、監督は、今作が劇場用映画デビューであり、阪急阪神ホールディングス傘下でもある関西テレビ制作部の三宅喜重で、関西テレビの社員が映画監督になるのは今回が初となる[3]。また、日本の放送業界では初めて、異なるネットワークに加盟する民放テレビ局(同じ在阪局関西テレビ読売テレビ)が共同で製作に関わった[4]

公開は80スクリーンと中規模ながら、舞台地近辺の劇場を中心に多くの動員があり、興行収入11.4億円を記録した。

あらすじ

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美人でしっかり者のOL翔子は自分を裏切った元カレの結婚式に白いドレスで出席する。女子大生のミサはイケメン彼氏のDVに悩んでいる。主婦康江は子どもを通した付き合いのママ軍団から抜けられず、誘われるたびにそのストレスから胃を痛める。女子高生の悦子は受験に悩み、彼氏との関係に悩み自暴自棄になっている。女子大生の美帆は地方出身の劣等感から周囲に馴染めなかったが、軍事オタクの圭一と知り合い二人の世界を作っていく。少女ショウコは同級生から仲間外れにされ辛い思いをしている。登場人物が皆、心に孤独や辛さを抱えていて、たまたま電車に乗り合わせた他人が、その辛さを癒したり、悩みを解決に導くキーパーソンになっていく。最初にOL翔子の愚痴を聞き励ましたのが時江と孫の亜美。女子大生ミサがDV彼氏と別れるきっかけを作ったのが女子高生悦子たちの噂話。胃痛で電車を降りた主婦康江に、付き合いはほどほどにと助言したのが女子大生ミサ。受験で悶々とする女子高生悦子に勇気を与えたのが美帆と圭一のカップル。そして最後に、仲間外れにされても凛としている小学生ショウコを勇気づけたのがOL翔子で、降りた駅で女子大生ミサに出会い、意気投合して友達付き合いが始まる。

キャスト

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出身地が阪急沿線の場合は府県名・都市名を掲載、沿線外ではあるが、大阪、京都、兵庫のいずれかの府県の場合は府県名のみを掲載。

スタッフ

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  • 脚本 - 岡田惠和
  • 監督 - 三宅喜重(関西テレビ)
  • 音楽 - 吉俣良
  • 主題歌 - aiko(大阪府吹田市出身)「ホーム」(ポニーキャニオン)
  • 製作者 - 福井澄郎、松下康、見城徹角和夫、桐畑敏春、中村仁、越智常雄
  • エグゼクティブプロデューサー - 籏啓祝、服部洋、小玉圭太、若林常夫、三宅容介、伊藤隆範、村上博保
  • チーフプロデューサー - 重松圭一(関西テレビ)
  • プロデューサー - 沖貴子(関西テレビ)、田村勇気(電通
  • ラインプロデューサー - 岩本勤
  • 撮影 - 池田英孝
  • B班撮影 - 横山和明
  • 照明 - 原田洋明
  • 録音 - 郡弘道
  • 美術 - 松本知恵
  • 装飾 - 藤田徹
  • VE - 吉岡辰沖、中村寿昌
  • 衣装 - 会田昌子
  • スタイリスト(中谷担当) - 中村みのり
  • 衣装デザイン(宮本・芦田担当) - 伊藤佐智子
  • ヘアメイク - 清水惇子 / 若林奈津子(中谷担当)、mi-co(南担当)、柴田ヤス子(宮本担当)
  • 記録 - 木村晃子
  • 編集 - 普嶋信一
  • 監督補 - 宮崎暁夫
  • 助監督 - 中西正茂
  • 制作担当 - 大谷弘
  • 音響効果 - 岡瀬晶彦
  • VFX - IMAGICA、デジデリック
  • ロケ協力 - ひょうごロケ支援ネット、神戸フィルムオフィス、西宮市宝塚市 ほか
  • キャメラ - EOS MOVIE(協力:キヤノンマーケティングジャパン
  • 技術協力 - 池田屋
  • スタジオ - 日活撮影所
  • Special Thanks - 阪急電鉄、およびグループ各社
  • 製作 - 「阪急電車」製作委員会(関西テレビ、電通、幻冬舎阪急電鉄ポニーキャニオン読売新聞社読売テレビ
  • 製作プロダクション - コクーン
  • 配給 - 東宝

プロモーション・封切り

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2011年3月30日に行われた試写会では、宝塚大劇場が上映会場となった。本劇場で映画イベントが開かれるのは、劇場創設以来初めてであった[5]。映画の試写会は東日本大震災直後であったが、阪神・淡路大震災を関西に在住していたため経験していた原作者の有川浩は、「自粛は被災地を救わない。阪神・淡路を経験した私たちはそのことを知っています。エンターテインメントを楽しむことを後ろめたいと思わないでください。映画1本分、本一冊分、自分は経済を回すのだと思って楽しんでください。張り詰めた糸が切れてしまわないために、気持ちのゆとりを作るためにエンタメはあるのです」と、経験者の立場から自粛ムードに揺れる世相について語った。その思いは中谷美紀ら出演者が受け継ぎ、全国の映画館で舞台挨拶を行った際に、繰り返し述べられたという。戸田恵梨香、相武紗季、鈴木亮平ら、関西出身の出演者のなかには被災した経験を持つ者もいる。

2011年4月6日から、阪急電鉄の一部車両に映画公開をPRするヘッドマークが掲出された。

2011年4月29日からTOHOシネマズ日劇3ほか日本全国の東宝系劇場で公開されたが、関西では4月23日から先行上映された。関西地区32スクリーン先行上映ながら、2011年4月23・24日の初日2日間で興収5,815万4,800円、動員4万4,166人になり映画観客動員ランキング(興行通信社調べ)で初登場第7位となっている[6]。全国80スクリーンに拡大公開された第2週には第6位にランクインしている[7]。上映館数が83スクリーンと少ない劇場館数ながら6月15日に興行収入10億円を突破したと発表[8][9]。2012年に発表された興行収入は11.4億円[10]

また、舞台となった阪急今津線沿線のTOHOシネマズ西宮OSでは、興行47日目時点で動員数7万6,346人を記録し、同館においてそれまでトップだった『アバター』での全116日間で7万6,029人という記録を超えた[11]

サウンドトラック

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「阪急電車 片道15分の奇跡」オリジナル・サウンドトラック(2011年4月20日発売)

収録曲(タイトル) / 収録分数 / 作曲など
M-01阪急電車 片道15分の奇跡 メインテーマ2:16作曲・編曲:吉俣良
M-02つばめ3:24
M-03忘れられない一日2:23
M-04合縁奇縁2:08
M-05胸騒ぎ2:40
M-06手と手4:08
M-07待ち合わせ3:07
M-08路傍の花2:15
M-09それぞれの道1:12
M-10晴れて3:18
M-11終着駅2:48
M-12一歩ずつ2:41
M-13心友1:37
M-14虹の橋2:52
M-15涙の向こう3:31
M-16ホーム(Instrumental)3:04作曲:AIKO
編曲:吉俣良

協賛・協力スポンサー

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公開記念特番

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映画公開を記念して、関西地区で先行封切りされた2011年4月23日、15:00 - 15:30に関西テレビにて特番が放送された。阪急西宮ガーデンズ特設ブースから公開生放送を行い、番組中では舞台挨拶の模様、出演者・監督・阪急電鉄関係者へのインタビュー、ロケーション撮影時の模様などが採りあげられた。

受賞

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スピンオフドラマ

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阪急電車〜片道15分の奇跡〜 征志とユキの物語』が、2011年4月1日から29日の間の毎週金曜日に全5話が、auLISMOチャンネル」にて配信された。また、2011年5月1日の25:40 - 26:10に同番組が関西テレビにて放送された。

キャスト(スピンオフ)

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スタッフ(スピンオフ)

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  • 監督・脚本:宮崎暁夫
  • 製作:KDDI、関西テレビ
  • 主題歌:SAY「Tears On Earth」(EMI MUSIC JAPAN)

脚注

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  1. ^ 地上波初放送も追い風に『阪急電車』が100万部突破”. WEBオリスタ. オリコン (2012年5月10日). 2016年1月21日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年1月21日閲覧。
  2. ^ 中谷美紀、「阪急電車」主演で“鉄道映画”の女王に - 映画.com、2010年8月4日
  3. ^ “映画「阪急電車」関テレ初“社員監督””. SANSPO.COM (産経デジタル). (2010年9月7日). オリジナルの2010年9月14日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20100914140311/https://www.sanspo.com/geino/news/100907/gnj1009070502008-n1.htm 2020年7月31日閲覧。 
  4. ^ “映画「阪急電車」製作に関西テレビと読売テレビ参加”. MSN産経ニュース. (2010年9月14日). オリジナルの2010年10月3日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20101003102352/http://sankei.jp.msn.com/entertainments/entertainers/100914/tnr1009140301000-n1.htm 2020年7月31日閲覧。 
    関西先行上映の前後には、撮影でのメイキング映像を共同で利用しながら、KTV・ytvで独自に関連番組を制作・放送した。映画の本編には、村西利恵高橋真理恵(いずれもKTVアナウンサー)・森若佐紀子大田良平(いずれもytvアナウンサー)がワンシーンずつ出演している。
  5. ^ “中谷美紀、純白のドレスでタカラジェンヌの聖地に立つ 『阪急電車』プレミア試写会”. eltha (oricon ME). (2011年3月31日). https://beauty.oricon.co.jp/news/86144/full/ 2020年7月31日閲覧。 
  6. ^ 『GANTZ:PERFECT ANSWER』が首位獲得! 『コナン』『クレしん』も勢い衰えず! GWを前に営業再開する被災地の映画館も - シネマトゥデイ(2011年4月27日付)
  7. ^ GW突入、興行界も好調の中『コナン』が『GANTZ』から首位奪還! 『八日目の蝉』『豆富小僧』もランクイン! - シネマトゥデイ(2011年5月4日付)
  8. ^ Twitter / @hankyu_eiga : 【御礼】映画「阪急電車」が昨日(4/23〜6/14)[リンク切れ]、映画『阪急電車』製作委員会、2011年6月15日。
  9. ^ Twitter / @hankyu_eiga : 【御礼】特筆すべき点は上映館数が83スクリーンと非常[リンク切れ]、映画『阪急電車』製作委員会、2011年6月15日。
  10. ^ 2012年記者発表資料(2011年度統計)” (PDF). 最新映連発表資料. 一般社団法人日本映画製作者連盟. p. 3 (2012年1月). 2012年1月26日閲覧。
  11. ^ 島村幸恵 (2011年6月15日). “『阪急電車』、地元映画館で『アバター』超えの動員を記録するほどの大ヒット!”. シネマトゥデイ. 2013年11月10日閲覧。
  12. ^ 第3回沖縄国際映画祭 受賞作品決定!!”. 沖縄国際映画祭 (2011年3月27日). 2011年4月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年7月31日閲覧。
  13. ^ “宮本信子「新しい何か始まる予感」…第36回報知映画賞”. シネマ報知 (報知新聞社). (2011年11月29日). オリジナルの2012年7月14日時点におけるアーカイブ。. https://archive.fo/J8DW 2020年7月31日閲覧。 
  14. ^ 日本アカデミー賞公式サイト第35回日本アカデミー賞優秀賞発表! 2012年3月5日参照。

関連項目

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外部リンク

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